競業避止義務4(ヤマダ電機事件)

おはようございます。

今日は、競業避止義務違反に関する裁判例を見てみましょう。

ヤマダ電機事件(東京地裁平成19年4月24日判決・労判942号39頁)

【事案の概要】

X社は、家電量販店チェーンを全国的に展開しており、業界最大規模の会社である。

従業員Yは、X社在職中、地区部長・店長等を務めていた。

YはX社を退職し、その翌日、人材派遣会社に登録し、競業会社G1の子会社G2へ派遣され就労した。

Yは、退職の1ヶ月半後、G1へ入社。

X社とG1社は、大手の量販店チェーンのなかでも激しい競争を繰り広げるライバル関係にあった。

X社には、一定の役職以上の従業員が退職する際には競業避止義務等を負わせることとしており、Yも退職時に役職者誓約書を作成し提出した。

誓約書には、「退職後、最低1年間は同業種(同業者)、競合する個人・企業・団体への転職は絶対に致しません」とする競業避止条項および「上記に違反する行為を行った場合は、会社から損害賠償他違約金として、退職金を半額に減額するとともに直近の給与6か月分に対し、法的処置を講じられても一切異議は申し立てません」とする違約金条項が設けられていた。

X社は、Yに対し、競業避止義務違反を理由として損害賠償請求をした。

【裁判所の判断】

一部認容(競業避止義務違反を認めた)

【判例のポイント】

1 会社の従業員は、元来、職業選択の自由を保障され、退職後は競業避止義務を負わないものであるから、退職後の転職を禁止する本件競業避止条項は、その目的、在職中のYの地位、転職が禁止される範囲、代償措置の有無等に照らし、転職を禁止することに合理性があると認められないときは、公序良俗に反するものとして有効性が否定される

2 Yは、X社の店舗における販売方法や人事管理のあり方を熟知し、全社的な営業方針、経営戦略等を知ることができた。このような知識及び経験を有するYが、X社を退職した後直ちに、直接の競争相手に転職した場合には、その会社が利益を得る反面、X社が相対的に不利益を受けることが容易に予想されるから、これを未然に防ぐことを目的として、Yのような地位にあった従業員に対して競業避止義務を課すことは不合理ではない。

3 X社固有のノウハウ等につきX社による具体的な主張立証がなくても、本件事情等を考慮すると、判断を左右するものではない。

4 退職金の半額を違約金として請求することは不合理ではない。

原告の請求金額は約420万円。

判決で認容された金額は、約140万円。

この金額、多いとみるか、少ないとみるか・・・ 

ある程度の役職の人が、ライバル会社に退職後すぐに転職したら、前の会社としては、つらいところです。

本件では、Yは、退職後、いきなりG1社に転職すると、競業避止義務違反になることが明らかだったので、それを回避するために、ひとまずG2社で派遣就労をしました。

ところが、裁判所は、G2社は実質的にはG1社の一部門とみることができるという理由で、G2社で稼働したことも競業避止義務違反と認定しました。

訴訟の是非を含め、対応方法については事前に顧問弁護士に相談しましょう。