Daily Archives: 2015年1月8日

解雇160(学校法人専修大学(専大北海道短大)事件)

おはようございます。

今日は、希望退職に応じなかった教員らに対する整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人専修大学(専大北海道短大)事件(札幌地裁平成25年12月2日・労判1100号70頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用され、Y社が設置運営する専修大学北海道短期大学の教員として勤務していたXらが、平成24年3月31日付けでなされた解雇(整理解雇)は無効であるとして、XらとY社との間の雇用関係が存続することの確認並びに平成24年4月以降の賃金及び平成24年6月以降の賞与の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却
→整理解雇は有効

【判例のポイント】

1 本件解雇は、整理解雇について規定する本件就業規則21条1項3号に基づくものであるところ、同号に基づく整理解雇が解雇権を濫用したものとして無効(労働契約法16条)になるか否かを判断するに当たっては、整理解雇が、使用者における業務上の都合を理由とするものであり、落ち度がないのに一方的に解雇され収入を得る手段を奪われるという重大な不利益を労働者に対してもたらすものであることに鑑み、①人員削減の必要性、②解雇回避努力義務の遂行、③被解雇者選定の合理性、④解雇手続の相当性を総合考慮して判断すべきである。もっとも、前記①ないし④の全てが充足されなければ整理解雇が無効となるとは解されない。

2 北海道短大においては、平成17年10月頃までに入学志願者数及び入学者数が落ち込み、それに伴って財務状況も悪化していたことから、緊急3カ年計画等の各種改善策を実施したが、平成21年度末までに入学志願者数及び入学者数は微増に転じたものの、入学定員の充足や単年度の支出超過解消までには至らず、帰属収支差額及び消費収支差額においてなおも大幅な支出超過が続くこととなったというのである。これに加えて、Y社においても消費収支差額において支出超過となったこと、全国的に見ても短期大学の入学者数が年々減少しているという状況にあったことからすれば、本件募集停止決定をしたY社の経営判断は、合理的なものであったと認めるのが相当であり、また、本件募集停止決定によって北海道短大には新規入学者がいなくなり、閉校が必然的なものとなったのであるから、北海道短大の教職員らについて人員削減の必要性があったと認めるのが相当である。

3 Y社が、前記の方法のほかに、本件解雇を回避する方法として、早期希望退職者には退職金及び退職加算金に加えて基本給の7か月分の退職特別加算金を支払い、希望退職者には退職金及び定年までの残余年数に応じた基本給の6か月分ないし14か月分の退職加算金を支払うこととして、それぞれ希望退職者の募集を行っていること、本件解雇に伴うXらの不利益を軽減する方法として、Y社の費用負担による再就職支援会社の利用を提案したり、他の学校法人に対し北海道短大の教員の紹介文書を送付し採用機会を得られるよう努めたりしていることにも鑑みれば、Y社の対応は、本件解雇及び本件解雇に伴う不利益を回避、軽減するための努力を十分に尽くしたものと認めるのが相当である

4 Y社が、北海道短大の教職員協議会における意見交換や、北海道短大の教職員との個別面談を実施していることからすれば、Y社は、Xらに対し、Xらが加入する組合や教職員協議会を通じて又は直接に、本件解雇の必要性、本件解雇及びそれに伴う不利益の回避措置、本件解雇の対象者の選定について、納得を得られるよう十分な説明、協議を行ったものというべきである。

一般的に整理解雇の有効性は非常に厳しく判断されますが、上記判例のポイント3のように、ここまで被解雇者の不利益を回避、軽減する努力をすれば、裁判所も有効だと認定しやすくなります。

もっとも、会社の規模によってはここまでできないということも当然ありますが。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。