Daily Archives: 2016年10月24日

不当労働行為157 組合員に対して時間外労働を命じなかったこと、運送業務を配車しなかったことが不当労働行為にあたるか(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、組合員に対して時間外労働を命じなかったこと、運送業務を配車しなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案を見てみましょう。

大石運輸事件(埼玉県労委平成28年7月28日・労判1139号90頁)

【事案の概要】

本件は、組合員に対して時間外労働を命じなかったこと、運送業務を配車しなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

時間外労働を命じなかったことは不当労働行為にあたらないが、運送業務を配車しなかったことは不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社には、組合嫌悪の情があったことが認められる。
しかしながら、Y社の対応にはいずれも合理性が認められる。本件残業差別以降における会社の対応をも考え合わせれば、本件残業差別は、X2が本件36協定は無効であるとして残業拒否をしたこと、Y社がX2に対し時間外労働を命じた場合に、X2が当該命令に従わないことにより生じる会社の営業上のリスクを回避すること、及び後でX2から労基署に対して労基法違反である旨申告されることによるトラブルを回避すること、のために行われたものとみるのが相当である。
以上のことからして、Y社が、X2に対し、平成27年5月11日以降、時間外労働を命じなかったことは、組合員であるが故になされたものとは認められず、労組法7条1号の不当労働行為であると判断することはできない。

2 Y社には組合嫌悪の情が認められる。
もっとも、本件配車差別が開始された平成27年5月25日から第4回団体交渉が開催された同年6月19日までの会社の対応には合理性が認められる。この間の会社の対応は、X2が本件36協定の無効を主張する中で、X2に対して配車をするべく就業時間の繰上げ又は繰下げの提案をしつつ、平成27年5月22日のように会社の指示をX2が拒否しないかどうかを確認できなかったために、会社の被るリスクを避けるために配車を見合わせていたものとするのが相当である。X2に対して配車をしなかったことが不当労働行為によるものと認めることはできない
しかしながら、第4回団体交渉において、労組は、Y社に対して、X2に午前8時から午後5時までに収まるような配車をすることを要求し、それに対して、Y社は「努力する」と回答している。Xは、午前8時から午後5時までの運送業務を拒否したこともなかったそれにもかかわらず、平成28年3月31日までX2に対して配車をしなかったことはすでにみたとおりである
会社が、本件配車拒否を行った理由として述べる午前8時から午後5時までの運送業務はまれであったためにX2に対して配車できなかったことには合理性が認められない。
・・・以上のとおりであるから、Y社がX2に対し、平成27年6月23日から平成28年3月31日まで、運送業務を命じなかったことは、労組法7条1号の不当労働行為に該当する。

組合員と非組合員で業務量に差があり、それが給与面に影響する場合には、注意が必要です。

業務量の差について合理的な理由を説明できなければ不当労働行為に該当する可能性が出てきます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。