Monthly Archives: 4月 2022

労働者性44 ホテルのフロント業務に従事する者の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、ホテルのフロント業務に従事する者の労働者性に関する裁判例を見ていきましょう。

キサラギコーポレーション事件(大阪地裁令和3年8月23日)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社に対し、賃金が未払であるとして、雇用契約に基づき未払賃金等の支払を求めるとともに、Y社代表者からセクハラ、誹謗中傷等を受けたとして、会社法350条に基づき損害賠償等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

一部認容

【判例のポイント】

1 Xが従事していた業務は、本件ホテルのフロント業務等であったところ、その業務内容に照らしても、XがY社から指示された仕事を受諾するか否かを自由に決定することができていたということはできず、Xが、Y社から打診された業務を拒絶したというというような事情もうかがわれず、また、Y社代表者が、Xに対し、部屋の稼働状況を問い合わせたのに対し、Y社代表者の問合せがあるたびにXが稼働状況を報告していることからすれば、Xは、Y社の指揮命令下にあったということができ、さらに、Xの勤務場所は、本件ホテル内に固定されており、業務に従事する時間もシフトによって定まっていたほか、Xはタイムカードを打刻することが義務付けられていたといえるから、Xの勤務場所・勤務時間には拘束性があったということができ、そして、Xの報酬は、時給制とされており、労務提供の時間によってその額が定めることとされていたものであること、100時間の見習い(研修)期間が設けられていたことなどからに照らせば、Xの報酬は労務対償性を有していたということができるから、Xは、Y社の指揮監督下において労務を提供し、労務提供の対価として報酬を得ていたものであり、本件契約は雇用契約であったと認めるのが相当である。

これを業務委託(請負)とするのは完全に無理があります。

強引に業務委託契約の形をとるとあとで大変なことになりますので気を付けましょう。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。

本の紹介1264 自分資産化計画(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。

本のそでには「本当に大切なのは、『どれだけ稼ぐか?どれだけ増やせるか?』よりも『どれだけお金を持ち続けられるか?』」と書かれています。

一時的にお金を増やすことができても、それが持続できなければ意味がありません。

かといって、貯金ばかりして窮屈な生活もしたくないですよね。

サステナブルな収入源をいかに確保するかがとても重要なわけです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『リストラされるかもしれない』『年収が下がって住宅ローンが払えないかもしれない』『家族の生活費、子供の養育費を捻出できるだろうか?』『老後資金を2000万円以上貯めなければならない』 毎日このようなお金の不安に駆られて、いつもあなたは『自分のしたいこと』を後回しにしていませんか?パートナーのため、子供のため、親のため、上司のため、部下のため、会社のため・・・いつもあなたは『誰か』のために働いています。そこにどれだけ『あなたのため』に働いている分があるでしょうか。」(3~4頁)

仕事、家庭、お金、老後・・・心配と不安だらけですね。

いつどうなるかわからない現代社会において、いまだに高度経済成長期がごとき長期安定収入をベースとしたものの考え方をしている方が多数いることに驚きます。

昭和の常識は令和の非常識なのに、いつまで親世代と同じことをやっているのでしょうか。

来年どうなるかすらわからないのに、35年間もの長期返済計画を立てるという・・・。

教育と同調圧力の呪縛でしょうか。

私には正気の沙汰とは思えません。

モノを持つということのリスクの根本は、手放したいときにそう簡単に手放せないということと維持費が予想以上にかかるということに尽きます。

変化の激しい時代にモノを持つことはメリットよりもデメリットのほうがはるかに大きいと私は思っています。

不当労働行為286 組合執行委員長を懲戒解雇したことが不当労働行為とした初審命令が取り消された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、組合執行委員長を懲戒解雇したことが不当労働行為とした初審命令が取り消された事案を見ていきましょう。

公益社団法人日本空手協会事件(中労委令和2年11月4日・労判1256号95頁)

【事案の概要】

本件は、組合執行委員長を懲戒解雇したことが不当労働行為に該当するかが争われた事案である。

なお、初審(東京都労委平成30年10月2日)は、不当労働行為に該当すると判断した。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 本件懲戒解雇に先立ち、事情聴取をしているが、聴取事項は、いずれも、当時の経営陣批判に関連する行為又はA個人の行為を問題とするものであって、組合の労働組合としての活動そのものを問題視していた様子もうかがわれない。
上記のような組合の活動の内容や協会内容の対立構造の顕在化という状況、協会のAに対する事情聴取の内容からすると、本件懲戒解雇は、Aが反経営陣活動をしたことを理由としてされたものであると考えられる
以上のとおり、本件懲戒解雇は、Aが労働組合の組合員であること又は労働組合としての活動をしたことを理由としてされたものとまでは認められない
したがって、本件懲戒解雇は、労組法7条1号の不当労働行為に該当しない。

懲戒解雇の有効性は別として、Aが組合員であること又は労働組合としての活動をしたことを理由とするものではないため、不当労働行為にはあたらないとされました。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

本の紹介1263 稼ぐことから逃げるな(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。

令和の虎の株本社長の本です。

サブタイトルは、「若者たちに伝えたい『個の時代』を勝ち抜く方法」です。

タイトルのとおり、きれいごと抜きで徹底的に「稼ぐ」ことの重要性を説いています。

保守的な方、安定志向の方は、この本を読んでも、全く響かないと思いますが、自分の力でのし上がってやるという強い気持ち・志をお持ちの方は是非、読んでみましょう。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

年功序列の仕組みは、一見あたりまえのように見えつつ、グローバルな視点で見れば超異常なものでした。そんな異常な仕組みがようやく終わり、これからは『ノーマルな世界』に戻ると考えたほうが、遥かに健全だと思います。・・・年功序列の価値観から抜け出せず、『この力で稼ぐ』という一番難しいことを後回しにすると、結局稼げないままで終始する可能性が高い世界でもあります。」(60頁)

みなさん、ある日突然、会社が倒産しても、「稼ぐ」自信、ありますか?

いつまでもあると思うな、親と会社です。

最後は、誰も守ってはくれません。

自分の身は自分で守るしかありません。

日本が経済大国なんて話は、今は昔です。

能力の低い年配従業員に高い給料を支払うという夢のような仕組みがいつまでも維持できるはずがありません。

遊んでいる暇があったら勉強しよう。

自分の価値を高めよう。

解雇360 数多くの解雇理由を主張したものの解雇が無効と判断された事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、就業規則違反等による解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

清流出版事件(東京地裁令和3年2月26日・労判1256号78頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約を締結していたXが、Y社に対し、①Y社による普通解雇が無効であるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、同契約に基づき、給与月51万4300円+遅延損害金の支払、毎年12月10日限り賞与125万8000円+遅延損害金の支払をそれぞれ求め、②Y社がXに対し行った配置転換及びその後の過小要求が不法行為に当たるとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料100万円の賠償+遅延損害金の支払を求め(請求4)、③Y社がXに対し行った退職勧奨が不法行為に当たるとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき、②と同額の賠償等を求める事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効
→バックペイ認容

その余の請求棄却

【判例のポイント】

1 Xについては、私用での外出時のルールに違反したことがあった点及び本件リストをY社に無断でX端末に保存していた点でY社の就業規則等に違反する点があったが、それぞれの事情が直ちに本件主位的解雇を相当とするほどの事情とはいい難いのは上記のとおりであり、それらの点を併せ考えてみても、本件主位的解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められず、解雇権を濫用したものとして無効であるというべきである。

2 Xがa会に本件手紙を交付したことをもって直ちに本件予備的解雇が相当であったということはできないし、本件主位的解雇について述べたところと併せて考えても、本件予備的解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められず、解雇権を濫用したものとして無効であるというべきである。

それぞれの違反行為が些細な内容の場合には、どれだけたくさんの就業規則違反を主張してもそれをもって解雇が有効になるわけではありません。

解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。

本の紹介1262 ずっとやりたかったことを、やりなさい。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

きょうは、本の紹介です。

いろんなことに我慢をし、不安を感じ、やりたいこともやれずに日々を過ごしている方向けの本です。

幾度となく言っておりますが、人生は思っているほど長くありません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

本来の自分とは、子どものときあまり認めてもらえなかった自分であり、『わがままを言っちゃいけませんよ!』と繰り返し聞かされた自分である。本来の自分は、ときに扱いにくいが、健全であり、他人の欲求に振り回されず、自分の欲求を肯定する方法を知っている。だが、善人の罠にとらわれた人たちは、いまだに本来の自分を受け入れることができない。世間から反感をかうのが怖くて、自己を前面に押し出せないのだ。」(195~196頁)

みなさんはいかがですか?

あらゆることを我慢するのに慣れてしまい、もう自分の本当の欲求が何なのかもわからなくなっていませんか。

自分の人生を自分の思うままに生きることは贅沢でしょうか。

本当はもっと自由に、我がままに、自分の好きなように生きていいはずなのに。

人生は、思っているほど長くありません。

Be who you are and say what you want.

不当労働行為285 会社の支店長がバス運転手である組合員に対し組合脱退勧奨を行ったことが不当労働行為とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、会社の支店長がバス運転手である組合員に対し組合脱退勧奨を行ったことが不当労働行為とされた事案を見ていきましょう。

ジェイアールバス関東事件(東京都労委令和3年8月17日・労判1254号95頁)

【事案の概要】

本件は、会社の支店長がバス運転手である組合員に対し組合脱退勧奨を行ったことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 X支店長は、Aの行為を会社に報告しないことと引き換えにJR東労組の脱退届を出すようにAに求め、同人がこれを拒否すると、同人が転勤になる可能性やJR東労組が将来なくなる可能性を示唆するなどして同組合から脱退するよう働き掛けているのであるから、本件行為は、組合の運営に干渉し組合を弱体化させる行為であるといえる。

2 会社の対応やJR東労組の中央執行委員会の見解を考慮しても、本件行為について既に解決済みであり、集団的労使関係秩序が正常に回復されたとまで断ずることはできず、そうすると、類似の行為が繰り返される恐れがなくなったともいえない。したがって、本件申立てに救済の利益ないし必要がないとする会社の主張は採用することができない。

組合脱退勧奨が不当労働行為にあたることは争いのないところです。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

本の紹介1261 本当のお金の使い方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、本の紹介です。

タイトルのとおり、お金の「稼ぎ方」ではなく、「使い方」にフォーカスした本です。

どれだけお金を持っていても、使い方が間違っていると何にもなりません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

自分の理想の生活ができるように、お金を稼ぎ、使う。それが私のお金の使い方です。私たちの人生で大切なのは、プライベートや仕事を充実させることであって、節約が最上位にくるわけではありません。そのためには我慢ばかりせず、『自分にとっての価値があるもの』にお金を使うことです。」(92頁)

お金は稼ぎ方もさることながら、使い方も同じくらい重要です。

特に20代から30代前半の方は、自分の価値を高めるためにどれだけ時間とお金をまわせるかが、その後の人生に決定的な影響を与えます。

これは残酷ですが真実です。

準備をしてきた人とそうでない人で同じはずがないという、いわば当然の帰結です。

自分の価値を高め、単価を上げることができれば、投資資本の回収なんてあっという間にできます。

不当労働行為284 組合員の解雇撤回等を議題とする団交申入れに対する会社の対応が不当労働行為にあたるとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、組合員の解雇撤回等を議題とする団交申入れに対する会社の対応が不当労働行為にあたるとされた事案を見ていきましょう。

粟野興産事件(東京都労委令和3年1月19日・労判ジャーナル1254号96頁)

【事案の概要】

本件は、組合員の解雇撤回等を議題とする団交申入れに対する会社の対応が不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 会社は、組合の全ての質問や要求は既に第1回団体交渉や係属中の訴訟等において回答済みであり、また、長期間、数々の訴訟と労働委員会の手続等で争われており、いずれかの譲歩により交渉が進展する見込みはなく、団体交渉を継続する余地はなくなっていた以上、団体交渉拒否の正当理由があると主張する。
しかしながら、訴訟と不当労働行為審査手続と団体交渉とは、各々その目的や機能を異にするものであり、訴訟や労働委員会の手続の中で説明資料等が提出されたからといって、団体交渉において誠実に説明する労働組合法上の義務が消滅するわけではない
また、訴訟等が係属していたとしても、別途、団体交渉において紛争を解決する余地がないとはいえず、団体交渉において双方が説明や主張を尽くした上で交渉が行き詰まりに達したといった事情がない限り、訴訟等における状況のみから、団体交渉を継続する余地がなくなったということはできない

これは、団体交渉の基本中の基本ですので、しっかり押さえておきましょう。

労働組合との対応については、日頃から顧問弁護士に相談しながら進めることが肝要です。

本の紹介1260 我慢して生きるほど人生は長くない(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は本の紹介です。

著者は、心療内科医の先生です。

このブログで書いている内容と共通する部分がいくつもあります。

自由に生きても我慢して生きても、いずれにせよ、人生はあっという間に終わります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

職場の人間関係は密で影響力が大きく、どのような環境でどのような人とどのような関係を作るかは、その後のあなたの心や生活、人生のあり方を左右します。」(98頁)

多くの人が、寝ている時間以外のほとんどの時間を自宅と職場(学生で言えば学校)で過ごしています。

人生の幸福度は、何をするかよりも誰といるかによって大きく変わります。

人の悩みの大半は、人間関係から来ていることを考えればわかると思います。

自宅にいても、会社にいても、不平不満やストレスが尽きないという生活・・・考えただけで大変です。

今の自分は、過去の自分の選択の総体です。

続けるも自由。

辞めるも自由。

自由に生きても我慢して生きても、いずれにせよ、人生はあっという間に終わります。