Daily Archives: 2014年7月25日

労働災害75(東芝事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。
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←先日、久しぶりに両替町の「心苑」に行ってきました。

写真は、定番の「海老のレタス包み」です。

行くと毎回注文します。

この海老の味付けがちょうどいいのです。

おいしゅうございました。

今日は、午前中は、富士の裁判所で債権回収の裁判が1件、顧問先でのセミナーが1件入っています。

今回のセミナーのテーマは、「事例をわかる!景品表示法のポイントと実務上の留意点」です。

過去の景表法違反の事例を通して、実務上の留意点を解説していきます。

午後は、新規相談が1件入っています。

夕方から、浜松市浜北区の会社を訪問します。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、メンタルヘルスに関する情報の申告がないことをもって、過失相殺をすることはできないとする最高裁判決を見ていきましょう。

東芝事件(最高裁平成26年3月24日・労経速2209号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、鬱病に罹患して休職し休職期間満了後にY社から解雇されたが、上記鬱病は過重な業務に起因するものであって上記解雇は違法、無効であるとして、Y社に対し、安全配慮義務違反等による債務不履行又は不法行為に基づく休業損害や慰謝料等の損害賠償、Y社の規程に基づく見舞金の支払い、未払賃金の支払等を求める事案である。

なお、上記休業損害の損害賠償請求と上記未払賃金の支払い請求とは選択的併合の関係にある。

原審(東京高裁平成23年2月23日)は、解雇は無効であるとし、過重な業務によって発症し増悪した本件鬱病につきY社はXに対し安全配慮義務違反等を理由とする損害賠償責任を負うとした上で、その損害賠償の額を定めるに当たり、Xが神経科の医院への通院等の情報を上司や産業医等に申告しなかったことは、Xの鬱病の発症を回避したり発症後の増悪を防止する措置を執る機会を失わせる一因となったものであるから、Xの損害賠償請求については過失相殺をするのが相当であること、またXには個体側のぜい弱性が存在したと推認され損害賠償請求についてはいわゆる素因減額をするのが相当であると判断して、損害額の2割を減額するととともに、休業損害に係る損害賠償請求につき傷病手当金、及び、いまだ支給決定がされていない期間の休業補償給付をXに対する損害賠償の額から控除することが相当であるとして、その認容すべき額が選択的併合の関係にある未払賃金請求の認容すべき額を下回るからこれを棄却すべきとした。

【裁判所の判断】

原判決中、損害賠償請求及び見舞金支払請求に関するX敗訴部分を破棄し、東京高裁に差し戻す。

その余の上告を棄却する。

【判例のポイント】

1 ・・・上記の業務の過程において、XがY社に申告しなかった自らの精神的健康(メンタルヘルス)に関する情報は、神経科の医院への通院、その診断に係る病名、神経症に適応のある薬剤の処方等を内容とするもので、労働者にとって、自己のプライバシーに属する情報であり、人事考課等に影響し得る事柄として通常は職場において知られることなく就労を継続しようとすることが想定される性質の情報であったといえる。使用者は、必ずしも労働者からの申告がなくても、その健康に関わる労働環境等に十分な注意を払うべき安全配慮義務を負っているところ、上記のように労働者にとって過重な業務が続く中でその体調の変化が看取される場合には、上記のような情報については労働者本人からの積極的な申告が期待し難いことを前提とした上で、必要に応じてその業務を軽減するなど労働者の心身の健康への配慮に努める必要があるものというべきである

2 ・・・このように、上記の過重な業務が続く中で、Xは、上記のとおり体調が不良であることをY社に伝えて相当の日数の欠勤を繰り返し、業務の軽減の申出をするなどしていたものであるから、Y社としては、そのような状態が過重な業務によって生じていることを認識し得る状況にあり、その状態の悪化を防ぐためにXの業務の軽減をするなどの措置を執ることは可能であったというべきである。これらの諸事情に鑑みると、Y社がXに対し上記の措置を執らずに本件鬱病が発症し増悪したことについて、XがY社に対して上記の情報を申告しなかったことを重視するのは相当でなく、これをXの責めに帰すべきものということはできない

3 原審は、安全配慮義務違反等に基づく損害賠償請求のうち休業損害に係る請求について、その損害賠償の額から本件傷病手当金等のX保有分を控除しているが、その損害賠償金は、Y社における過重な業務によって発症し増悪した本件鬱病に起因する休業損害につき業務上の疾病による損害の賠償として支払われるべきものであるところ、本件傷病手当金等は、業務外の事由による疾病等に関する保険給付として支給されるものであるから、上記のX保有分は、不当利得として本件健康保険組合に返還されるべきものであって、これを上記損害賠償の額から控除することはできないというべきである。
また、原審は、上記請求について、上記損害賠償の額からいまだ支給決定を受けていない休業補償給付の額を控除しているが、いまだ現実の支給がされていない以上、これを控除することはできない(最高裁昭和52年10月25日)。

有名な事件の最高裁判決です。

使用者側のみなさんは、上記判例のポイント1をおさえておきましょう。