Daily Archives: 2016年4月22日

賃金111(東和工業事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、コース別雇用制における性別振分けと差額賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

東和工業事件(金沢地裁平成27年3月26日・労判1128号76頁)

【事案の概要】

本件は、契約期間の定めのない労働者としてY社に雇用されていたXが、Y社に対し、以下の各理由により、以下の各支払請求をした事案である。

Y社において総合職と一般職から構成されるコース別賃金制度が導入されて以降は、Y社はXに総合職の賃金表を適用すべきであったのに、一般職の賃金表を適用してきたと主張して、①主位的に、不法行為による損害賠償請求権に基づき、損害賠償金として、1864万3460円+賃金損害金、②予備的に、不当利得返還請求権に基づき694万8600円+遅延損害金(以下、省略)。

【裁判所の判断】

不法行為に基づく損害賠償請求として328万円(年齢給差額198万円、慰謝料100万円、弁護士費用30万円の合計)+遅延損害金

賃金請求として6万0672円+遅延損害金

付加金請求として6万0672円+遅延損害金

退職金請求として101万6266円+遅延損害金

を支払え

【判例のポイント】

1 労働基準法4条は「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。」と定めている。
労働基準法4条は、性別を理由とする賃金差別を禁止した規程であり、使用者が男女別の賃金表を定めている場合のように、男女間に賃金格差が生じており、かつ、それが性別の観点に由来する(その他の観点に由来するものとは合理的に考えにくい)ものと認められるときには、男女の労働者によって提供された労働の対価が等しいかを問うまでもなく、同条違反を構成するものである。そして、この理は、賃金表に男性や女性といった名称が用いられていない場合であっても、実態において男女別の賃金表を定めたのと異ならない態様で複数の賃金表が適用されているときにも同様に当てはまると解すべきである

2 本件コース別雇用表においては、総合職と一般職とで異なる賃金表が適用されているところ(特に年齢給については、年連という要素だけで、総合職と一般職の間で相当の差額が生じる。)、この総合職と一般職の区別が、事実上、性別の観点からされていたのであれば、実態において男女別の賃金表を定めたのと異ならない態様で複数の賃金表が適用されていたものとみるほかないのであり、このような事態は労働基準法4条に違反するものといわざるを得ない。

3 Y社が従業員数十名程度の規模の会社であり、従業員も採用する機会が限られていることを考慮しても、上記のことからすると、本件コース別雇用制導入時の従業員の振り分けは、総合職及び一般職のそれぞれの要件にしたがって改めて行ったものではなく、総合職は従前の男性職からそのまま移行したもの、一般職は女性職からそのまま移行したものであり、その状況が本訴提起後まで継続していたと理解するのが素直であって、本件コース別雇用制における総合職と一般職の区別は、結局のところ、男女の区別であることが強く推認されるというべきである。

4 労働基準法4条は強行規定であり、同条に違反する労働条件は無効である(同法13条前段)。そして、Y社における一般職(事実上の女性用)の賃金表が、総合職(事実上の男性用)の賃金表に比べて、労働者に不利なものであることは明白であるから、Y社と女性労働者との労働契約のうち、一般職の賃金表を適用する部分は無効であるというべきところ、無効となった賃金の定めは総合職の賃金表によって補充されるものと解するほかない(労働基準法13条後段)。
そうすると、労働基準法4条違反の前記Y社の不法行為におけるXの損害は、Xが一般職の賃金表に基づき現に支給されていた賃金と、総合職の賃金表の適用があるとすればXが得られる賃金との差額であるというべきである。

非常に重要な裁判例です。

コース別の雇用表を採用している会社は、この裁判例を参考に現在の雇用制度が労基法違反になっていないかチェックする必要があります。

是非、実務に活かしてください。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。