Monthly Archives: 10月 2016

本の紹介605 外資系エリートがすでに始めているヨガの習慣(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
外資系エリートがすでに始めているヨガの習慣

どれほどヨガが心の安定によいのかが書かれています。

ヨガにはあまり興味がありませんでしたが、ひとまず食わず嫌いをなくすために読んでみました。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ビジネスマンが心身を整えないで仕事をするのは、アスリートがトレーニングしないで試合に出るようなもの」(142頁)

彼はヨガの呼吸法を実践し、深い腹式呼吸や速いペースの呼吸などを使い分けている。この呼吸法で集中力を高め、持久力を強化し、脳も活性化させていた。ヒクソンは『一番難しいのは心を鍛えることだ。どんなに実力があっても、心が弱いと勝てない』とメンタルの重要性を説いている。」(144頁)

ヒクソン・グレーシーの「一番難しいのは心を鍛えることだ。どんなに実力があっても、心が弱いと勝てない」という言葉、まさにそのとおりですね。

メンタルも含めて実力と言われればそれまでですが。

頭だけではなく、心を鍛えなければ、勝負に勝つことはできません。

ではどうしたら心を鍛えることができるのか?

当然のことながら、唯一絶対の方法はありません。

この本ではヨガをすすめていますね。

私は、体を鍛えることが心を鍛えることにつながっているように感じます。

弱い弱い自分だからこそ、少しでも強くなりたいと願い、日々、格闘しています。

労働災害87 労時間労働を理由とする従業員の自殺について使用者の安全配慮義務違反が否定された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、従業員の自殺につき安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求が認められなかった事案を見てみましょう。

ヤマダ電機事件(前橋地裁高崎支部平成28年5月19日・労経速2285号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員として勤務していた亡Xが平成19年9月19日に自殺をしたことについて、同人の相続人である原告らが、亡Xの自殺はY社における長時間にわたる時間外労働や過度な業務の負担によりうつ病に罹患したためのものであると主張して、安全配慮義務違反(債務不履行)に基づく損害賠償として、原告1に対し8620万4734円、原告2及び原告3に対しそれぞれ1736万7455円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 ・・亡Xの業務上の負荷について、軽かったということはできず、一定の負荷が生じていたことは否定できない。
しかしながら、原告らが主張するような、亡Xが月100時間を超える時間外労働をしていたという事実が認められないのは前記のとおりであって、長時間労働と精神疾患の発症との明確な関連性はまだ十分には示されていないとの医学的知見に照らせば、亡Xの時間外労働時間が死亡直近の1か月でおおよそ94時間30分、死亡直近の1週間でおおよそ39時間55分に及んでいる点のみをもって、亡Xが極めて強い業務上の負荷を受けていたと直ちに評することはできない。 

2 亡Xの業務上の負荷については、フロアー長への昇格や短期間での労働時間の増加により、一定程度の心理的負荷が生じていたということは否定できないが、他方、開店準備作業に大幅な遅れが生じていたとは認められないこと、作業期間中の亡Xの具体的業務について、特段の負荷が生じる内容であるとは認められず、本件過誤についても強い心理的負担を生じるものとはいえないこと、Y社の支援・協力体制に不備があったとはいえない上、店舗内の人間関係についても特段問題はなかったことなどからすれば、亡Xについて、精神障害を発症させるほどの強い業務上の負荷が生じていたとはいえないというべきである。

3 ・・・以上の点を考慮すると、亡Xが9月15日の時点で重症うつ病エピソードを発症していたとの労災医員意見書は採用することはできず、その他、亡Xが上記精神障害を発症していたことを認めるに足る証拠はない。
そうすると、本件においては、亡Xが自殺をした動機や原因については結局のところ不明であるといわざるを得ないが、その交際関係など他に了解可能な動機がある可能性は否定できず、また、平成11年に警察庁が公表した自殺の動機に関する統計資料において、「不詳」とされているものが約7パーセント存在することも考慮すれば、亡Xが自殺した点のみをもって、何らかの精神障害を発症していたとみることもできない。

長時間労働等を理由として労災認定されているにもかかわらず、使用者が安全配慮義務違反を認めなかった裁判例です。

労働者側としては油断ならない判断です。

使用者側としては、労災認定がされていても訴訟では異なる事実認定がなされる可能性があることを理解し、先入観を持たずに主張立証をしなければなりません。

本の紹介604 この方法で、みんなお金持ちになった、人生の成功者となった(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
この方法で、みんなお金持ちになった、人生の成功者となった!―シュラー博士の7つのプログラミング

15年前の本です。

何かの本で紹介されていたので読んでみました。

王道の本です。

とてもわかりやすく書かれており、何をどうしたらいいのか多くの気付きを与えてくれます。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私は、人に目標を定めることの大切さを説くときに、よく、次のような公式を用いる。
『信念+集中+持続=成功』
目標の優先順位を決めるときには、この公式を念頭に置いておくとよい。」(66頁)

何事であれ、時間と労力を注ぐ優先順位を決めるようにしているんです。他の人間が自分と同等以上に得意としていることには、かかわらないようにしています。つまり自分だけができることをやっているんですよ」(67頁)

「信念+集中+持続」という公式の中で最も難しいのは、「持続」だと思います。

続けることというのは本当に大変です。

フィットネス会員になってはいるものの、通ったのは最初の1か月だけ・・・という方、いませんか?

続けることができる人というのは、決して意志が強い人というわけではありません。

続ける方法を知っている人なのです。

意志の強さや性格の話をした瞬間、もはやどうしようもない空気が漂ってしまいますが、決してそうではありません。

私は、つまるところ、続ける方法=成功する方法なのだと確信しています。

今も昔もこれからも「継続は力なり」です。

セクハラ・パワハラ20(さいたま市(環境局職員)事件)

おはようございます。

今日は、教育係のパワハラでうつ病発症・自殺に対する損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

さいたま市(環境局職員)事件(さいたま地裁平成27年11月18日・労判1138号30頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に任用され環境局施設部Aセンターに勤務していた亡Xが、Xの指導係であったCから暴言及び暴力行為等のパワーハラスメントを受けたため、精神疾患を発症して自殺したなどとして、Xの両親が、Y社に対し、債務不履行又は国家賠償法1条1項による損害賠償請求権に基づき、それぞれ4047万5602円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、原告らに対し、それぞれ659万9333円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Y社は、平成23年4月25日、Dにおいて、Xから、Cによる暴力を受けていて、あざができており、その写真を撮ってあること、同月21日、Cと業務のことでぶつかり、言葉の暴力等のパワハラを受けたことなどの相談を受けたにもかかわらず、C又はXを配置転換したり、CをXの教育係から外すなどの措置を講じ、Xが、Cの言動によって心理的負荷等を過度に蓄積させ、本件既往症であるうつ病を増悪させることがないよう配慮すべき義務を怠った

2 Xには、本件既往症があり、Xが自殺する前年である平成22年の6月から8月にかけて90日間も休職したことがあったことからすれば、Xが、本件既往症を増悪させ、自殺するに至ったことについては、Xの本件既往症が重大な要因となっていることは明らかである
また、原告らは、Xの両親であり、Xと同居していたのであるから、Xに本件既往症があり、上記のとおり長期間にわたって休職をしたことを認識していた上、Cから、暴力を受けあざができるなどのパワハラを受けていたことなどを聞かされていたと認められること、遅くともXが借家から退去して実家に戻った平成23年11月5日以降は、Xの精神状況が悪化していることを認識し、又は認識し得たはずであること、Xは、原告ら宅において自殺したところ、その際、「もう嫌だ。」と叫んで、自宅の2階に駆け上がるなど以上な精神状態にあったことがうかがわれることなどに照らせば、原告らは、Xと身分上又は生活上一体関係にある者として、Xの病状を正確に把握した上で、本件センターのEやF医師等と連携して、Xを休職させるなどして、適切な医療を受けさせるよう働き掛けをしたり、Xの自殺を防ぐために必要な措置を採るべきであったということができる
以上によれば、過失相殺又は過失相殺の規定(民法722条2項)の類推適用により、X及び原告らに生じた損害の8割を減ずるのが相当である。

大幅に素因減額されています。

上記判例のポイント2は労働者側としては十分に注意しなければならない視点です。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介603 営業の魔法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、本の紹介です。
営業の魔法―この魔法を手にした者は必ず成功する

営業の心構えがまとめられている本です。

営業職の方はもちろんですが、それ以外のすべての対人サービス業に従事している人に意味のある本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

営業に必要な心構えは『先義後利』。利益は後で、まず正しい生き方が先ということです。論語にもある、『利を見ては義を思え』という道徳です。これが営業の基本です。自分の利(イエスにはやる心)をグッと抑え、しっかり、誰を幸せにしたいのかを思い続けてください」(158頁)

営業に限らず、すべての対人関係において妥当する考え方です。

常に相手に喜んでもらう方法を考えることが大切です。

「利」はあとからついてくるものです。

これを逆の立場から見るとこうなります。

相手の方に何かをしてもらった場合には、決してそのままにしないことです。

ちゃんともらったものは返さなければなりません。

これができないと長いお付き合いはできません。

「先義後利」という言葉はそれを端的に表しているのだと思います。

賃金117(社会福祉法人全国重症心身障害児(者)を守る会事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、育児短時間勤務制度利用を理由とする昇給抑制無効確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。

社会福祉法人全国重症心身障害児(者)を守る会事件(東京地裁平成27年10月2日・労判1138号57頁)

【事案の概要】

本件は、Y社で稼働するXらが、Y社において育児短時間勤務制度を利用したことを理由として本来昇給すべき程度の昇給が行われなかったことから、各自、Y社に対し、①このような昇給抑制は法令及び就業規則に違反して無効であるとして、昇給抑制がなければ適用されている号給の労働契約上の地位を有することの確認、②労働契約に基づく賃金請求として昇給抑制がなければ支給されるべきであった給与と現に支給された給与の差額(X1)につき4万6149円、X2につき12万0799円、X3につき14万6623円)+遅延損害金、③このような昇給抑制は不法行為に当たりXらは精神的物質的損害を受けたとして、不法行為に基づく慰謝料等の損害賠償金(Xら各自50万円)+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

 本件訴えのうちXらがY社において平成26年4月1日時点で各主張に係る号俸の労働契約上の権利を有する地位にあることを確認することを求める部分をいずれも却下する。

 Y社は、X1に対し、19万6149円+遅延損害金を支払え。

 Y社は、X2に対し、27万0799円+遅延損害金を支払え。

 Y社は、X3に対し、24万6315円+遅延損害金を支払え。

 Xらのその余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 育児・介護休業法は、育児休業及び介護休業に関する制度並びに子の看護休暇及び介護休暇に関する制度等を設けることにより、子の養育又は家族の介護を行う労働者の雇用の継続等を図り、その職業生活と家庭生活の両立に寄与することを通じて、労働者の福祉の増進を図ることなどの目的(同法1条)の下、事業主は、法定の除外要件がない限り、その3歳に満たない子を養育する労働者であって育児休業をしていないものに関して、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の申出に基づき所定労働時間を短縮することにより当該労働者が就業しつつ当該子を養育することを容易にするための措置(以下「所定労働時間の短縮措置」という。)を講じなければならない(同条23条)とした上で、労働者が所定労働時間の短縮措置の申出をし、又は短縮措置が講じられたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない(同法23条の2)と定めるものである。このような育児・介護休業法の規定の文言や趣旨等に鑑みると、同法23条の2の規定は、前記の目的及び基本理念を実現するためにこれに反する事業主による措置を禁止する強行規定として設けられたものと解するのが相当であり、労働者につき、所定労働時間の短縮措置の申出をし、又は短縮措置が講じられたことを理由として解雇その他不利益な取扱いをすることは、その不利益な取扱いをすることが同条に違反しないと認めるに足りる合理的な特段の事情が存しない限り、同条に違反するものとして違法であり、無効であるというべきである。 
これを本件について見るに、・・・かえって、本件昇給抑制については、どのような良好な勤務成績であった者に対しても一律に8分の6を乗じた号俸を適用するものであるところ、そのような一律的な措置を執ることの合理性に乏しいものといわざるを得ないのであり、本件昇給抑制は、労働者に本件制度の利用を躊躇させ、ひいては、育児・介護休業法の趣旨を実質的に失わせるおそれのある重大な同条違反の措置たる実質を持つものであるというべきであるから、本件昇給抑制は、同条23条の2に違反する不利益な取扱いに該当するというべきである。

2 育児・介護休業法23条の2が、事業主において解雇,降格、減給などの作為による不利益取扱いをする場合に、禁止規定としてこれらの事業主の行為を無効とする効果を持つのは当然であるが、本件昇給抑制のように、本来与えられるべき利益を与えないという不作為の形で不利益取扱いをする場合に、そのような不作為が違法な権利侵害行為として不法行為を構成することは格別、更に進んで本来与えられるべき利益を実現するのに必要な請求権を与え、あるいは法律関係を新たに形成ないし擬制する効力までをも持つものとは、その文言に照らし解することができない。また、あるべき号俸への昇給の決定があったとみなしてY社の「決定」の行為を擬制すべき根拠もないことも明らかである。そうすると、Xらが確認を求めるX1につき91号、X2につき73号、X3につき89号という法律関係は存在していないといわざるを得ない。

3 不法行為により財産的な利益を侵害されたことに基づく損害賠償の請求にあっては、通常は、財産的損害が填補され回復することにより精神的苦痛も慰謝され回復するものというべきであるところである。しかし、本件昇給抑制は、それがされた年度の号俸が抑制されるだけでなく、翌年度以降も抑制された号俸を前提に昇給するものであるから、Y社において本件昇給抑制を受けたXらの号俸数を本件昇給抑制がなければXらが受けるべきであったあるべき号俸数に是正する措置が行われない限り、給料(給与規程5条)、地域手当(同20条)、期末手当(同31条)、勤勉手当(同32条)等といった賃金額についての不利益が退職するまで継続し続けるだけでなく、退職時には、退職金の金額の算定方法のいかんによっては、退職金の金額にも不利益が及ぶ可能性があること、毎年6月及び12月に支給される期末手当、勤勉手当はその都度会長の定める支給率が決定されなければ、その数額を確定することができず(同31条2項,32条2項)、本件昇給抑制に起因する財産的損害についてあらかじめ填補を受け回復することができないことなどに鑑みると、現時点において請求可能な損害額の填補を受けたとしても、本件昇給抑制により被った精神的苦痛が慰謝され回復されるものではないから、前記認定の財産的損害とは別に、慰謝料の支払が認められるべきものといえ、その金額は、Xら各自について10万円と認めるのが相当である。

慰謝料はたったの10万円です。安っ。

注意が必要なのは、上記判例のポイント2です。

このような考え方は、一般の方からすると違和感を感じるところであり、勘違いしがちな点です。

参考にしてください。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介602 億万長者の感謝力!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
億万長者の感謝力!

感謝することの大切さを説いている本です。

タイトルはちょっとあれですけどね・・・。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・なぜ彼らはこのような活躍ができるのか。それは、私がスタッフたちに、仕事の『やり方』よりも、心の『あり方』を重点的に教えてきたからです。感謝力を身につけるには、人としての考え方や価値観といった『あり方』が大事だと考えています。」(154頁)

「やり方」よりも「あり方」の問題であるというのは全くその通りだと思います。

どれだけ仕事のやり方を教えても、仕事に対する姿勢ができていないと、決してうまくいきません。

やり方なんてやってれば身につきます。

そもそもやり方なんて手取り足取り教えてもらうものではありません。

甘えん坊さんにも程があります。

受け身ではいつまでたっても力はつきません。

自分で見て、真似て、改良していく。そういう積極性があってはじめて上達していくのだと確信しています。

これが「あり方」なのだと思います。

セクハラ・パワハラ19(サントリーホールディングス事件)

おはようございます。

今日は、パワハラを理由とする上司、会社への損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

サントリーホールディングス事件(東京高裁平成28年4月27日・労経速2284号7頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であり、グループ再編前のサントリー株式会社の従業員であったXが、サントリー在籍中、上司であったCからパワハラを受けたことにより鬱病の診断を受けて休業を余儀なくされるなどし、また、Y社に移籍後、Y社のコンプライアンス室長であったDがCの上記パワーハラスメント行為に対して適切な対応を取らなかったことによりXの精神的苦痛を拡大させたとして、C及びDには不法行為が成立すると主張するとともに、サントリーにはXに対する良好な作業環境を形成等すべき職場環境保持義務違反を理由とした債務不履行及びCの使用者であることなどを理由とした不法行為が成立するところ、サントリーのグループ再編により設立されたY社はサントリーのXに対する上記債務を承継したなどと主張して、Y社らに対し、損害賠償合計2424万6488円+遅延損害金の連帯支払を求める事案である。

原判決は、Cの不法行為及びY社の使用者責任を肯定し、C及びY社に対し297万円+遅延損害金の連帯支払を求める限度でXの請求を認容したところ、これを不服とするX並びにY社及びCがそれぞれ控訴した。

【裁判所の判断】

Y社及びCは、Xに対し、連帯して165万円+遅延損害金を支払え。

その余の請求は棄却

【判例のポイント】

1 Xは、鬱病を発症して1年以上の休業を余儀なくされ、復職後も通院を継続し、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に基づき障害等級2級の認定を受けるなど、精神的不調が続いている反面、Cによる不法行為は、Xに対し、「新入社員以下だ。もう任せられない。」、「何で分からない。おまえは馬鹿。」と発言し、あるいはXが本件診断書を提出して休職を願い出た際、3箇月の休みを取ると異動の話を白紙に戻さざるを得ない旨を告げるなどしたというもので、部下に対する業務に関する叱責の行き過ぎや、精神的不調を訴える部下への対応が不適切であったというものにとどまり、悪質性が高いとはいえずXが鬱病を発症し、精神的不調が続いていることについては、Xの素因が寄与している面が大きいこと、Xが平成20年8月に復職した後、時間外労働や所定勤務も行うなど、勤務状況は順調であり、精神状態が一定程度回復した状況が窺われることなどを考慮すると、Xの精神的損害に対する慰謝料は150万円と認めるのが相当である。

2 慰謝料は、Y社らが主張するXの素因をも考慮して認定したものであるから、さらにXの素因により慰謝料を減額すべきではない

3 Y社らは、Xが受給した障害年金及び労災保険給付金との損益相殺を主張するが、これらは精神上の損害の填補を目的とするものではないと認められるから、当該受給額を上記慰謝料から控除することはできないというべきである。

一審よりも金額が下がりました。

もっとも、会社としては、慰謝料の金額よりもこのように裁判例として社名が出てしまうことによる損失のほうが大きいです。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介601 ユダヤ人億万長者に学ぶ「不屈」の成功法則(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
ユダヤ人億万長者に学ぶ「不屈」の成功法則

「不屈」という言葉からもわかるとおり、終始、あきらめないこと、屈しないことの大切さを説いています。

「不屈の執念」がいかに大切であるかがこの本を読むとわかります。

とても参考になります。 おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

商品を売りたいなら、顧客が電話に出るまで20回はかける必要がある。その際、自社の商品を買うべき理由を準備しておくべきだ。私の経験では、商品について質問すると、9割の確率で『調べて折り返し連絡します』という答えが返ってくる。自社の商品に関する質問に答える準備ができていない営業マンから買う理由がどこにあるだろうか。自分が提供している商品について情熱をもっていないなら、その職業に就くべきではない。それくらい献身的な姿勢がなければ、セールスでの成功はおぼつかない。」(127頁)

みなさんはいかがですか?

同じ商品を買うのであれば、自分が尊敬できる人から買いたいと思います。

その人が仕事に対してどのような思いをもっているかというのはとても重要です。

仕事に対して情熱を持っている人から私は買いたいし、そういう人とお付き合いをしたいと思います。

たいした準備をせずに「時間をつくってほしい」と言われるのが一番しんどいです。

不当労働行為156(東急バス(残業割当・第2・審査開始)事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、バス乗務員に対し、他の従業員と差別して残業扱いとなる乗務(増務)を割り当てなかったことが不当労働行為にあたるとされた事案を見てみましょう。

東急バス(残業割当・第2・審査開始)事件(中労委平成28年3月16日・労判1137号92頁)

【事案の概要】

本件は、バス乗務員Xに対し、他の従業員と差別して残業扱いとなる乗務(増務)を割り当てなかったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

なお、初審(東京都労委平成20年9月2日命令)は、申立てを一部認容。

Y社が再審査を申し立て、中労委(平成21年12月2日命令)は、初審命令を取り消し、Xの申立てを棄却する命令を発した。

Xは、申立てを棄却する命令の取消しを求めて行政訴訟を提起したところ、東京地裁(平成24年1月27日判決)は、中労委命令を取り消し、同判決が確定(東京高裁平成24年10月3日判決(控訴棄却)、最高裁平成26年12月16日決定(上告不受理))したことから、中央委は本件審査を再開した。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 不当労働行為救済申立事件に係る命令の取消訴訟において原命令を取り消す判決が確定し、労働委員会が当該事件の審査を再開して命令を出す際は、上記判決の拘束力が及び、当然ながら原命令に関する判断に抵触する認定判断をすることはできない(行政事件訴訟法第33条第1項・第2項、労働委員会規則第48条・第56条第1項)。
したがって、本件審査再開事件において、Xに係る差別的な増務割当てが不当労働行為に当たるとした東京地裁判決の判断は最終的なものであるから、以後、当事者がこの判断に抵触する認定判断を当委員会に求めることは許されないというべきである。

2 また、本件Xの救済申立てについては、労働委員会における審査及び取消訴訟における審理の一連の手続を通じて、本件当事者に十分な主張立証の機会が与えられ、主張立証が尽くされたうえで判決が確定している以上、Y社が、その後の手続において、上記取消判決の認定判断を蒸し返すことは、信義則に反するというべきである。

そういうことです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。