管理監督者26(エス・エー・ディー情報システムズ事件)

おはようございます。 また一週間始まりました。 がんばっていきましょう!

さて、今日は、プロジェクトマネージャーの管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。

エス・エー・ディー情報システムズ事件(東京地裁平成23年3月9日・労判1030号27頁)

【事案の概要】

Y社は、コンピューターのソフトウェア開発と販売、情報処理サービス業務及び情報提供サービス業務等を業とする会社である。

Xは、平成19年7月、Y社に入社して以降、平成21年2月まで就労した。

Xは、平成20年9月~平成21年2月、Y社が大阪にあるL社から受注したK電鉄・電車ダイヤ作成応援システムのソフトウェアの開発等の業務にプロジェクトマネージャーとして従事した。

Xは、Y社に対し、未払いの時間外および深夜の割増賃金を請求した。

Y社は、Xが管理監督者に該当する等と主張し争った。

【裁判所の判断】

Xの管理監督者性を否定。

未払時間外割増賃金と同額の付加金の支払いを命じた。

【判例のポイント】

1 行政通達の内容を踏まえると、管理監督者に該当するかどうかについては、(1)その職務内容、権限及び責任が、どのように企業の事業経営に関与するものであるのか(例えば、その職務内容が、ある部門全体の統括的なものであるかなど)、(2)企業の労務管理にどのように関与しているのか(例えば、部下に関する労務管理上の決定等について一定の裁量権を有していたり、部下の人事考課、機密事項等に接したりしているかなど)、(3)その勤務態様が労働時間等に対する規制になじまないものであるか(例えば、出退勤を規制されておらず、自ら決定し得る権限があるかなど)、(4)管理職手当等の特別手当が支給されており、管理監督者にふさわしい待遇がされているか(例えば、同手当の金額が想定できる時間外労働に対する手当と遜色がないものであるかなど)といった観点から、個別具体的な検討を行い、これら事情を総合考慮して判断するのが相当である。

2 Xは、従業員の労務管理の一部分(本件月間実績報告書の点検及び確認)を担当してはいるものの、従業員の出退勤の管理自体は、従業員自体の申告(メール送信)によって行われている。そして、前記検討のとおり、本件A社業務に途中から関与したこと、Xについても本件月間実績報告書が作成され管理されていたことを併せ考えると、Xが従業員の労務管理において広範な裁量権を有していたとは解し難く、Y社の従業員の自己申告を取りまとめたもの(本件月間実績報告書)を形式的に点検・確認していたのが実情であったと解される。
これら検討にかんがみると、Xが従業員の労務管理の一部分を担当していたことが、管理監督者性を基礎付ける重要な事情であるとまではいい難い。

3 Xは、他の従業員に比べて、相応の厚遇を受けていたということができる。
しかしながら、Xは、Y社代表Zの要望を受けて、本件A社業務の品質低下・業務遅滞を解消ないし軽減するためにY社に入社したという経緯があること、Y社がXに対し、時間外割増賃金は発生しない旨の説明を行った事実は認められないこと、Y社は、A社に対し、本件月間実績報告書に基づき、超過分(時間外労働分)の請求ないし調整を行っていたこと、Xは、前職(年俸711万円)において、別途、時間外割増賃金の支払を受けていたことが認められることを総合考慮すると、本件労働契約によるXの待遇が、管理監督者該当性を直ちに基礎付けるということはできない。

判決理由を読んでいると、まず、全体から考えると、裁判官は「管理監督者性否定」という心証を持っており、この結論に反する事情を必死に打ち消しているように読めてなりません。

判決なんて、そんなもんですけど・・・。

管理監督者性を肯定するなんて、よっぽどの場合に限られるんだよ、という裁判所の判断が見えてきます。

この事案は、会社側から控訴されています。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。