配転・出向・転籍4(東京サレジオ学園事件)

おはようございます。

今日は、配置転換に関する裁判例を見てみましょう。

東京サレジオ学園事件(東京地裁八王子支部平成15年3月24日)

【事案の概要】

Y社は、養護施設の設置経営を目的とする社会福祉法人である。

Xは、Y社に雇用され、Y社が設置経営する児童福祉施設において児童指導員として18年間勤務していた。

Xは、平成11年4月、Y社から、厨房で勤務する調理員への配転を命じられた。

Xは、本件配転命令は無効であることを主張して、その撤回を求めた。

【裁判所の判断】

本件配転命令は無効

【判例のポイント】

1 使用者が労働者に対して配転を命ずる場合であっても、業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても当該配転命令が他の不法な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を負わせるものであるとき等特段の事情が存するときには、当該配転命令は権利の濫用として無効となると解するのが相当である。

2 Y社は、Xが児童指導員としての適格性を欠いているから本件配転命令につき業務上の必要性があったと主張しているが、前記のとおり、Xの児童指導員としての適性の欠如を窺わせるような具体的事実が存在するとは認められないから、結局のところ、本件配転命令は上記必要性が存しないものであったといわざるを得ない

3 本件配転命令は、業務上の必要性を欠いている上、現場での経験をもとに信念を通そうとするXを短絡的に児童養護の現場から排除する目的でなされたものと解されるのであって、配転命令権の濫用にあたるといわざるを得ない。 

配転命令が権利濫用にあたり無効とされた裁判例です。

配転命令は、会社に広い裁量が認められているので、無効とされた裁判例を検討すると大変勉強になります。

本件で、Y社は、Xの児童指導員としての適性の欠如を示す事実をいくつも主張していますが、いずれも配転を認めるだけの業務上の必要性を基礎づけるものではありませんでした。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら行いましょう。