Daily Archives: 2018年7月20日

解雇273 解雇事由の調査不足と解雇の相当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、試用期間満了による解雇に関する裁判例を見てみましょう。

社会福祉法人佳徳会事件(熊本地裁平成30年2月20日・労判ジャーナル74号50頁)

【事案の概要】

本件は、認可保育園「かえでの森こども園」を設置運営するY社との間で雇用されていた元保育士Xが、Y社がした試用期間満了による解雇、その後の懲戒解雇及び普通解雇並びに期間満了による雇止めはいずれも無効であると主張して、Y社に対し、労働契約上の地位の確認を求め、試用期間満了による解雇日の翌日である平成28年7月1日以降分の賃金支払請求権に基づき、同年8月から本判決確定の日までの1か月あたりの賃金19万6400円等の支払いを求めるとともに、XはY社からXを退職に追い込むことを目的とした嫌がらせ等を受けた等、本件違法な解雇により精神的苦痛を生じたと主張して不法行為に基づく損害賠償として130万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

【判例のポイント】

1 Y社は、Xの合志市役所への相談、合志市役所へのメール送信、熊本県への訪問について、Y社に不利益となる行為を取り続けており、Y社の企業秩序を破壊する行為を継続し、改善の余地はなく、懲戒解雇として相当である旨主張をしているが、合志市役所への相談が企業秩序を破壊する行為とはいえず、熊本県への訪問についても当該事実を認定できず、そして、合志市役所へのメール送信も、秘密の漏洩やY社の信用毀損等は認められないこと、職場の混乱についても、Y社の業務量が増えたというもので、企業秩序の破壊の程度が重大とはいえないこと、Xに企業秩序の維持の破壊の意図までは認められず、調査不足という過失により生じた結果であること、当該行為がXの解雇後の行為で、事前に職場で相談できない状況であったことを踏まえると、Y社が、他の懲戒の履行をせずに、直ちに懲戒解雇とすることは合理性を欠き、社会通念上相当とはいえないから、当該解雇は解雇権の濫用として無効である。

2 普通解雇についても、Xの各就業規則違反について、Y社が改善、指導を行った事実は認められず、勤務成績が不良で保育士としての就業に適さないとまでは認められないから、解雇権の濫用として無効である。

解雇事由の調査不足の結果、解雇事由が認定されないという流れにならないようにしなければなりません。

解雇を検討する際は、冷静にエビデンスの収集・評価をすることが必要です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。