Daily Archives: 2013年2月15日

不当労働行為62(パナソニックエコシステムズ事件)

おはようございます。

さて、今日は、組合の申立人適格、会社の使用者性等に関する命令を見てみましょう。

パナソニックエコシステムズ事件(愛知県労委平成24年9月24日・労判1057号170頁)

【事案の概要】

Xは、人材派遣会社からY社に派遣され、有圧換気扇の試作品の性能実験業務に従事してきた。

Y社は、平成21年3月、Xに対する労働者派遣契約を解除すると通知した。

Xは、平成21年4月、組合に加入し、組合は、Y社に直接雇用を求めて団体交渉を申し入れた。

Y社は、自らは単なる派遣先であって団交を行う立場にないと回答して、団交に応じなかった。

【労働委員会の判断】

労働組合の申立人適格は認められる

Y社の労組法上の使用者性は否定

【命令のポイント】

1 Xが、平成21年4月に組合に加入し、組合がY社に対し、Xを直接雇用することを求め団体交渉を申し入れたこと、同人が同月末をもってY社での派遣就労を終えたことは、・・・で認定したとおりであり、Y社で就労する派遣労働者であったXについて、Y社での派遣就労の終了に際し、組合により直接雇用の申込義務の有無について問題が提起され、本件において争われているのであるから、この限りにおいて、現時点においても同人は、その加入する労働組合による団体交渉を通じて、労働条件等について交渉する権利を有する「労働者」の地位にあるものといえる

2 Xが学習塾の経営者としての側面を有するようになったことにより、組合の自主性が失われていること及び同人がY社の利益代表者に該当することについての疎明はない。また、同人が雇用するアルバイト4名が、いずれも組合に加入したことがないことは、・・・で認定したとおりであり、同人が、組合に対する関係で、労組法第2条第1号に規定する使用者の利益代表者に当たるとはいえない。
よって、組合は労組法第2条に適合する労働組合ではなく申立人適格を有しないとのY社の主張は採用できない。

3 Xに関して、Y社は派遣受入期間の制限を超えて同人の労務の提供を受けていたものの、同人を会社の社員と同様に扱っていたとはいえず、採用及び賃金額決定への関与、労働時間の管理、配置権限の行使及び雇用契約打切りへの関与等の各点においても、派遣先の立場を超えて、雇用主と同視しうる程度に具体的に支配、決定できる地位にあったとまでは認められない
また、これらのことを合わせ総合的に判断しても、Y社が、Xとの労働関係について、雇用主と同視できる程度に具体的に支配、決定できる地位にあったとまではいえない
したがって、Xについて、Y社が労組法上の使用者に当たるとはいえない

派遣先会社への直接雇用を要求する団体交渉を申し入れた事案ですが、労働委員会は、派遣先会社の労組法上の使用者性を否定しました。

上記命令のポイント3は押さえておくといいと思います。

これに対し、派遣労働者に対するセクハラの事案について、派遣先会社を団交義務を負う使用者とした日本製箔事件(滋賀県労委平成17年4月1日)や派遣契約解除に関する事案について派遣先会社に団交義務を負う使用者としたタイガー魔法瓶事件(大阪府労委平成20年10月10日)などがあります。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。