継続雇用制度10(日本ニューホランド事件)

おはようございます。

今日は、久しぶりに継続雇用制度に関する裁判例を見ていきましょう。

日本ニューホランド事件(札幌地裁平成22年3月30日判決・労判1007号26頁)

【事案の概要】

Y社は、農業用機械器具の販売および輸出入業務等を目的とする会社である。

Y社は、平成18年4月、定年退職者の再雇用制度を設けた。

Xは、Y社の従業員であり、平成20年9月に定年(60歳)退職した。

Y社には、Xを中央執行委員長とするA組合(Y社と対立路線を歩む)と、多数派組合のB組合(Y社と協調路線を歩む)があり、両組合は、別個に、Y社と団体交渉を行ったり、労働協約を締結していた。

Xは、Y社に対し、再雇用を希望すると申し出たが、Y社は再雇用できないと通知した。

Y社がXの再雇用を拒否した理由は、以下の3点。
(1)本件再雇用制度は、B組合と合意のうえ、所定の手続を経て実施しているが、A組合およびXは、本件再雇用制度に反対している

(2)本件再雇用制度は、就業規則の変更によって設けられたものであるが、A組合およびXはこの就業規則の変更は不利益変更であり無効であるとして同規則の有効性を争い、裁判所も同規則はA組合およびXには適用されない旨判示している(*1)から、本件再雇用制度はXに適用されない
(*1)なお、XらA組合に所属する従業員は、この就業規則の変更について、同規則の効力を争う訴訟を提起し、勝訴している。

(3)仮に本件再雇用制度がXに適用されるとしても、Xは、本件規程の再雇用可否の判断基準のいずれにも該当しないから、再雇用の対象とならない

Xは、本件再雇用拒否は、A組合を敵視していたY社が、Xに報復するために行ったもので、権利の濫用または不当労働行為に該当し無効であり、仮にXとY社の間に再雇用契約が成立したとは認められないとしても、本件再雇用拒否は債務不履行(再雇用義務の不履行)または不法行為に該当するなどと主張し、第1次的請求として雇用契約上の権利を有することの確認ならびに未払賃金の支払いを、第2次的請求として損害賠償等の支払いを、それぞれ求めた

【裁判所の判断】

1)本件再雇用制度はXに適用されるか?

本件再雇用制度は、Y社の全従業員に対して適用される。

2)適用される場合、本件再雇用拒否は権利の濫用または不当労働行為に該当して無効か?

権利の濫用に該当する。

しかし、再雇用契約が成立したと認めることはできない。

3)本件再雇用拒否は債務不履行または不法行為に該当するか?

不法行為に該当する。

4)Xの損害額は?

損害額は500万円、弁護士費用は50万円

【判例のポイント】

1 1)について

本件再雇用制度は、Y社の全従業員にとって有利な制度であることが明らかであること等からすれば、当然に(Xを含む)Y社の全従業員に対して適用される。

2 2)について

再雇用契約は、Y社を定年退職した従業員がY社と新たに締結する雇用契約であり、雇用契約において賃金の額は契約の本質的要素であるから、再雇用契約においても当然に賃金の額が定まっていなければならず、賃金の額が定まっていない再雇用契約の成立は法律上考えられない。

そして、Y社は、Xとの再雇用契約締結を拒否しており、再雇用契約における賃金の額について何らの意思表示もしていないのであって、仮に本件再雇用拒否が無効であるとしても、XとY社の間で締結される再雇用契約における賃金の額が不明である以上、XとY社との間に再雇用契約が成立したと認めることはできない。

3 3)について

本件再雇用拒否はそれまでY社と対立路線を歩んできたXに対いて不利益を与えることを目的としてなされたものと強く推認され、そのような目的でなされた本件再雇用拒否は権利の濫用に該当し、かつ不法行為にも該当する。

この判決でも、やはり再雇用契約の成立が否定されています。

ただ、このケースでは、裁判所は、再雇用拒否の権利濫用性を認め、不法行為に基づく損害賠償請求を認めています。

損害額は、500万円です。

これは、再雇用拒否の違法性の程度、再雇用契約が締結された可能性の程度、再雇用契約が締結された場合にXが取得できたと推認される経済的利益の額およびその額を取得することができなくなったことによるXの精神的苦痛の程度等を総合考慮して判断されました(民訴法248条参照)。

実際の対応は、顧問弁護士に相談をしながら慎重に進めましょう。