労働者性3(INAXメンテナンス事件)

おはようございます。

今日は、労働組合法上の労働者概念に関する判例を見てみましょう。

INAXメンテナンス事件(最高裁平成23年4月12日・裁時1529号4頁)

【事案の概要】

Y社は、親会社が製造したトイレ、浴室、洗面台、台所等に係る住宅設備機器の修理補修などを主たる事業とする会社である。

X組合は、主に運輸業に従事する労働者によって組織された労働組合である。

X組合Z支部は、Y社と業務委託契約を締結してその修理補修等の業務に従事する者(カスタマーエンジニアCEと称されていた)によって組織された下部組織である。

X組合は、Y社に対し、CEの労働組合加入通知書とともに、不当労働行為を行わないこと等を要求する書面を提出した。

これに対し、Y社は、X組合に対し、CEは独立した個人事業主であり労働組合法上の労働者に当たらないとして団体交渉に応ずる義務はない旨回答した。

【裁判所の判断】

労組法上の労働者にあたる

【判例のポイント】

1 Y社の従業員のうち、主たる業務である親会社の住宅設備機器に係る修理補修業務に現実に行う可能性がある者はごく一部であって、主として約590名いるCEをライセンス制度やランキング制度の下で管理し、全国の担当地域に配置を割り振って日常的な修理補修等の業務に対応させていたものである上、・・・CEは、Y社の上記業務の遂行に不可欠な労働力として、その恒常的な確保のためにY社の組織に組み入れられていたものと見るのが相当である

2 CEの報酬は、CEがY社による個別の業務委託に応じて修理補修等を行った場合に、Y社が商品や修理内容に従ってあらかじめ決定した顧客等に対する請求金額に、当該CEにつきXが決定した級ごとに定められた一定率を乗じ、これに時間外手当等に相当する金額を加算する方法で支払われていたのであるから、労務の提供の対価としての性質を有するものということができる

3 Y社から修理補修等の依頼を受けた場合、CEは業務を直ちに遂行するものとされ、原則的な依頼方法である修理依頼データの送信を受けた場合にCEが承諾拒否通知を行う割合は1%弱であったというのであって、業務委託契約の存続期間は1年間でY社に異議があれば更新されないものとされていた。

4 以上の諸事情を総合考慮すれば、CEは、Y社との関係において労働組合法上の労働者に当たると解するのが相当である。

最高裁判例です。

高裁の判断を覆し、労働者性を認めました。

本件最高裁は、一般論としての判断を示していませんが、以下の事情を重視しています。

(1)事業の遂行に不可欠な労働力として、その恒常的な確保のためにY社の組織に組み入れられていたこと

(2)契約内容が一方的に決定されていたこと

(3)報酬が労務の提供の対価としての性質を有すること

(4)各当事者の認識や契約の実際の運用において基本的に個別の修理補修等の依頼に応ずべき関係にあったこと

(5)指定する業務遂行方法に従い、その指揮監督の下に労務の提供を行っており、場所的にも時間的にも一定の拘束を受けていたこと

契約形態という形式ではなく、実質的関係を重視した判断です。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。