解雇355 横領を理由とする解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、横領を理由とする解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

小市モータース事件(東京地裁令和3年4月13日・労判ジャーナル114号40頁)

【事案の概要】

本件は、第1事件において、Y社との間で労働契約を締結していたXが、Y社がXに対してした解雇が無効であると主張して、Y社に対し、労働契約に基づく未払賃金として約217万円等の支払いと、Y社がした解雇が不法行為に当たるとして、不法行為に基づく損害賠償請求権として480万円等の支払を求め、第2事件において、Xが、Y社の代表者取締役であるBに対し、BとY社は実質的に同一であり、Y社は完全に形骸化しているから、その法人格は否認されるべきであると主張して、労働契約に基づく未払賃金として約217万円等の支払いと、解雇が不法行為に当たるとして、不法行為に基づく損害賠償請求権として480万円等の支払を求めるとともに、仮に法人格の否認が認められないとしても、Bは、Y社がXに賃金及び割増賃金を支払わなかったことや、違法に解雇したことについて、Y社の取締役としての任務懈怠があるとともに、民法709条の不法行為責任も負うと主張して、会社法429条1項ないし民法709条に基づく損害賠償請求権として、約697万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

未払賃金請求一部認容

損害賠償請求一部認容

【判例のポイント】

1 Y社における本件解雇は、単に解雇として無効というだけでなく、Xから何ら弁解を聴くことなく、十分な裏付けもとらずに会社財産を横領したものと一方的に決めつけ、Xの名誉を著しく損なう内容を記載した本件解雇辞令を、他の従業員の目にも触れるY社の本店内に掲示するという著しく不相当な方法で告知するという方法で行われるなど、著しく社会的相当性を欠いたものであり、その後、XにY社での就労を断念せざるを得ないような実力行動にも及んでいることも考慮すると、本件解雇は、違法にXの権利または法律上保護された利益を侵害するものとして、それ自体不法行為を構成すると認められる。

事前に弁護士や社労士に、解雇手続の進め方を相談できる状況にないのでしょうか。

これでは勝てるものも勝てません。

解雇をする上で必要なプロセスについては、事前に必ず顧問弁護士に相談するようにしましょう。