解雇394 新型コロナウイルスの影響による整理解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、新型コロナウイルスの影響による整理解雇の有効性に関する裁判例を見ていきましょう。

ジャパンホリデートラベル事件(大阪地裁令和4年12月15日・労判ジャーナル133号34頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのない労働契約を締結していたXが、Y社に対し、XがY社からされた整理解雇は無効である旨主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることを求めるとともに、労働契約による賃金支払請求権に基づき、未払賃金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Y社は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって営業面で壊滅的な打撃を受ける一方で、そのままでは毎月約1億円の人件費及び管理費の支出が続くのであって、本件解雇の時点において、Y社が人員削減によって業務全般に支障を来す部署を除いて各部署の4割から5割程度の人員削減を行ったことは、企業経営上のやむを得ない措置といえ、人員削減の必要性に欠けるところはなく、また、Y社は、管理費の削減を行いながら、休業や雇用調整助成金の利用、希望退職の募集等を順次実施しているのであるから、解雇回避に向けた措置を講ずるという信義則上の義務を果たしたものといえ、さらに、経理部においては、①会計伝票の登録数によって仕事量を比較し、②簿記資格の有無又は資格取得に向けた姿勢の有無によって専門性の高さを比較し、その上で、③他の従業員により代替困難な業務に従事していない者を整理解雇の対象としており、これらは経理部内における業務に関連する指標を用いて被解雇者を選定するものであって合理的なものであるといえるところ、Xは、①会計伝票の登録数は本部長であるCを除くと最も少なく、②本件解雇時において簿記資格を有せず、③Xの業務内容は代替困難な業務ではないから、XはY社の設定した選定基準に沿うと被解雇者に該当するのであって、人選の合理性に欠けるところはなく、そして、Y社は、人員削減に至る経緯と必要性に加えて、希望退職の時期・規模・方法について適時に周知をした上で、Xを含む従業員に対して必要な説明を行っているのであるから、解雇手続は相当なものであるといえるから、本件解雇は、適法な整理解雇であるといえる。

整理解雇の有効要件(要素)は、とても厳格に判断されますが、上記の事情が認められる場合には、さすがに裁判所も有効と判断してくれます。

押さえるべきポイントをしっかり押さえることが大切です。

解雇をする際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。