Monthly Archives: 1月 2018

賃金141 労使慣行に基づく退職一時金の請求は認められるか?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、退職金規定に基づく未払退職金等支払請求に関する裁判例を見てみましょう。

栗本産業事件(大阪地裁平成29年9月15日・労判ジャーナル69号32頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社に対し、退職金規定等に基づく退職金550万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、新規程第6条に基づき、Y社に対する「退職特別功労金」の具体的な支払請求権を有することを前提に、退職金の支払を請求しているが、新規程第6条は、「功労金を支給する場合がある」、「金額についてはその都度定める」と規程していることから明らかなとおり、同条所定の「退職特別功労金」を個々の退職者に対して支給するか否か、支給する場合の具体的な金額については、会社の裁量判断に委ねられているものというべきであり、同条の規定のみに基づいて、XがY社に対して具体的に一定額の「退職特別功労金」の支払請求権を取得すると解することはできない。

2 Xは、Y社において、退職者に対し、企業年金以外に一定額の「会社支給分」の退職一時金を支給する旨の労使慣行が成立していた旨主張するが、約3年8か月の間に5名の退職者に対して退職金が支給されたというだけで、その支給が長期間反復継続して行われていたと評価し得るか疑問がある上、その支給額は一定ではなく、支給額の具体的な算定方法も明らかではないことに照らせば、Y社において、退職者に対し、企業年金以外に一定額の「会社支給分」の退職一時金を支給する旨の労使慣行が成立していたとは認められない

裁判所が労使慣行の成立を認めてくれるのはよほどの場合に限られます。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介753 「言葉」が人生を変えるしくみ その最終結論(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
「言葉」が人生を変えるしくみ その最終結論。(スピリチュアルの教科書シリーズ)

タイトルの「言葉が人生を変える」というのは真実です。

そのくらい言葉には力があります。

どのような言葉に出会い、どのような言葉を信じているかで人生が決まるとさえ思います。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私たちにとって大切なのは、外側にいいものを探し続けることではなく、自分の住む世界が最高になることです。幸せかどうかは常に自分で選択できます。『すべては自分次第』とは、罪悪感や被害者意識を持ちましょうということではもちろんなく、いつでもこの瞬間から、自分次第で幸せになれるんだという『自由』を持つことを意味するのです。」(217頁)

「すべては自分次第」という表現は、換言すれば、「すべては解釈次第」ということです。

いろいろな本に書かれていることですが、物事それ自体には意味はありません。

人が物事に意味を付けているだけです。

だから、何が起きても「ラッキー」と喜ぶこともできれば、その逆もできるわけです。

まさに「幸せかどうかは常に自分で選択できます」。

幸せかどうかは解釈の問題だからです。

環境や条件の問題ではなく、自分の考え方の問題なのです。

セクハラ・パワハラ34 違法な指導と慰謝料の金額(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、元警察官らの人格権等侵害に基づく損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

熊本県・熊本県警察事件(福岡高裁平成29年9月15日・労判ジャーナル69号34頁)

【事案の概要】

本件は、熊本県警察に警察官として採用され、熊本県警察学校に入校した元警察官ら(A,B、C)が、熊本県に対し、警察学校の教官の指導に違法があり人格権等を侵害されるとともに、違法な退職勧奨により辞職を余儀なくされたとして、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ損害賠償金約569万円(逸失利益・慰謝料等)の支払を求めたところ、原審が、A及びBの各請求をそれぞれ11万円の限度で、Cの請求を22万円の限度で認容したため、元警察官ら及び熊本県がいずれも原判決を不服として控訴した事案である。

【裁判所の判断】

原判決一部変更
→A及びBの認容額を22万円に変更

【判例のポイント】

1 Hは、Aに対し、警察学校に在校しづらくなることを示しながら、監察課に連絡した教官によるAに対する暴行はなかったとしてこれを取り下げるように父親に働きかけることを要求したことが認められ、Aに対する不法行為となり、また、Fは、Bに教室の最後列の後ろに机を持って移動させているところ、このことが他の学生から孤立させられ、他の学生に対するいわば見せしめとされたような屈辱感をBに与えるものであるから、指導として違法といわざるを得ず、さらに、キャビネットの施錠忘れは警備当番であったLによるものであったが、同人のほかBを含む警備当番3名の連帯責任とされたものであるところ、Cのみに重量が少なくとも5キログラムある上記盾及び2023グラムのダンベルを持って走ることが命じられたこと、その時間も合計約1時間に達することを考慮すると、指導として合理性を欠くものといわざるを得ず、違法であること等から、Aらの請求はいずれも22万円等の支払を求める限度で理由がある。

これが日本の慰謝料の相場です・・・。

弁護士費用が費用倒れになるような金額しか認めてくれません。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。

本の紹介752 己を、奮い立たせる言葉。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
己を、奮い立たせる言葉。 (NewsPicks Book)

みなさんも己を奮い立たせる言葉、ありますよね。

なにかと話題の著者ですが、著者が出会ってきた言葉たちの中からいくつかを紹介し、解説しています。

特に奮い立たせる言葉は見つかりませんでしたが、こればかりは人それぞれですのでね。

さて、この本の中で「いいね!」と思ったのはこちら。

壁は『高い』とわかれば超えられる。
難易度の高い課題に直面した際、よく『壁が高すぎて超えられない』なんて表現を使う。でももし、仮に壁の高さや厚さが認識できているのであれば、それはかなり突破に近い。
・・・課題の正体がわかれば、解決は近い。故に、課題が何かを正しく認識するところから、課題解決の仕事は始まる。」(98~99頁)

たしかに。

多くの場合、「できない」ではなく「やりたくない」のです。

でも、やりたくないとは言えないので、なんだかんだうまいこと言って「できない」としたいわけですよ。

特に仕事で一見すると難しい課題に直面したときに、すぐにできない理由探しをする人とどうやったら克服できるかを考える人に分かれるわけです。

もうこれは能力うんぬんの話ではなく、くせ・習慣の問題です。

一度身につけてしまうと、もう体が言うことを聞かなくなるのです。

手ごわいバッターとの対決のときに、敬遠することを覚えるとくせになるのです。

ホームランを打たれるかもしれませんが、敬遠するくせがつくよりましですよ。

解雇252 パソコンの故意による破損と懲戒解雇の相当性判断(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、パソコン破損等に基づく懲戒解雇等無効地位確認請求に関する裁判例を見てみましょう。

社会福祉法人朝日新聞厚生文化事業団事件(東京高裁平成29年9月13日・労判ジャーナル69号38頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXがY社から本件懲戒処分を受け、平成28年3月2日付けで退職したことについて、本件懲戒処分は無効であると主張し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、解雇の日の翌日以降の賃金及び賞与の支払いを求めたところ、原判決は、平成28年3月分給与の支払請求の一部を棄却したほかは、全部認容したことから、Y社が控訴した事案である。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 本件行為は、故意に本件パソコンの液晶画面を破損したものであるから、本件就業規則72条1項2号、8号、11号及び13号に該当するものであり、また、XはAに対し、Aが本件行為の際に本件事務所にいなかったことにすること等を提案し、Aの了承の下で、Y社による事情聴取や本件顛末書において、上記提案のとおり虚偽の説明を行っていたのであるから、かかる虚偽説明は、本件就業規則72条1項6号に該当するが、本件行為によって、本件パソコンのデータを破損するまでには至っておらず、Y社の経済的な損害は大きなものとまではいえず、金銭的な賠償によって償うことが可能なものであり、また、X及びAによる上記虚偽説明は、本件行為以外の他の非違行為を隠蔽するような性質のものではなく、Xが本件懲戒処分より前に懲戒処分を受けたことがないことを考慮すると、Xが本件就業規則72条に基づく何らかの懲戒処分を受けることは免れないとしても、懲戒解雇という労働契約上の地位を失う最も重大な懲戒処分は重きに失するものであり、社会通念上相当であるということはできないから、本件懲戒処分は、Y社がその権利を濫用したものとして、労働契約法15条により無効である。

パソコンの液晶画面を故意に破損させただけでは懲戒解雇は重すぎるというわけです。

結果、パソコンのデータまで破損されたとなると結論は変わり得ると思います。

破損されたデータの量、内容、復元可能性等が考慮されるとは思いますが。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介751 はしゃぎながら夢をかなえる世界一簡単な法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
はしゃぎながら夢をかなえる世界一簡単な法

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

どうしたら楽しく幸せな人生を送れるか、ということを説いています。

タイトルはあれですが、一つの参考意見としては理解できます。

・・・だから全員を大事にしなくていいんです。それより一緒にいて気持ちが盛り上がる人、夢やビジョンを共有できる人を大事にしたほうがいいと思います。同じ立場に立てない人は潔く切ってしまう。僕はそちらに賛同します。」(222頁)

私もこれと同じ考え方です。

人生は本当に短いです。

どうでもいい会議や会合、一緒にいてプラスにならない人とともに時間を過ごすほど人生は長くありません。

最も大切なのは時間です。

どうでもいいことにどれほど時間を無駄にしていることか。

というわけで年を重ねる度に、どんどんどんどんこのような考え方が強くなっていきます。

自分が大切だと思う人とだけ、大切な時間を共有したいと思います。

労働時間46 WEB学習の労働時間性が否定された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、WEB学習等の労働時間性が否定された裁判例を見てみましょう。

西日本電信電話ほか事件(大阪高裁平成22年11月19日・労経速2327号13頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用され、平成14年5月からはA社に出向し、平成18年7月からはB社に出向しているXが、Y社に対し、①Y社の全社員販売の取組としてY社が通常の勤務時間外にY社のグループ企業の商品を友人知人に販売したことに要した時間、②通常の勤務時間外にWEB学習に従事した時間が、いずれも、Xが従事した労働時間に当たるとして、平成17年5月から平成19年4月までの間に、Xが上記①②に従事したとする時間及び早朝出勤をして業務に従事したとする時間につき、①時間外手当及び休日手当として382万2320円+遅延損害金、②時間外手当及び休日手当に対する付加金として382万2320円+遅延損害金の支払いを求めた事案である。

原判決は、XのY社に対する請求のうち、早朝出勤は業務上の指示によるものではなく、むしろXは健康上の理由から時間外勤務を禁止されていたことから労働時間とは認められないとしたが、Xは、上記①②に従事したもので、この時間は労働時間に当たると判断し、上記①につき214万3049円+遅延損害金、上記②につき60万円+遅延損害金の支払いを求める限度で認容した。

【裁判所の判断】

原判決中Y社敗訴部分を取り消す。

上記取消部分に係るXの請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 WEB学習は、パソコンを操作してその作業をすること自体が、Y社が利潤を得るための業務ではなく、むしろ、Y社が、各従業員個人個人のスキルアップのための材料や機会を提供し、各従業員がその自主的な意思によって作業をすることによってスキルアップを図るものであるといえる。そのため、単にアクセスする回数を増やしたり時間をかけることに意味があるのではなく、学習効果を上げるところに意味があるのであるから、その成果を測るためには、技能試験等を行うしかないが、Y社において、そのような試験が行われているわけでもない。使用者からしても、各従業員が意欲をもって、仕事に取り組み、仕事に必要な知識を身につけてくれることは重要であるから、WEB学習を奨励し、目標とすることを求めるものの、その効果は各人の能力や意欲によって左右されるものであるから、WEB学習の量のみを捉えて、従業員の評価をすることに意味はないのであって、WEB学習の推奨は、まさに従業員各人に対し自己研鑽するためのツールを提供して推奨しているにすぎず、これを業務の指示とみることもできないというべきである。
したがって、WEB学習の上記のような性質・内容によれば、これに従事した時間を、労務の提供とみることはできないというべきであり、これを業務の一環として実施するよう業務上の指示がなされていたとも評価できないことから、XがWEB学習に従事した時間があったとしても、それをY社の指揮命令下においてなされた労働時間と認めることができない。

研修会や勉強会の労働時間性が問題となることがありますが、それも強制なのか任意なのかがポイントとなってきます。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。

本の紹介750 天才の証明(企業法務・顧問弁護士@静岡)

あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願い申し上げます。

本日より事務所の営業を開始いたします。

今日は、本の紹介です。
天才の証明

自分が戦って勝てる場所で戦おう、という話です。

東進ハイスクールの林先生も同様のお話をされていますね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

どこかの国に、『優れるな、異なれ』とのことわざがあるそうです。クオリティーの優劣で勝負したら、優秀なものや人は存在するし、たとえ最高のクオリティーになれたとしてもいつかは抜かれます。でも、オリジナリティーはどこまでいっても、唯一無二のもの。そんなふうに、私はこのことわざを解釈しています。」(64頁)

この本全体を通じて、自分の勝てる場所で人と違うことをやろう、という考え方が貫かれています。

このこと自体は結構言われていることなので頭では理解している人も多いと思います。

でも、実際には行動には移さない。

どこまで行っても、やる人はやるし、やらない人はやらないのです。

自分が勝てる場所がわからない。

人と違うことのやり方がわからない。

なーんてことを言いながら、結局、何もやらないのです。

だから結果も変わらない。

こんなにもやりたいことが実現できる時代はこれまでなかったはずです。

やるか、やらないか。

動くか、動かないか。

今年も来年も再来年も100年後も、成功するか否かは、結局、この違いです。