同一労働同一賃金18 大学の嘱託講師と同一労働同一賃金(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、大学夜間担当手当の不支給が労契法20条・パート労働法8条に違反しないとの原審判断が維持された裁判例を見てみましょう。

学校法人A事件(大阪高裁令和2年1月31日・労経速2431号35頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の経営するA大学の嘱託講師であったXが、Y社に対し、夜間の授業を担当したにもかかわらず、A大学の専任教員が夜間の授業を担当した場合に支給される「大学夜間担当手当」(本件手当)が平成27年度に支給されなかったのは、改正前の労契法20条又は同改正前のパートタイム労働法8条に違反するなどと主張して、以下の各請求をした事案である。

原判決は、Xの請求をいずれも棄却した。そこで、Xが原判決を不服として本件控訴を提起した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 本件手当は、平成27年度当時、6講時(午後6時25分~7時55分)、7講時(午後8時10分~9時40分)の授業を担当した専任教員に対して、1週1講時につき月額8000円を支給し、1週1講時を越えて担当する場合は1週1講時につき月額2000円を加算し、最終講時を担当した場合は1週1講時につき月額3000円を加算するというものであったが、嘱託教員よりも広範で重い職務を担当するため日中及び夜間の時間を多く拘束される専任教員が、更に6講時以降の夜間の授業を担当する場合には時間的拘束や負担が大きくなると考えられることからすれば、本件手当は専任教員が日中に広範で責任の重い職務を担当しながら、更に6講時以降の授業を担当することの時間的拘束や負担を考慮した趣旨及び性質の手当であると認められる。

2 労契法20条にいう「不合理と認められるもの」とは、有期契約労働者と無期契約労働者の労働条件の相違が不合理であると評価できるものであることをいうと解するのが相当である(ハマキョウレックス事件最高裁判決参照)。そして、上記の判示のほか、パートタイム労働法8条と労働契法20条の規定の内容と文言が類似していることからすれば、パートタイム労働法8条にいう「不合理と認められるもの」も上記と同様に解するのが相当であり、専任教員に対しては本件手当が支給され、嘱託講師には本件手当が支給されないという本件における労働条件又は待遇の相違については、専任教員と嘱託講師の職務の内容(業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して不合理であると評価することができるかを検討することになる。

3 そうであるところ、Y社における専任教員と嘱託講師との間の職務の内容の相違並びに本件手当の趣旨、性質のほか、前提事実のとおり、本件手当は専任教員が6講時及び7講時という夜間の授業を1週1講時担当すれば月額8000円が支給され、担当する授業数、時間に応じてこれに加算されるものであって、本件手当として支給される月額も著しく多額になるものではないこと及び嘱託講師が夜間の授業を担当することによって、当該嘱託講師の担当総授業数が増えた場合には週1回90分の講義につき月額2万8800円が本俸に加算され、嘱託講師の担当授業数の増加に伴う時間的拘束や負担に対しては本俸への加算という形で相当の配慮がされているといえることをも併せ考慮すると、上記労働条件又は待遇の相違が不合理と認められるものであると評価することはできないというべきである。

オーソドックスな認定のしかたであり、参考になります。

同一労働同一賃金問題については、すでに会社としていかなる準備をすべきかが判明しているので、あとは顧問弁護士に相談しながら適切な手順で進めていけばそれほど大きな失敗はないと思います。