Daily Archives: 2013年2月4日

解雇94(長崎県公立大学法人事件)

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さて、今日は、大学教授が勤務時間中に企業経営に当たったことを理由とする懲戒処分に関する裁判例を見てみましょう。

長崎県公立大学法人事件(福岡高裁平成24年4月24日・判タ1383号228頁)

【事案の概要】

Xは、Y大学法人が運営する県立大学に勤務する教授である。

Xは、当時、県関係者の支援により設立されたベンチャー企業の代表取締役となった。

Y大学法人は、Xが大学の勤務時間内に必要な許可等を得ずにその経営に当たったことを理由に停職6月の懲戒処分に付した。

これに対し、Xは、本件懲戒処分の付着しない労働契約上の権利を有することの確認等を求めた。

なお、第1審は、本件懲戒処分は無効と判断した。

【裁判所の判断】

控訴棄却
→懲戒処分は無効

【判例のポイント】

1 本件懲戒処分の理由は、Xの多数かつ長時間に及ぶ無断欠勤及びY大学法人理事長がXに対し兼職従事の実施状況の報告を求めたにもかかわらずXはこれに従わなかったことであるところ、前者の無断欠勤については、その回数及び時間の程度が、本件就業規則47条所定の懲戒の種類の選択及び減給あるいは停職が選択された場合の金額あるいは期間を定めるに際し重大な影響を与えることから、その認定に際しては、Y大学法人が主張する各欠勤日ごとに、その有無、時間及び理由について、証拠並びにY大学法人の反論及び反証を踏まえた慎重な検討を行うことが必要である。

2 ・・・以上認定した事実によれば、Y大学法人は、Xの欠勤を理由とした本件懲戒処分を行うに際し、上記欠勤の具体的内訳(欠勤の日数、各日の欠勤時間)及びこれを検証することのできる資料を交付していないことに加え、弁明を行う日の通知から弁明の実施までわずか3日しかないことに鑑みれば、Xが独自に資料を入手するなどして、Y大学法人が主張する欠勤状況の正確性についての検討及び反論をすることはできなかったことが認められ、これがXにおける防御活動の妨げとなることは明らかである
そして、上記のとおり、欠勤を理由とした懲戒処分においては、欠勤の日数及び時間の程度が、本件就業規則47条所定の懲戒の種類の選択及び減給あるいは停職が選択された場合の金額あるいは期間を定めるに際し重大な影響を与えることからすれば、Y大学法人がXに対して行った本件懲戒処分に至る手続のうち、Xの欠勤の認定には、重大な瑕疵があり、乙8あるいは乙38記載の欠勤日数を、そのまま本件懲戒処分の相当性の判断の基礎とすることは許されないというべきである

3 ・・・以上を前提に本件懲戒処分の相当性について検討するに、本件懲戒処分における停職は、懲戒解雇に次ぐ重い処分であり、6か月という期間は最長期間である。そして、Xに対し停職処分が行われた場合には、処分それ自体によって同人の法的地位に一定の期間における職務の停止及び給与の全額の不支給という直接の職務上及び給与上の不利益が及び、将来の昇給等にも相応の影響が及ぶこと、同人の研究活動に重大な支障を来すことになることからすれば、その実施は慎重になされるべきものである。
すると、(1)バイオラボ事業は、長崎県及びY大学法人の並々ならぬ意向により開始されたものであり、Y大学法人における勤務時間の管理は形骸化していたことと併せると、Xにおいて勤務時間の振替申請や休暇届等の必要な手続を怠ったことについて、その全てをXの責任とするのは相当ではないこと、(2)Y大学法人主張の欠勤数をそのまま本件懲戒処分の前提とすることは許されないこと、(3)中国渡航による終日欠勤については、合計日数は59日となるものの、本件懲戒処分の対象となった平成15年10月から平成20年11月における年平均渡航日数は12日程度に過ぎないことに加え、(4)Y大学法人関係者は、本件懲戒処分後もなお、Xの欠勤による大学業務への支障は生じていなかった旨長崎県議会で答弁していること、他にXの欠勤により大学業務について相当な支障が生じたことを認めるに足る証拠はないことからすれば、文書提出についての職務命令違反を考慮しても、Xについて停職とすることは重きに失するというべきである。

本件は、解雇事案ではなく、停職処分ですが、一応解雇のグループに入れておきます。

控訴審でも、第1審同様に、懲戒処分は無効であると判断しました。

ちなみに、第1審は、大学関係者によるベンチャー企業創設に対する当時の県知事の意向、大学関係者の言動、会社におけるXの地位・役割、大学の勤務時間内に行われた会社に関する行事に大学関係者が多数回参加していたこと、Xの勤務時間内の兼業についてY大学法人は注意・警告をしなかったこと、勤務時間について、大学が実態として裁量労働制と同様の運用をしていたことを指摘して、本件時間内兼業について黙示の承認がなされていたという理由により、懲戒処分を無効と判断しました。

これに対し、第2審は、Y大学法人の黙示の承認については認めませんでした。

参考にすべきは、上記判例のポイント2の手続面に関する判断です。

懲戒処分を行う際は、手続面にも留意して慎重に行う必要があります。

是非、参考にしてください。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。