Daily Archives: 2015年1月23日

解雇161(ブーランジェリーエリックカイザージャポン事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、GMに対するセクハラ行為を理由とする降格と雇止めの有効性に関する裁判例を見てみましょう。

ブーランジェリーカイザージャポン事件(東京地裁平成26年1月14日・労判1096号91頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、GMとして採用したXに対し、セクハラ等GMとして不適切な行為があったとして、GMから業務部マネージャーに異動させ、賃金を減額した。また、Y社はXの定年日以降の労働契約は1年ごとの嘱託契約であったとして、平成25年2月28日以降、契約を更新しない旨を同年1月7日にXに通告したところ、Xが、本件降格が違法であると主張して、GMの地位にあることの確認および降格前の賃金と降格後の賃金の差額の支払い、慰謝料の支払いを求めるとともに、本件雇止めに効力がないと主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認および平成25年1月以降の月例賃金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

降格は有効

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 本件降格に伴いY社はXに対して異動辞令しか交付しておらず、何らの懲戒処分を行っていないのであって、本件降格は人事権の行使として行われたものとみるほかない。

2 ・・・以上のとおり、複数の女性従業員の羞恥心を害するセクハラ行為を行っていたことが認められる上、裁判上は認定するまで至らない行為についても特に争っていなかったことも併せ考慮すれば、XにY社業務全般を統括するGMとしての適格性が欠けると判断したY社の判断に裁量の逸脱は認められない

3 Xは、減給額が過大であると主張するが、減給額が合計22万2000円に上るからといって、それだけで裁量を逸脱したものということはできない

4 X・Y社間において、雇用契約時に定年規定を適用しないという特約を交わしたということはないので、Xは平成24年2月末日をもって定年となり、同年3月からは嘱託契約が締結されたとみるほかないが、上記のとおり、Y社における嘱託契約は、1年のものとそうでないものがあること、Xについては、1年の嘱託契約となる継続雇用制度において定められた、定年6か月前までの条件提示と希望聴取という手続も踏まれていないことに照らすと、X・Y社間に1年の有期雇用契約が締結されたと認めることはできない
また、仮に1年の有期雇用契約であったとしても、定年後の継続雇用制度の趣旨からすればXには更新の合理的期待があり、降格後のマネージャーとしてのXの職務に問題があったと認められないことからすれば、本件雇止めは相当性を欠くものというべきである

複数のセクハラ行為の存在が認定されていることに加え、裁判上は認定するまでに至らない行為についても考慮の一要素となっていることは参考にすべきです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。