解雇369 事業縮小に伴う解雇が手続きに妥当性を欠くため無効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、事業縮小に伴う解雇が手続きに妥当性を欠くため無効とされた事案を見ていきましょう。

アンドモア事件(東京地裁令和3年12月21日・労経速2476号36頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのない労働契約を締結していたXが、令和2年7月20日付けでされた解雇は解雇権を濫用したものとして無効であるとして、Y社に対し、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、令和2年5月分から同年8月分までの未払賃金合計101万8162円+遅延損害金の支払等を求め、さらに、本件解雇は違法であり不法行為に当たると主張して、不法行為に基づき慰謝料100万円及び弁護士費用相当額10万円の合計110万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

【判例のポイント】

1 本件解雇当時、Y社には相当高度の人員削減の必要性があったと認められ、当時の状況に照らすと、解雇回避のために現実的にとることが期待される措置は限定されていたことがうかがえ、被解雇者の選定も不合理であったとは認められない。
しかしながら、Y社は、休業を命じていたXに対し、一方的に本件解雇予告通知書を送り付けただけであって、整理解雇の必要性やその時期・規模・方法等について全く説明をしておらず、その努力をした形跡もうかがわれない
上記のとおり相当高度な人員削減の必要性があり、かつ、そのような経営危機とも称すべき事態が、主として新型コロナウイルス感染症の流行という労働者側だけでなく使用者側にとっても帰責性のない出来事に起因していることを考慮しても、本件解雇に当たって、本件解雇予告通知書を送付する直前にその予告の電話を入れただけで、それ以外に何らの説明も協議もしなかったのは、手続として著しく妥当性を欠いていたといわざるを得ず、信義に従い誠実に解雇権を行使したとはいえない
したがって、本件解雇は、社会通念上相当であるとは認められず、解雇権を濫用したものとして、無効である。

整理解雇の必要性等を説明したところで、状況的に大きく変わるわけではないとしても、プロセスを軽視すると、このような結論になってしまいます。

整理解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。