労働者性38 ホテルフロントマン(業務委託)の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、ホテルフロントマン(業務委託)の労働者性に関する裁判例を見ていきましょう。

ブレイントレジャー事件(大阪地裁令和2年9月3日・労判1240号70頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社との間で労働契約を締結したと主張して、Y社に対し、①労働契約に基づき、平成28年7月1日から平成30年6月29日までの間(以下「本件請求期間」という。)の労務提供分につき、労基法37条1項所定の割増賃金合計775万8029円+遅延損害金の各支払い、②労基法114条に基づく付加金575万6920円+遅延損害金の支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、737万9533円+遅延損害金を支払え。

Y社は、Xに対し、付加金520万2182円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 業務内容及び遂行方法に対する指揮命令
Xの業務は、本件業務委託契約書中に、その内容が細かく特定されていた上、同契約書上、Xは、かかる業務をY社の指示によって行い、勤務日ごとに毎回各種状況の報告を行うこととされていた。そして、Xは、実際に、Y社に対し、受託業務報告書の書式を用いて、利用客についての報告事項、引継ぎ事項を記載する欄のほか、一時間ごとの入室中、掃除中及び利用停止中の客室数に至るまで、業務につき詳細な内容の報告を上げていた。このように、Y社による詳細な特定や報告の要求があったことからすると、Xの業務内容及び遂行方法に対しては、Y社の指揮監督が及んでいたということができる。

2 時間的場所的拘束性
Xの業務は、その業務時間が、基本的に午前11時から翌日の午前11時と定められ、業務を行う場所も、本件ホテルという一つの場所に定められているものであって、時間的場所的な拘束性がある

3 労働契約との内容の近似性
Xは、形式上、Y社との間で、業務委託契約を締結している。
他方、午前11時から翌日の午前11時までというXの業務時間は、労働者であるY社の従業員を対象とした就業規則に記載されている始業時刻及び終業時刻の内容と同一である。また、Xが、本件業務委託契約書に基づいて従事する業務内容や、Xの具体的な勤務日の決定方法については、業務委託契約の締結以前に、労働契約に基づいて労務を提供していたときのものと変わりがなかった

4 小括
以上によれば、Xは、Y社との間で、形式的には業務委託契約を締結しているものの、時間的場所的な拘束を受けている上、その業務時間・内容や遂行方法が、Y社との間で労働契約を締結した場合と異なるところがなく、Y社の指揮監督の及ぶものであったことからすると、Xは、実質的には、Y社の指揮命令下で労務提供を行っていたというべきである。

仕事のしかたとして、これを業務委託と考えるのはやはり無理がありますね。

結果、凄まじい残業代となっております。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。