不当労働行為109(JR東日本大宮支社・常務発言)事件

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、組合活動批判にかかる常務発言の不当労働行為性に関する裁判例を見てみましょう。

JR東日本大宮支社・常務発言事件(東京高裁平成26年9月25日・労判1105号5頁)

【事案の概要】

本件は、東京都労働委員会が、Xの不当労働行為の申立て(A常務が、宇都宮運転所及び大宮信通センターで行われた社内行事(本件安全キャラバン)の冒頭挨拶において、不当労働行為に当たる発言(本件発言)をしたとして、その救済を求めるもの)を棄却し(初審命令)、中央労働委員会が、Xの再審査申立てを棄却(本件命令)ことから、Xが、国に対し、本件命令の取消しを求めた事案である。

原判決がXの請求を棄却したので、Xがこれを不服として控訴した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 本件署名活動の対象となった浦和電車区事件は、列車の安全運行の確保を担うY社にとって、再発防止に取り組むべき重要な課題といえるから、A常務が本件安全キャラバンの冒頭挨拶において、同事件に言及することは相当である。また、本件発言当時、Y社は、本件組合員らが1審の東京地方裁判所で認定された強要行為をし、その結果、職場秩序を著しく乱し、会社の信用を著しく失墜せしめたとして、懲戒解雇しており、A常務が、本件安全キャラバンの機会を捉えて、本件組合員らを擁護することが、会社外部の者からどのように見られるかという視点を交えながら、参加者に対し、本件組合員らに執った措置への理解を求め、その判断の正当性を説明することも許されると解される

2 たしかに、その際、A乗務が本件発言において用いた「覚悟」や、「今日はそれぐらいに留めておきますけどね」との表現は、適切なものであったとはいいがたいが、①A常務が、本件発言前に、「あとは社員一人ひとりの意思表示だから、会社がどうのこうの言う立場でない。」旨前置きし、本件発言後、会社も改めるべきは改めていくつもりであり、意見を聞かせてもらいたい旨付言して挨拶を締めくくったこと、②本件発言は、A常務の挨拶の一部にすぎず、特に強調され、繰り返されたものでなく、組合員のみならず参加者全員を対象として行われたものであること、③本件発言後、Y社は、本件署名活動に会社として関与する考えはないことを繰り返し表明し、本件発言に先立つ秋田支社長の発言を巡る一件でも、文書で、Xが行う本件署名活動に会社として介入するつもりはない旨回答していることなどを総合すると、本件発言が、Xの組織や運営等に対する支配介入に当たるということはできない

役職に就いている方の発言内容如何によっては、それだけで不当労働行為になってしまうこともあります。

十分ご注意ください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。