賃金229 賃金減額合意の有無と未払賃金等支払請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、賃金減額合意の有無と未払賃金等支払請求について見ていきましょう。

ハピネスファクトリー事件(東京地裁令和4年1月5日・労判ジャーナル123号30頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社に対し、令和2年4月及び同年5月分の賃金の一部が支払われていないとして、未払賃金等の支払を求め、また、未払割増賃金及び付加金の支払を求め、さらに、Y社がXを長時間労働に従事させたことが安全配慮義務違反に当たるとして、債務不履行に基づき、慰謝料50万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払賃金等支払請求認容

未払割増賃金及び付加金等請求一部認容

【判例のポイント】

1 本件手当は割増賃金として支払われたものかについて、XとY社との労働契約の内容を明らかにした契約書や就業規則は提出されておらず、Y社は、Xと労働契約を締結するに当たり、月額27万円ないし30万円の給与に残業代が含まれる旨を説明しなかったこと、Xの採用当時の求人情報には残業代について何ら記載されていなかったことが認められること等から、XとY社間の労働契約において、本件手当を割増賃金として支払うものとされていたとは認められず、本件手当をもって割増賃金の支払とみることはできない。

2 賃金減額合意の成否について、本件減額合意は、賃金を2割減額する内容であり、Xにもたらされる不利益の程度は大きく、また、Xは、Y社代表者との一対一の面談において、Y社代表者から、店の営業時間を短縮したことに伴い、人員削減をすること及び給料を2割削減することを通告され、本件同意書に署名押印するよう求められたため、やむなく本件同意書に署名押印したこと、Xは、上記面談までの間に、賃金を減額すべき経営上の必要性等について、何ら説明を受けていなかったことが認められ、そして、賃金を減額すべき経営上の必要性があったことを裏付ける客観的な証拠は何ら提出されていないから、本件減額合意が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとは認められないから、本件賃金減額合意が成立したとは認められず、Xは、Y社に対し、令和2年4月分及び同年5月分の未払賃金として合計9万6774円の支払を求めることができる。

上記判例のポイント1も2も、これでは勝てるものも勝てません。

両方とも、労務管理上の基本的な論点ですのでしっかり押さえておきましょう。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。