競業避止義務10(消防試験協会事件)

おはようございます。

さて、今日は、競業避止義務に関する裁判例を見てみましょう。

消防試験協会事件(東京地裁平成15年10月17日・労経速報1861号14頁)

【事案の概要】

Y社は、消防用設備等の試験検査等を目的とする会社である。

Xは、Y社に入社し、10年程勤務し、自己都合で退社した。

Y社の就業規則には、競業避止義務(退職後2年間)、機密保持義務に関する規定がある。

また、Xは、Y社に対し、退職直後に、誓約書を提出している。

誓約書の内容は、退職後5年間の競業避止義務が記載されている。

Xは、Y社退職後、約1ヶ月後に、A社を設立し、A社の取締役となった。

A社は、建物の消火設備についてのコンサルタント業務等を目的とする会社である。

Y社は、X及びA社に対し、第一時的には債務不履行、第二次的には、共同不法行為による損害賠償及び競業行為の差止めを求めた。

【裁判所の判断】

本件競業避止義務に関する合意は、公序良俗に反し無効である。

【判例のポイント】

1 本件特約は、退職後のXに対し、事後の職業選択の自由を制約する内容のものである。これに対し、Xにとっては本件特約の見返りとなるものは何もない。そうすると、本件特約は、既に退職したXに対し、Y社が新たに一方的な義務をおわせるものにほかならないところ、本件において、Xが上記のような内容の本件誓約書を真実その自由意思に基づいて作成したとみられるような状況はなく、かえって、Y社が退職金請求に必要な書類等を交付する条件と精神に照らすと、そのようにして作成された本件誓約書に法的効力を認めることはできないと解するのが相当である
したがって、本件誓約書を根拠にXが原告に対し、競業避止義務を負うということはできない。

2 就業規則改訂による退職後2年間の競業避止条項新設につき、改訂およびその内容をXを含む従業員らに示して同意を得たことを認める証拠はなく、それが合理的なものと評価しうる事情の必要を肯定できる事実関係は認められない。

3 契約に基づく競業避止義務が否定される場合であっても、社会通念上相当とされる自由競争の枠を超え、不正な手段・方法・態様等によって競業を行うなどし、同業他社の営業活動その他の権利を侵害ないし妨害した場合は、その行為者に不法行為が成立する余地がある。しかし、Xらの行為は、自由競争社会において当然容認される経済活動の範囲を逸脱するものとはいえず、その他本件において、Xらに違法な行為があったことを認めるに足りる証拠はない。

退職金の支払いと誓約書の支払いがリンクしていて、会社から「誓約書を出してもらえないなら退職金を支払わない」という形になっている場合には無効になる可能性があるということです。

会社としては、注意しなければいけません。

なお、退職金制度に、競業の場合に減額、あるいは不支給にするという制度を設けておくことで、実質的に退職後の競業避止を抑止する効果を得ることができます。

具体的な制度設計については顧問弁護士に相談しながら検討しましょう。