Daily Archives: 2013年2月22日

解雇97(World LSK事件)

おはようございます。 

さて、今日は、中途採用の内定取消しに対する損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

World LSK事件(東京地裁平成24年7月30日・労判1057号160頁)

【事案の概要】

Y社は、LEDの販売等を営む会社である。

Xは、Y社への採用が内定したが、平成23年9月、同内定を取り消された。

なお、Xは、Y社の入社面接時、A社で勤務しており、Y社からの内定を受けて、A社を退職している。

【裁判所の判断】

内定取消しは違法

Y社に対し約133万円の支払を命じた

【判例のポイント】

1 Y社代表者は、8月8日には具体的に確定した雇用条件でXを採用する旨の意思表示をしており、同時点で本件労働契約が成立したと認めるのが相当である。

2 Y社は、本件労働契約が成立しているにもかかわらず、Xに対し、Xの就業開始日の翌日である9月2日に突然、採用を取り消す旨の意思表示をし、また、その点について何ら合理性のある理由を説明していないから、Xに対し、違法な採用内定の取消しを行ったというべきであり、これと相当因果関係を有する損害の賠償責任を負う。

3 本件労働契約の内容からすれば、Xは、本来であれば、平成23年9月1日からY社で就業を開始し、基本給月額50万円を得られたはずであった上記給与を得られなかったこと、Xは、10月1日、別の会社に就職することができ、同社での給与は月額39万6100円であること、Y社における給与額とXが就職した会社における給与額との差額は、月額10万3900円であること、本件労働契約においては試用期間が3か月と定められていたことが認められる。
そうすると、Xは、少なくとも3か月はY社に勤務することができ、月額50万円の給与を得ることができたと認めるのが相当であるから、その逸失利益は、9月分の給与50万円及び2か月分の差額20万7800円(10万3900円×2か月)の合計70万円7800円と認めるのが相当である

4 Xは、Y社の採用内定に基づきA社を退職したこと、Y社による採用内定取消し後、再就職先を探し、東京都内の会社に就職したことが認められる。Xは、G市内で再就職先が見つからなかった旨主張するが、G市内において、再就職先がまったくなかったとは考え難く、転居費用については、Y社の違法行為と相当因果関係のある損害とは認め難い(なお、転居したことについては慰謝料算定の一事情として考慮する。)。

5 Xは、Y社の採用内定に基づき、前勤務先であるA社を退職し、Y社での就業準備を行ってきたにもかかわらず、一方的に採用内定を取り消された上、Y社社長からこの点に関する説明もなく、不誠実な対応をされたことなどにより精神的苦痛を被ったことが認められる。このXの精神的苦痛に対する慰謝料としては50万円が相当である。

内定取消しに関する裁判例です。

採用内定を受けた者の不利益を考えると、やはり合理的な理由のない内定取消しは許されるべきではありません。

使用者としては、十分注意してください。

また、上記判例のポイント4は、損害論のところで問題となりますね。

個々の事案において、どこまでを相当因果関係の範囲と認めるのかという点です。

参考にしてください。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。