Daily Archives: 2013年2月28日

管理監督者30(サンクスジャパン事件)

おはようございます。

さて、今日は、業務上志望者の管理監督者性と給付基礎日額の算定に関する裁判例を見てみましょう。

サンクスジャパン事件(福岡地裁平成24年5月16日・労判1058号59頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に勤務していたXの妻が、Xは業務に起因して発症した急性心臓死により死亡したと主張して、佐賀労働基準監督署長に対し、労災保険法に基づき、遺族補償給付及び葬祭料の支給を請求したところ、本件署長から、平成21年4月6日付けで、これらについて給付基礎日額を1万3236円として算定した金額を支給する旨の各処分を受けたため、上記給費基礎日額の算定に誤りがあるとして、被告国に対し、本件処分の取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

管理監督者に当たらない
→遺族補償給付及び葬祭料の支給に関する処分を取り消す。

【判例のポイント】

1 一般に、管理監督者には労働時間、休憩及び休日に関する労基法の規定を適用しない旨を定める労基法41条2号の趣旨は、管理監督者は、重要な職務と責任を有し、労働条件の決定その他労務管理等について経営者と一体的な立場にあるため、同法の定める労働時間規制を超えて活動することが要請され、かつ、出退社等の事故の労働時間について自由裁量を働かし得る上、その地位にふさわしい待遇を受けているため、厳格な労働時間規制をしなくても労働者保護に欠けることにはならない、という点にあるものと解される。
そうすると、管理監督者に該当するか否かは、(1)その業務内容、権限及び責任に照らし、労務管理等に関して経営者と一体的な立場にあるといえるか否か、(2)自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有しているといえるか否か、(3)その地位にふさわしい待遇を受けているか否か、などの観点から個別具体的な検討を行い、これらの事情を総合考慮して判断するのが相当である。

2 Xは、Y社の商品部第4課長の地位にあり、同課が担当する家電等に関し、本件会社として仕入れる商品の選択、仕入値及び数量並びに店舗での販売価格の決定権限が与えられている。
しかし、Xの上記権限は、多岐にわたるY社の取扱商品のうちの限定された一分野に関するものである上、商品部の各課の全体的な売上げの状況などは、商品部部長が管理していることからすると、Xは、Y社から与えられた一定の裁量の範囲の中で、家電等の商品の仕入れや販売価格の決定等を行っていたことが推認される。
したがって、Xが上記の権限を行使していたことをもって、XがY社の経営全体に関する決定に参画していたなどということはできず、他にこれをうかがわせる事実を認めるに足りる客観的な証拠はない

3 Xが、この4名の部下に対し、人事考課、勤務時間の管理及び給与等の待遇の決定など、労務管理上の指揮命令権限を有し、これを行使していたことを認めるに足りる客観的な証拠は見当たらない
以上のとおり、Xが、本件会社の経営全体に関する決定に参画したとか、予算策定に直接的に関与していたとはいえない上、部下に対する労務管理上の指揮監督権限を有していた事実が認められないことなどからすれば、その業務内容、権限及び責任に照らし、Xが労務管理等に関して経営者と一体的な立場にあったとまではいえない。

4 Y社は、Xの労働時間について、タイムカード等による出退勤管理をしていない。しかし、役職に就いていないバイヤーについても同様の取扱いをしていたことからすると、単に、業務の内容及び性質からこのような取扱いをしていたにすぎないといえる。したがって、上記の事情をもって、Xが労働時間について裁量権を有していたことを根拠づけるものと評価することはできず、他にこのことをうかがわせる事情は見当たらない。
かえって、XはY社の設置した出勤簿に押印していた上、1週間ごとにXの予定を記載した週間行動予定表が作成されていることが認められることなどからすると、Xの稼働状況等については、Y社がこれを一定程度管理していたことがうかがわれる。これに加えて、Xの勤務実態からすると、Xが相当の長時間労働の常況にあったことが推測されることからすれば、Xに労働時間に関する広い裁量権が与えられていたということはできない

5 ・・・Xは、上記のとおり労基法41条2号にいう管理監督者に当たらないから、時間外労働等の割増賃金についてY社に請求できることを前提に給付基礎日額が算定されなければならない。そうであるにもかかわらず、Xが管理監督者に当たるとして、時間外労働等の割増賃金を基礎に入れることなく給付基礎日額を算定した本件処分は、上記給付基礎日額の算定を誤ったものであり、違法であるといわざるを得ない。

労災における給付基礎日額との関係で、管理監督者性が争われた珍しい事案です。

管理監督者性については、多くの裁判例を同じく、否定されています。

この程度の事情ではまず肯定されないと思います。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。