Daily Archives: 2019年3月6日

配転・出向・転籍37 転居命令が無効と判断された理由とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、転居命令が業務上の必要性を欠くとして無効とされた裁判例を見てみましょう。

ハンターダグラスジャパン事件(東京地裁平成30年6月8日・労経速2365号18頁)

【事案の概要】

本件は、建材及びインテリア・ブラインド等の製造販売を主たる業務とするY社の従業員であるXが、Y社が平成28年11月4日にした転居命令に従わなかったことを解雇事由として平成29年3月31日付けで解雇されたことから、Y社に対し、本件解雇は客観的合理的理由及び社会通念上の相当性を欠き、労働契約法上無効であるなどと主張して、労働契約上の地位の確認、本件転居命令に従う義務のないことの確認、平成29年4月及び5月の賃金合計125万1000円+遅延損害金等の支払を求めている事案である。

【裁判所の判断】

解雇は無効

転居命令も無効

Y社はXに対し、125万1000円+遅延損害金を支払え 等

【判例のポイント】

1 本件について業務上の必要性をみるに、Y社は、往復6時間の長時間通勤は、Xの健康不安、疲労や睡眠不足による工場内事故の危険、通勤途中の事故や交通遅延の可能性の増大、残業を頼みにくい不都合等から、Y社はXの長時間通勤を長期間放置することはできず、本件転居命令には業務上の必要性がある旨主張する。
しかし、本件転居命令は、本件配置転換の約1年後に出されたもので、Xは、その期間、転居せず自宅から茨城工場に通勤していたこと、Xの茨城工場での業務内容は梱包作業であり、早朝・夜間の勤務は必要なく緊急時の対応も考え難いこと、X不在時には他の従業員がXの業務に対応することができたこと、Xに残業が命じられることはなかったこと、Xは、片道3時間かけて通勤しているが、交通事故のために休職した期間と一度の電車遅延による遅刻の他は遅刻や欠勤はなく、長距離通勤や身体的な疲労を理由に仕事の軽減や業務の交替を申し出たこともほとんどなかったことが認められる。
そうすると、Xが転居しなければ労働契約上の労務の提供ができなかった、あるいは提供した労務が不十分であったとはいえず、業務遂行の観点からみても、本件転居命令に企業の合理的運営に寄与する点があるとはいえず、業務の必要性があるとは認められない

2 本件転居命令を巡る交渉において、Xが不満とした家賃の負担や別居手当の不支給は、Y社の旅費規程で定められたものであるから、Y社がXの不満に対応することが出来なかったことはやむを得ない。また、本件転居命令を出したことにつきY社に不当な動機・目的の存在は認められないし、Y社がXに対して転居することを強く求めたのも安全配慮義務の履行のためであったことは否定できない。そうすると、本件転居命令が無効であり、それに従わないことを理由にした本件解雇が無効であるからといって、Y社がXに対して、本件転居命令に従うよう求めたことが直ちに不法行為に当たるとは認められない。
したがって、Xの不法行為に基づく慰謝料請求は理由がない。

会社の考えもわからないではありませんが、判決となるとこういう結果になりますね。

それにしても、毎日片道3時間の通勤ですか・・・。考えただけでしんどいです。

片道3分のところに住んでしまうと、もう長時間勤務ができない体になってしまいます。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。