有期労働契約18(学校法人加茂暁星学園事件)

おはようございます。

さて、今日は、高校非常勤講師の雇止めに関する裁判例について見てみましょう。

学校法人加茂暁星学園事件(新潟地裁平成22年12月22日・労判1020号14頁)

【事案の概要】

Xらは、Y高校の非常勤講師として期間を約1年間とする有期雇用契約を毎年更新してきた。

Xらの勤務年数は、それぞれ25年間と17年間であった。

Y高校は、平成19年2月、Xらに対し、「平成19年度の雇用に関しては学級減等のため、理科の非常勤講師時数は0時間となります」「あなたの雇用は平成19年3月25日までとなりますのでお知らせ致します。」旨の内容を記載した内容証明郵便を郵送した。

Xらは、本件雇止めは不当であると主張し争った。

【裁判所の判断】

本件雇止めは無効

【判例のポイント】

1 期間の定めのある雇用契約であっても、期間満了ごとに当然更新され、あたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態にある場合には、期間満了を理由とする雇止めの意思表示は実質において解雇の意思表示に当たり、その実質に鑑み、その効力の判断に当たっては、解雇に関する法理を類推適用すべきであり、また、労働者が契約の更新、継続を当然のこととして期待、信頼してきたという相互関係のもとに雇用契約が存続、維持されてきた場合には、そのような契約当事者間における信義則を媒介として、期間満了後の更新拒絶(雇止め)について、解雇に関する法理を類推適用すべきであると解される。

2 整理解雇とは、使用者が経営不振の打開や経営合理化を進めるために、余剰人員削減を目的として行う解雇をいうところ、Xらの雇止めにおいて、Xらに非違行為等の落ち度は全くないのであって、Y学校も使用者側の経営事情等により生じた非常勤講師数削減の必要性に基づく雇止めであること自体は否定していない以上、Xらの雇止めは使用者が経営合理化を進めるために余剰人員削減を目的として行った雇止めであるとみることが相当である。
したがって、Xらが主張するとおり、Xらの雇止めには整理解雇の法理を類推適用すべきと解する。すなわち、Xらの雇止めの「社会通念上相当とされる客観的合理的理由」の有無は、(1)人員削減の必要性、(2)雇止め回避努力、(3)人選の合理性、(4)手続の相当性の4つの事情の総合考慮によって判断するのが相当であると解する。

3 もっとも、非常勤講師は、Y学校との間の契約関係の存続の要否・程度に、専任教員とはおのずから差異があるといわざるを得ないので、Xらの雇止めが解雇権の濫用に当たるか否かを判断するに際しても、専任教員の解雇の場合に比べて緩和して解釈されるべきであり、それまで雇用していたXらを雇止めにする必要がないのに、Xらに対して恣意的に雇用契約を終了させようとしたなど、その裁量の範囲を逸脱したと認められるような事情のないかぎり、「社会通念上相当とされる客観的合理的理由」が存在するといえ、解雇権の濫用に当たると認めることはできない

4 非常勤講師の雇止めの場合に要求される「社会通念上相当とされる客観的合理的理由」が、専任教員の解雇の場合に比べて緩和して解釈されるべきことからすれば、雇止め回避努力として、Y学校において希望退職者募集等の具体的な措置をとることまでは必要なかったというべきである。
しかしながら、Y学校がXらを雇止めするに当たって、財政上の理由からして非常勤講師の人件費をどれだけ削る必要があるか等についておよそ検討したとは認められないことからすれば、Y学校が、非常勤講師の大量雇止め以外に財政状況改善手段を検討したという事情は認められない。また、その他Xらの雇止めに際し、何らかの回避措置がとられたことを認めるに足りる証拠はない。
以上からすれば、Y学校において、何らかの雇止め回避努力をしたとは到底認められない。


期間の定めのない雇用契約と実質的に異ならない状態にある期間の定めのある雇用契約の雇止めの意思表示は、実質的には解雇の意思表示にあたります。

そのため、解雇権濫用法理が類推適用されます。

整理解雇の場合と同じように、手順をしっかり踏まないと、このような結果になります。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。