Monthly Archives: 7月 2018

本の紹介815 グイグイ力(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
グイグイ力

内容自体は、いろいろなことが書きたいように書かれている自由な感じの本です(笑)

内容はとてもおもしろいです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

父親の死で、それまで考えもしなかったことを考えました。何か、死って、終わりってこういうもんなんだ、って。何かを収集してても、お金を貯めてても天国に持っていけないし、こだわってやってきた仕事もTHE ENDになるわけだから、そんなに人生をシリアスに考えなくてもいいのかな、って思いました。どんなに有名になったって、どんなに成功したって死んじゃうんだから。」(109頁)

人生は本当にあっという間に終わってしまいます。

時の流れの速さを考えるとそう感じざるを得ません。

ただでさえそれほど多くの時間が残されていないのに、無駄で退屈で意味のないことに時間を費やすことほど苦痛なことはありません。

嫌なものは嫌だし、やりたくないことはやりたくないのです。

生きたいように生きたい。ただそれだけです。

同一労働同一賃金6 正社員とパート社員の通勤手当の相違に関する同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、パート社員の通勤手当を正社員の半額とすることが労契法20条違反とされた裁判例を見てみましょう。

九水運輸商事事件(福岡地裁小倉支部平成30年2月1日・労経速2343号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社において期間の定めのある労働契約に基づき荷役作業に従事するXらが、各自、Y社に対し、①その労働条件において通勤手当が期間の定めのない労働者に対するものの半額とされていることは労働契約法20条の禁止する不合理な差別に当たる等と主張して、労働契約又は不法行為による損害賠償請求権に基づき、平成25年1月から平成26年12月までの通勤手当の差額合計12万円+遅延損害金並びに平成27年1月から毎月末日限り通勤手当の差額5000円の支払を求めるとともに、当該不法行為による損害賠償請求権に基づき慰謝料5万円+遅延損害金の支払を求め、②Xらに対する皆勤手当を廃止する内容の就業規則の変更は無効であると主張して、労働契約に基づき、平成26年11月と同年12月における未払皆勤手当合計1万円+遅延損害金並びに平成27年1月から毎月末日限り皆勤手当5000円の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、28万円及びうち10万5000円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Y社が通勤手当を設けた理由は、Y社代表者の供述によれば、少しでも手当が多い方が求人に有利であるというものであり、それ自体、本件相違の合理性を肯定できる理由であるとは考え難い。また、パート社員と正社員のいずれの職務内容も、北九州市中央卸売市場での作業を中核とするものであるから、パート社員か正社員かを問わず、仕事場への通勤を要し、かつ、その通勤形態としても、多くの者が自家用車で通勤しているという点で、両者で相違はなく、パート社員の方が、正社員に比べて通勤時間が通勤経路が短いといった事情もうかがわれないのであって、通勤手当の金額を定めるに当たり、正社員の通勤経路などを調査した上でこれが定められたわけでもない
そうすると、本件相違に合理的な理由は見出せず、通勤手当がY社に勤務する労働者の通勤のために要した交通費等を填補するものであることなどの性質等にかんがみれば、上記で認定した職務内容の差異等を踏まえても、本件相違は不合理なものといわざるを得ない。
したがって、本件相違は労働契約法20条に違反するものというべきである。

現時点では、もはや通勤手当の差異については労契法20条違反で確定ですので、各社速やかに対応をすべきです。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介814 一流の人はなぜそこまで、靴にこだわるのか?(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
一流の人はなぜそこまで、靴にこだわるのか? (Business Life 16)

前回に引き続き、靴の重要性に関する本です。

靴に関する解説もついており、参考になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

第一印象をよくしようとして、高価なスーツや時計、カバンで身を固めていても、足元への配慮が欠けていては一流とは言えません。つま先が汚れ、かかとがすり減った靴を履いている人を見て、『この人は仕事ができそうだ』と思うでしょうか?むしろ『だらしない人』『細かいところに気が付かない人』と感じる場合が多いように思います。」(22頁)

「画竜点睛を欠く」とはまさにこういうことを言うのでしょう。

何度も言いますが神は細部に宿るのです。

おおまかにはきれいでも細かいところに配慮が行き届いていないと、それだけで「この人はそういう仕事をするんだろうな・・・」と勘繰ってしまいます。

毎朝の靴磨きを歯磨きと同じように習慣化できればたいしたことではありません。

やるかやらないか、それだけの話です。

賃金157 私生活上の非違行為と退職金減額の可否・程度(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、ドライバーではない労働者の業務時間外の酒気帯び運転と退職金の減額に関する裁判例を見てみましょう。

日本通運事件(東京地裁平成29年10月23日・労経速2340号3頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社を平成28年4月20日に退職したとして、Y社に対し、退職金248万9015円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、121万4467円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Y社が、企業としての社会的責任を果たし、名誉、信用ないし社会的評価を維持するため、飲酒運転について厳罰をもって臨み、原則として解雇事由としていることは、必要的かつ合目的的であるといえること、本件酒気帯び運転は、その態様が悪質であり、その行為に至る経緯に酌量の余地はなく、結果も重大であること、Xは、酒気帯び運転により、現行犯逮捕され、実名で新聞報道がされるなどしており、その社会的影響も軽視することはできないことが認められるものの、他方、本件懲戒解雇処分における解雇事由は、私生活上の非行に係るものであること、Xは、本件酒気帯び運転まで、Y社において、26年以上の長期にわたり、懲戒処分等を受けることなく、真面目に勤務してきたこと、本件酒気帯び運転や本件事故について素直に認め、本件店舗に直接謝罪をするとともに、自ら加入していた自動車保険を利用して被害弁償をして示談し、宥恕されていること、Y社に対しても謝罪し、自ら退職願を提出していること、XがY社の従業員であったことまでは報道されておらず、Y社の名誉、信用ないし社会的評価の低下は間接的なものにとどまることが認められる。
これらの事情に加えて、Y社は、Xの持病の治療や父親の看護等を慮って、懲戒委員会の開催を遅らせるとともに、処分決定までの間、Xを無給の休職とすることなく、自宅待機を命じ、基準内賃金等を支払っていたことなどの事情を総合すると、本件酒気帯び運転がXのそれまでの勤続の功労を全て抹消するものとは認め難いものの、大幅に減殺するものといえ、その減殺の程度は5割と認めるのが相当である。

私生活上の非違行為が起こった場合に、退職金をどの程度減額していいのかは難しい問題です。

過去の裁判例等からおおよその妥当性を判断して決定するほかないと思います。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介813 超一流は、なぜ、靴磨きを欠かさないのか?(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
超一流は、なぜ、靴磨きを欠かさないのか?

足元まで気を遣うことの大切は昔から言われることです。

神は細部に宿ります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

正確には、履いている靴が、その人の性格を決めていくのだ。・・・美しい生き様だから美しい靴を履いているのではなく、美しい靴を履いているからこそ、美しい生き様になっているのだ。『こんな美しい靴を履いているのだから、自分もそれに見合った人間にならなければ申し訳ない』日々そう感じることの蓄積が、その人の性格を決めて、美しい人生を創っているのだ。」(111頁)

服装なんてどうでもいいと主張する超合理主義者を除き、一般的な感覚からすれば、靴(に限りませんが。)はきれいなほうがいいですよね。

外見で人を判断するなんてナンセンスだと思うのは自由ですが、そう思わない人が多数いる以上は、靴はきれいに越したことはありません。

賃金156 看護師の修学費用返還請求と労基法16条の適用の当否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、修学費用返還請求が認められなかった事案を見てみましょう。

医療法人K会事件(広島高裁平成29年9月6日・労経速2342号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、Y社の元職員であるXに対し、X2を連帯保証人として看護学校修学資金等を貸し付けた(このうち、平成17年4月4日から平成19年3月1日までの合計146万2793円の貸付を「本件貸付①」と、同年4月26日から平成22年3月27日までの合計108万円の貸付を「本件貸付②」といい、本件貸付①と本件貸付②とを併せて「本件貸付」という。)として、Xらに対し、本件貸付の残元金合計253万7793円+遅延損害金の連帯支払を請求している事案である。

原判決は、本件貸付①はY社により免除されており、免除の意思表示に錯誤は認められない、本件貸付②は労働基準法16条の法意に反し無効であると判断して、Y社の請求をいずれも棄却した。

Y社は、これを不服として、本件控訴を提起した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 労働基準法16条にいう「労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約」は、文理上、労働契約そのものに限定されていないし、労働者が人たるに値する生活を営むための必要最低限の基準を定め(同法1条参照)、基準に適合した労働条件を確保しようとする労働基準法の趣旨に照らせば、同条が適用される契約を限定する理由はないから、同条は本件貸付にも適用されるものと解される。
したがって、貸付の趣旨や実質、本件貸付規定の内容等本件貸付に係る諸般の事情に照らし、貸付金の返還義務が実質的にX1の退職の自由を不当に制限するものとして、労働契約の不履行に対する損害賠償額の予定であると評価できる場合には、本件貸付は、同法16条に反するものとすべきである

2 そして、本件貸付が実質として労働契約の不履行に対する損害賠償額の予定を不可分の要素として含むと認められる場合は、本件貸付は、形式はともあれ、その実質は労働契約の一部を構成するものとなるから、労働基準法13条が適用されるというべきであり、本件貸付が同法16条に反する場合に無効となるのは、同条に反する部分に限られ、かつ、本件貸付は同条に適合する内容に置き換えて補充されることになる。
なお、労働基準法14条は、契約期間中の労働者の退職の自由が認められない有期労働契約について、その契約期間を3年(特定の一部の職種については5年)と定め、労働者の退職の自由を上記期間を超えて制限することを許容しない趣旨であるから、上記の「退職の自由を不当に制限する」か否かの判断においては、事実上の制限となる期間が3年(特定の一部の職種については5年)を超えるか否かを基準として重視すべきである。

同様の取扱いをしている病院は多数存在すると思いますので、運用については十分気をつけてください。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介812 アマゾンのすごいルール(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
アマゾンのすごいルール

元アマゾン社員の方が書かれたアマゾンのルールについての本です。

結果を出し続ける会社の社内ルールがわかり、勉強になります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私も、オペレーション部門に異動してすぐの頃、上司であるジェフ・ハヤシダに『数字的にはこうなのでしかたないんです』といった主旨の意見をしたところ、『そういう評論家みたいな話はいらないよ。現場に行って実績を見せてくれないか』と言われたことがあります。現場を見ず、何の創意工夫もせずに発言していないか?数字の表側だけ見て言い訳をしていないか?そういう姿勢をたしなめられたわけです。」(265頁)

評論家は、文字通り、物事の評論をするのが仕事です。

ビジネスの現場において、評論家が果たす役割は0です。

困難な現状を打開するために必要なのは、評論ではなく、情熱と行動力です。

いつも書くことですが、できない理由をあげている時点で、多くの場合、できないのではなく、単にやりたくないのです。

面倒くさいのです。

どんな場合でもファイティングポーズをとり続ける。 

そういう姿勢が求められているのだと思います。

有期労働契約79 正社員とアルバイト職員の労働条件相違と同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、アルバイト職員と正職員の労働条件相違と労契法20条違反の有無に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人大阪医科薬科大学(旧大阪医科大学)事件(大阪地裁平成30年1月24日・労判1175号5頁)

【事案の概要】

本件は、Y社において有期雇用職員として就労していたXが、①XY社間の雇用契約において定められた労働条件は、Y社における無期雇用職員の労働条件を下回っており、労働契約法20条に違反するとして、主位的には無期雇用職員と同様の労働条件が適用されることを前提として、また、予備的には労契法20条に違反する労働条件を適用することは不法行為にあたるとして、無期雇用職員との差額賃金等合計1038万1660円の支払、②Y社がXに対して労契法20条に違反する労働条件を適用していたことは不法行為にあたるとして、慰謝料等合計135万5347円の支払+遅延損害金の支払をそれぞれ求めている事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 労契法20条は、「不合理と認められるものであってはならない」と規定しており、同規定は、労働協約や就業規則、個別契約によって律せられる有期雇用労働者の労働条件が、無期雇用労働者の労働条件に比して、法的に否認すべき内容ないし程度で不公正に低いものであることを禁止する趣旨と解される。
また、同条は、有期雇用労働者と無期雇用労働者の労働条件の相違が不合理と認められるか否かの考慮要素として、①職務の内容、②職務の内容及び配置の変更の範囲、③その他の事情を掲げているところ、その他の事情として考慮すべき内容について、上記①及び②を例示するほかに特段の制限を設けていないから、労働条件の相違が不合理であるか否かについては、上記①及び②に関連する諸事情を幅広く総合的に考慮して判断すべきものと解するのが相当である。
そして、労契法20条所定の「不合理と認められること」は、規範的要件であって、その文言からして、不合理性を基礎付ける事実は労働者が、不合理性の評価を妨げる事実は使用者がそれぞれ主張立証責任を負うと解するのが相当である。

2 ところで、雇用契約等をもって定められる労働条件は、職種や業務内容、企業規模、労働時間等の様々な要因を総合的に考慮して決定されるものであるところ、期間の定めの有無に関しても、このような要因の一つとして考慮され得るものであって、有期雇用労働者と無期雇用労働者の間で労働条件に相違がある場合は、その相違は、少なくとも期間の定めの有無が要因の一つとなっている可能性は否定できない。また、有期雇用労働者と無期雇用労働者の間に労働条件の相違があり、その相違が労働者の職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲、その他の事情を考慮しても不合理な段階に至っている場合には、期間の定めの有無が直接の要因となっているかどうかにかかわらず、法的には是認し難い状態にあるというべきである。以上のような事情に照らすと、有期雇用労働者と無期雇用労働者との間で労働条件に相違がある場合は、期間の定めの有無と明らかに関連がない相違である場合を除き、労契法20条が掲げる各要素に照らし、不合理であるか否かを判断するのが相当であるというべきである。
以上を踏まえて本件についてみると、Y社は、無期雇用職員を正職員、有期雇用職員をアルバイト職員と位置づけてそれぞれ異なる就業規則を設け、賃金その他の労働条件について異なる扱いをしているのであるから、無期雇用職員と有期雇用職員の相違は、期間の定めの有無に関連して生じたものであると認めるのが相当である。

先日、労契法20条に関する2つの重要な最高裁判決が出ましたが、結局、事案ごとに個別具体的に判断していくほかないため、今後も同様の訴訟がたくさん起こされることになります。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介811 “気づく”ことが人生の成功を“築く”(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
"気づく"ことが人生の成功を"築く"

薄い本なので、すぐに読めてしまいます。

大切なことに気付くと人生が変わるのはいつの世も真理です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

あなたの選択の基準が、あなたの人生の結果を創り出しているのです!
そして、もうおわかりになったはずです。あなた自身が得ている結果の原因は、あなたの外的な要因ではなく、あなた自身の内的な要因なのだ、ということを・・・」(19頁)

真理です。

日々、いかなる選択をするかは、すなわち、いかなる人生を歩むかに直結しています。

5年後、10年後、どうなっていたいのか。

まさに原因と結果の法則です。

日々、努力する選択をするのか、怠惰な生活を選択するのか。

日々の選択次第で、人生は大きく変わってきます。

労働時間49 携帯電話の貸与と自宅待機の労働時間性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、事故対応のために携帯電話を貸与された場合の労働時間該当性に関する裁判例を見てみましょう。

都市再生機構事件(東京地裁平成29年11月10日・労経速2339号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されているXが、携帯電話を渡され、休日も3時間以内に現地集合できるように指示されていたので、休日に待機していたとして、主位的に時間外手当の支払を求め、予備的に不法行為に基づき手当相当額の財産的損害及び慰謝料の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 不活動時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。そして、当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である(最判平成24年2月28日、同平成19年10月19日)。

2 Y社からXに対し本件施設に3時間以内に到着できるよう自宅又はその周辺に待機するよう明示の指示はなかったと認められる。また、本件マニュアルのうち、本件資料には「(連絡)~3時間」に現地に集合する旨の記載はあるが、上記のとおり、本件資料の本件職場総務課長以外の者が行うべき対応の記載を見ても、1時間以内に本社へ出社、3時間以内に本社に到着などと記載されている者がおり、これらの者が全て記載された時間内に到着できるよう休日に待機を指示されていると解されるものではなく、本件マニュアルの他の資料を見ても「現地に赴く(できる限り早く)」などとなっているのであるから、本件資料は、事故等が起きたときの対応の目安を記載したものと解するのが自然である。
本件資料のみを見れば3時間以内に現地集合が必要と解釈することができないこともないが、3時間以内に現地集合するための待機の必要性について疑問があればXは容易に質問できたはずであり、それを妨げる事実は認められない上、本件業務に関して行われた4月3日のC所長からの説明、同月9日の合同ミーティング、同月20日頃のC所長からの説明、同月23日及び21日の安全衛生管理に関する研修会、毎月の時間外勤務の報告など待機の必要性の有無を確認しやすい機会が多数あったにもかかわらず、同年12月4日まで行われていない。これはXとしても本件資料により待機が指示されていたわけではないと理解していたことを推測させる(Xの認識がいかなるものであったとしても、本件資料により休日の待機が指示されていたとは認められない。)。
さらに、Y社貸与の携帯電話の携帯を指示されたからといって、当該携帯電話に連絡があるのは事故等が起こった場合のことであり、利用者からの問合せのように通常起きることが予測されているものではなく、平成25年度から平成27年度を見ても1件も連絡が必要となる事故等は起きておらず、Xが本件業務を担当している期間にも当該携帯電話にメールや電話があったことはなかったのであるから、業務の性質としても待機が必要なものとはいえず、待機の指示があったとはいえない
緊急連絡網にY社貸与の携帯電話番号よりも自宅の電話番号の方が上に記載されていることについては、Y社が携帯電話を貸与しているのであるから、自宅にいなくてもY社貸与の携帯電話へ連絡があると考えるのが自然であるから、これにより自宅待機を指示されていたとはいえない
Xが休日に常に自宅に待機していたわけではなく、外出していたことを認めていることからしても、Xとしても自宅待機の指示はなかったと認識していたといえる。
加えて、XはC所長から休日に登山に出かけると事前に言われることがあり、その時は必ず自分が対応できるようなおさら気が休まらなかったと供述しているが、本件資料によればXとは別にC所長も3時間以内に出社となっているにもかかわらず、休日に待機せずに外出していたことをXは認識していたのであるから、かかるXの供述は、かえって本件業務の担当者が待機不要であることをXが認識していたことを裏付ける
したがって、Xは、本件業務を担当していたとしても、休日につき、労働からの解放が保障されていたというべきであり、使用者の指揮命令下に置かれていたとはいえないから、Xの主張する時間外労働は労働時間とはいえない。

事実認定の点で非常に参考になりますね。

手待時間に該当するかについてはよく訴訟でも争点となるところですので是非参考にしてください。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。