労働者性44 ホテルのフロント業務に従事する者の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、ホテルのフロント業務に従事する者の労働者性に関する裁判例を見ていきましょう。

キサラギコーポレーション事件(大阪地裁令和3年8月23日)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社に対し、賃金が未払であるとして、雇用契約に基づき未払賃金等の支払を求めるとともに、Y社代表者からセクハラ、誹謗中傷等を受けたとして、会社法350条に基づき損害賠償等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 Xが従事していた業務は、本件ホテルのフロント業務等であったところ、その業務内容に照らしても、XがY社から指示された仕事を受諾するか否かを自由に決定することができていたということはできず、Xが、Y社から打診された業務を拒絶したというというような事情もうかがわれず、また、Y社代表者が、Xに対し、部屋の稼働状況を問い合わせたのに対し、Y社代表者の問合せがあるたびにXが稼働状況を報告していることからすれば、Xは、Y社の指揮命令下にあったということができ、さらに、Xの勤務場所は、本件ホテル内に固定されており、業務に従事する時間もシフトによって定まっていたほか、Xはタイムカードを打刻することが義務付けられていたといえるから、Xの勤務場所・勤務時間には拘束性があったということができ、そして、Xの報酬は、時給制とされており、労務提供の時間によってその額が定めることとされていたものであること、100時間の見習い(研修)期間が設けられていたことなどからに照らせば、Xの報酬は労務対償性を有していたということができるから、Xは、Y社の指揮監督下において労務を提供し、労務提供の対価として報酬を得ていたものであり、本件契約は雇用契約であったと認めるのが相当である。

これを業務委託(請負)とするのは完全に無理があります。

強引に業務委託契約の形をとるとあとで大変なことになりますので気を付けましょう。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。