Monthly Archives: 12月 2011

労災50(マルカキカイ事件)

おはようございます

昨日は、社労士勉強会の後、プチ忘年会をしました。

社労士の先生が1人新しく増えました! 興味のある社労士の先生方のご参加、歓迎いたします!

次回は、2月初旬です。テーマは、不当労働行為についてです。

今日は、午前中は、刑事裁判が入っています。

お昼は弁護士会で支部総会。

午後は、もう1つ、刑事裁判です。こちらは、恐喝未遂の否認事件の第2回証人尋問です。

準備は万全です!! 今回もどこまで証言の信用性を崩せるかがポイントです。

裁判終了後、事務所で新規相談が1件入っています。

夜は、弁護士M先生と税理士K山先生と忘年会です

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は、執行役員部長の出張中の死亡と労災保険法上の労働者性に関する裁判例を見てみましょう。

マルカキカイ事件(東京地裁平成23年5月19日・労判1034号62頁)

【事案の概要】

Y社は、各種産業機械や建設機械の卸販売を業とする会社である。

Xは、昭和40年にY社に入社し、業務に従事していた者である。

平成10年12月、XはY社の理事に就任したが、この際、Y社はXが一般従業員を退職したとして取り扱い、退職金を支払っている。12年2月にXはY社の理事を退任して取締役に就任した。

13年12月、Y社において執行役員制度が導入されたことに伴い、Xは執行役員に就任した。

Xは、平成17年2月、商談のため福島県へ出張した。その際、橋出血(大脳と小脳を連絡する部位である「橋」での出血)により死亡した(当時62歳)。

Xの妻は、Xの死亡は業務(過重労働)に起因するものであるとして、労災保険法に基づく遺族補償給付等の請求をした。

これに対し、労基署長は、Xは労基法9条に該当する労働者とは認められないとして不支給とする決定をした。

【裁判所の判断】

船橋労基署長による遺族補償給付等不支給処分は違法である。
→Xの労働者性を肯定

【判例のポイント】

1 労災保険法上の労働者とは、(1)使用者の指揮監督の下において労務を提供し、(2)使用者から労務に対する対償としての報酬が支払われる者をいうと解すべきであり、これに該当するかどうかは、実態に即して実質的に判断するのが相当である。

2 ・・・以上によれば、Xは、一般従業員であったときから、理事に就任し、次いで取締役に就任し、更に執行役員に就任したという一連の経過を通じて、その間に役職の異動はあったものの、船橋営業所を拠点として、一貫して、建設機械部門における一般従業員の管理職が行う営業・販売業務に従事してきたものであり、その業務実態に質的な変化はなかったものということができる

本件では、Xの労働者性を否定する事情がいくつもある中で、業務実態に質的な変化がなかったことを重視し、労働者性を肯定しています。

なお、原告の主張の中でも述べられている「執行役員」の位置付けですが、

執行役員については『業務執行に関しては相当の裁量権限を有するもの、法的には会社の機関ではなく、一種の重要な使用人(会社法362条4項3号)である。会社との契約が雇用契約か委任契約かの点については、通常は前者である』(江頭憲治郎「株式会社法(第3版)」380頁)、「会社法上は特に規定がない『執行役員』については『労働者』といえる場合が多いと考えられる。」(菅野和夫「労働法(第9版)」96頁)などと説明されており、執行役員を労働者と考えるのが、学者や実務家の一般的解釈であった。

ということです。

執行「役員」だから労基法上の「労働者」ではないという考えは、捨てましょう。

不当労働行為26(クボタ事件)

おはようございます。

さて、今日は、派遣労働者の直雇用化前の団交申入れに関する裁判例を見てみましょう。

クボタ事件(東京地裁平成23年3月17日・労判1034号87頁)

【事案の概要】

Y社は、平成19年1月、Y社工場で就労している派遣労働者を、同年4月を目処に直接雇用することを決定した。

同年2月、上記派遣労働者が加入する労働組合であるX組合が、直雇用化実施前にY社に団体交渉を申し入れたところ、Y社は、1度は団体交渉に応じたが、その後のX組合からの団体交渉申入れには応じなかった。

X組合は、労働委員会に対し、救済申立てをし、不当労働行為であると判断された。

Y社は、命令を不服としてその取消を求めた。

【裁判所の判断】

請求棄却
→Y社の団交拒否は不当労働行為に該当する

【判例のポイント】

1 不当労働行為禁止規定(労組法7条)における「使用者」について、不当労働行為救済制度の目的が、労働者が団体交渉その他の団体行動のために労働組合を組織し運営することを擁護すること及び労働協約の締結を主目的とした団体交渉を助成することにあること(同法1条1項参照)や、団体労使関係が、労働契約関係又はそれに隣接ないし近接した関係をその基盤として労働者の労働関係上の諸利益についての交渉を中心として展開されることからすれば、ここでいう「使用者」は、労働契約関係ないしはそれに隣接ないし近似する関係を基盤として成立する団体労使関係上の一方当事者を意味し、労働契約上の雇用主が基本的に該当するものの、雇用主以外の者であっても、当該労働者との間に、近い将来において労働契約関係が成立する現実的かつ具体的な可能性が存する者もまた、これに該当するものと解すべきである。

2 本件団体交渉申入れは、交渉議題を(1)契約社員の就業規則、(2)有給休暇の引継ぎ、(3)平成19年4月以降の組合員の賃金、(4)契約社員の雇用期間の根拠と契約更新の具体的条件、(5)労働協約の締結、(6)その他であり、いずれも直雇用化後のX組合員の重要な労働条件に関するものである。

3 Y社は、現在に至るまで、本件団体交渉申入れの各時点において、自己が使用者に該当しないと主張し、かつ、本件団体交渉申入れに対し平成19年3月末日まで団体交渉に応じなかったことに正当な理由があったと主張しているが、これらの主張がいずれも認められないことは前述のとおりである。
そして、直雇用下後のX組合とY社との間の団体交渉で、組合員の雇用期間等の問題について妥協点を見出せておらず、現時点でも、今後のY社とX組合との間の団体交渉に関し、Y社が労働組合法7条の使用者性や同条2号の「正当な理由」について適切に判断することにより適切な時期に団体交渉が実施されることを期するという観点から、本件の救済方法として、本件不当労働行為に関するY社の責任を明確にした上で、Y社に対し今後本件と同様の不当労働行為を繰り返さない旨の文書手交を命じる必要性(救済利益)があるというべきである

前回の住友ゴム工業事件と近い事案です。

労組法の趣旨を考慮した内容ですね。

十分納得できるものだと思います。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為25(住友ゴム工業事件)

おはようございます。

さて、今日は、団交応諾義務に関する最高裁判例を見てみましょう。

住友ゴム工業事件(最高裁平成23年11月10日・労判1034号98頁)

【事案の概要】

X組合には、Y社の元従業員A、B及び元従業員の妻Cが加入している。

X組合は、Y社に対し、(1)会社における石綿使用実態の明確化、(2)退職労働者全員に対する健康診断の実施、(3)定年後の老妻認定者に対する企業補償制度の創設を求めて団交の開催を申し入れた。

Y社は、X組合からの団交の申し入れに対し、X組合には、Y社と雇用関係にある労働者は含まれていないことを理由として申入れに応じなかった。

そのため、X組合は、労働委員会に対し不当労働行為の救済申立てを行ったが、労働委員会は救済申立てを却下する旨の決定をしたため、X組合はその取消しを求めて訴訟を提起した。

【裁判所の判断】

Y社の上告を棄却、上告受理申立も不受理
→Y社の団交応諾義務を肯定

【判例のポイント】

(一審判決)
1 労組法7条の目的は、労働者の団結権を侵害する一定の行為(不当労働行為)を排除、是正して正常な労使関係を回復することにある。

2 同条2号にいう「使用者が雇用する労働者」とは、基本的に、使用者との間に現に労働契約関係が存在する労働者をいうと解されるが、労働契約関係が存在した間に発生した事実を原因とする紛争(最も典型的なものは、退職労働者の退職金債権の有無・金額に関する紛争である。)に関する限り、当該紛争が顕在化した時点で当該労働者が既に退職していたとしても、未精算の労働契約関係が存在すると理解し、当該労働者も「使用者が雇用する労働者」であると解するのが相当である

3 本件では、A及びBは、労働契約関係が存在した間に業務により石綿を吸引したことにより健康被害が発生している可能性があると主張し、Y社に対し、石綿の使用実態を明らかにすることとともに、石綿による被害が生じている場合にはその補償を求めているのであり、両名の心配はもっともであるから、本件団交要求は、A及びBの在職中に発生した事実に起因する紛争に関してされたものであって、両名が加入しているX組合は「使用者が雇用する労働者」の代表者であると解される

4 ただし、死亡した元従業員については、同人がX組合に加入した事実はないから、その遺族であるCがX組合に加入しているとしても、Y社は、Cの代表者としてのX組合が団体交渉を求めても、これに応じる義務を負わない

(二審判決)
1 労組法7条2号にいう「使用者が雇用する労働者」とは、原則的には、現に当該使用者が雇用している労働者を前提としているが、雇用関係の前後にわたって生起する場合(雇い入れが反復される臨時的労働者の労働条件を巡る紛争等)においては、当該労働者を「使用者が雇用する労働者」と認めて、その加入する労組と使用者との団交を是認することが、むしろ労組法上の趣旨に沿う場合が多い

2 使用者がかつて存続した雇用関係から生じた労働条件を巡る紛争として、当該紛争を適正に処理することが可能であり、かつ、そのことが社会的にも期待される場合には、元従業員を「使用者が雇用する労働者」と認め、使用者に団体交渉応諾義務を負わせるのが相当であるといえる。

3 その要件としては、(1)当該紛争が雇用関係と密接に関連して発生したこと、(2)使用者において、当該紛争を処理することが可能かつ適当であること、(3)団体交渉の申入れが、雇用期間終了後、社会通念上合理的といえる期間内にされたことを挙げることができる。そして、上記合理的期間は、雇用期間中の労働条件を巡る通常の紛争の場合は、雇用期間終了後の近接した期間といえる場合が多いであろうが、紛争の形態は様々であり、結局は、個別事案に即して判断するほかはない

内容的にも非常に参考になるものですね。

高裁が示した判断基準(上記二審判決の判例のポイント3)は重要ですね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介20 面接ではウソをつけ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、昨日に引き続きまして、面接通過の秘訣について書きたいと思います。

書類審査を通過された5名の方については、30~40分の面接を行います。

面接の際、どのような点を見ているかということを予め知っておくことは、非常に有利に働きますよね。

このブログを見ている方と見ていない方では、それだけで差がつきます。

実は、そういうところも見ているのです。

つまり、面接前にどれだけの下準備をしているかを見ているのです。

例えば、「私(栗田)について知っていることを教えて下さい。」という変な質問をしても、ちゃんと答えられる方もいます。

それは、事務所のホームページやブログを予めチェックしているからです。

いろいろな方法で熱意を見ているのです。

とはいえ、結局のところ、「この方と一緒に働きたい」と思えるかどうかです。

面接の際の話し方、雰囲気、表情等で「この方と一緒に働きたい」と思えば採用します。

なお、面接時に心得ておくべきことは、すべてこの本に載っています。

面接ではウソをつけ (星海社新書)
面接ではウソをつけ (星海社新書)

題名は胡散臭いですが、内容はしっかりしています。

実にいい本です。

まさにそのとおりです、ということが書かれています。

読んでもらえれば「面接ではうそを言ってください」という趣旨でないことはすぐにわかってもらえると思います。

面接官は、あなたの話の『内容』だけで合格・不合格を決めているわけではありません。もっと大事なのは、『話をするあなたが、実際にどういう人なのか?』ということなのです。」(79頁)

常に面接官の視点に立って、自分を見てください。」(150頁)

とにかく、質問の内容には敏感でいなければなりません。相手をイラッとさせることも多々あるのです。あなたが面接官なら、いきなり『休日は?』と質問してくる学生を採りたいと思うでしょうか?」(170頁)

ということです。

賃金39(技術翻訳事件)

おはようございます。

さて、今日は、賃金減額の有効性等に関する裁判例を見てみましょう。

技術翻訳事件(東京地裁平成23年5月17日・労判1033号42頁)

【事案の概要】

Y社は、翻訳、印刷及びその企画、制作等を行う会社である。

Xは、昭和56年、Y社に採用され、以来、Y社の制作部において、翻訳物の手配、編集等を行ってきたが、平成21年9月、Y社を退職した。

Y社は、会社の業績悪化を理由に、Y社の役職者全員を対象として、平成21年6月分以降の報酬ないし賃金を20%減額することを代表者会議等において提案し、実際にXの賃金は、同月分以降20%減額支給された。

本件賃金減額に際し、就業規則又は給与規程の改定が行われた事実はない。

【裁判所の判断】

本件賃金減額は無効

本件退職は、自己都合による退職である

【判例のポイント】

1 賃金の額が、雇用契約における最も重要な要素の一つであることは疑いがないところ、使用者に労働条件明示義務(労働基準法15条)及び労働契約の内容の理解促進の責務(労働契約法4条)があることを勘案すれば、いったん成立した労働契約について事後的に個別の合意によって賃金を減額しようとする場合においても、使用者は、労働者に対して、賃金減額の理由等を十分に説明し、対象となる労働者の理解を得るように努めた上、合意された内容をできる限り書面化しておくことが望ましいことは言うまでもない。加えて、就業規則に基づかない賃金の減額に対する労働者の承諾の意思表示は、賃金債権の放棄と同視すべきものであることに照らせば、労働基準法24条1項本文の定める賃金全額払の原則との関係においても慎重な判断が求められるというべきであり、本件のように、賃金減額について労働者の明示的な承諾がない場合において、黙示の承諾の事実を認定するには、書面等による明示的な承諾の事実がなくとも黙示の承諾があったと認め得るだけの積極的な事情として、使用者が労働者に対し書面等による明示的な承諾を求めなかったことについての合理的な理由の存在等が求められるものと解すべきである

2 Y社の退職金規程によると、退職金の支給率は、退職事由によりA、Bの2種類に区分され、会社都合の退職、在職中の死亡、業務上の負傷等による退職、定年退職の場合はA、それ以外の場合はBを適用するものとされているところ、そこでいう「会社の都合で退職したとき」とは、解雇、使用者の退職勧奨による退職等、使用者側の意向ないし発案に基づく退職を意味するものと解するのが相当である
本件退職は、確かにY社による本件雇用条件通告を契機とするものではあるが、最終的には、基本給の減額により退職金額が減額することを避けて、従来の基本給に基づいた比較的高額の退職金を得るという経済的目的に加え、「こういった環境にいたくない」、「一刻も早く辞めたい」というX自身の意思に基づく退職、すなわち自己都合による退職であったと認めるほかないというべきである。

3 Xは、Y社が本件賃金減額に引き続いて、本件雇用条件通告をしたことによりXは退職を余儀なくされたものであってこうしたY社の行為は、Xに対する不法行為に該当する旨を主張する。
そこで検討すると、本件賃金減額及び本件退職に関する経緯を総合すれば、Y社は、業績が近年下降線をたどる中、本件雇用条件通告により人件費を抑制することによって利益率を向上するとの意図を有していたものと見られるが、人件費の抑制を目指した労働条件の切下げ自体は、当事者の合意に基づくなど適法な方法で行われる限りは、許容されるというべきであるし、労働条件の切下げを労働者に提案する行為についても、その方法、態様が適法なものである限り、労働者に対する不法行為に該当しないことは言うまでもない

会社側としては、賃金を減額する際、上記判例のポイント1は参考になると思います。

要するに、そう簡単には賃金減額はできないよ、ということです。

ちゃんと準備をしなければ、裁判で争われた場合、たいてい負けることになりますので、顧問弁護士と相談しながら慎重に進めましょう。

労災49(大庄ほか事件)

おはようございます また1週間はじまりました。 今週もがんばっていきましょう!!

写真 11-12-02 12 01 14←「魚弥長久」でお昼ごはん。刺身定食。新鮮でおいしいですよ!

おすすめ!

今日は、午前中、富士の裁判所で労働事件の裁判です。

午後は、静岡に戻り、裁判が1件、新規相談が1件、医療事故の打合せが1件入っています。

夜は、刑事裁判の打合せをした後、後輩弁護士A君と食事に行きます

今日も一日がんばります!!
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さて、今日は、長時間労働と労災に関する裁判例を見てみましょう。

大庄ほか事件(大阪高裁平成23年5月25日・労判1033号24頁)

【事案の概要】

Y社は、大衆割烹店を全国展開している会社である。

Xは、大学卒業後、Y社に入社し、大衆割烹店で調理関係の業務に従事していたが、入社約4か月後に急性左心機能不全により死亡した(死亡当時24歳)。

Xの父母が、Xの死亡原因はY社での長時間労働にあると主張して、Y社に対しては不法行為または債務不履行(安全配慮義務違反)に基づき、また、Y社の取締役であるZら4名に対しては不法行為または会社法429条1項に基づき、損害賠償を請求した。

Y社側は、第1審判決を不服として、控訴した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 取締役は、会社に対する善管注意義務として、会社が使用者としての安全配慮義務に反して、労働者の生命、健康を損なう事態を招くことのないよう注意する義務を負い、これを懈怠して労働者に損害を与えた場合には会社法429条1項の責任を負うと解するのが相当である

2 勤労意欲の強い社員に対して、その社員の個人的利害を説く方法が相当であるとは考えられない。会社として早朝勤務を禁じるのであれば、その旨直截に伝える方法を採るべきであったのに、これを採らなかったのは、Y社において各現場店舗の責任者である店長や調理長に過重労働の問題性を認識させる措置がとられておらず、店長や調理長にも、その認識が乏しかったためであると考えられる。

3 当裁判所は、Y社が入社直後の健康診断を実施していなかったことが安全配慮義務違反であると判断するものではない。しかしながら、健康診断により、外見のみからではわからない社員の健康に関する何らかの問題徴候が発見されることもあり、それが疾病の発生にまで至ることを避けるために業務上の配慮を行う必要がある場合もあるのである。新入社員の健康診断は、必ずしも一斉に行わねばならないものではなく、適宜の方法で行うことが可能なのであるから、Y社が入社時の健康診断を自ら就業規則に定めながらこれを行わなかったことを、Y社の社員の健康に関する安全配慮義務への視点の弱さを表す事実の一つとして指摘することは不当ではない

4 当裁判所は、Y社の安全配慮義務違反の内容として給与体系や三六協定の状況のみを取り上げているものではなく、Y社の労働者の至高の利益である生命・健康の重大さに鑑みて、これにより高い価値を置くべきであると考慮するものであって、Y社において現実に全社的かつ恒常的に存在していた社員の長時間労働について、これを抑制する措置がとられていなかったことをもって安全配慮義務違反と判断しており、Y社取締役らの責任についても、現実に従業員の多数が長時間労働に従事していることを認識していたかあるいは極めて容易に認識し得たにもかかわらず、Y社にこれを放置させ是正させるための措置を取らせていなかったことをもって善管注意義務違反があると判断するものであるから、Y社取締役らの責任を否定する控訴人らの主張は失当である。なお、不法行為責任についても同断である

5 控訴人Aは管理本部長、控訴人Bは店舗本部長、控訴人Cは支社長であって、業務執行全般を行う代表取締役ではないものの、Xの勤務実態を容易に認識しうる立場にあるのであるから、Y社の労働者の極めて重大な法益である生命・健康を損なうことがないような体制を構築し、長時間勤務による過重労働を抑制する措置を採る義務があることは明らかであり、この点の義務懈怠において悪意又は重過失が認められる。そして、控訴人Dは代表取締役であり、自ら業務執行全般を担当する権限がある上、仮に過重労働の抑制等の事項については他の控訴人らに任せていたとしても、それによって自らの注意義務を免れることができないことは明らかである(最高裁昭和44年11月26日大法廷判決)。また、人件費が営業費用の大きな部分を占める外食産業においては、会社で稼動する労働者をいかに有効に活用し、その持てる力を最大限に引き出していくかという点が経営における最大の関心事の一つになっていると考えられるところ、自社の労働者の勤務実態について控訴人取締役らが極めて深い関心を寄せるであろうことは当然のことであって、責任者のある誠実な経営者であれば自社の労働者の至高の法益である生命・健康を損なうことがないような体制を構築し、長時間勤務による過重労働を抑制する措置を採る義務があることは自明であり、この点の義務懈怠によって不幸にも労働者が死に至った場合においては悪意又は重過失が認められるのはやむを得ないところである。なお、不法行為責任についても同断である。

この事件の第1審判決については、以前、ブログで取り上げました。 こちらをどうぞ。

大阪高裁は、Y社側の控訴を棄却しました。

金額が金額ですし、役員の責任も認められていますので、会社側は大変です。

会社を経営している社長のみなさん、同じ過ちを繰り返さない