賃金259 体調不良を理由とする自宅待機期間中の賃金請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、体調不良を理由とする自宅待機期間中の賃金請求に関する裁判例を見ていきましょう。

ゼリクス事件(東京地裁令和4年8月19日・労判ジャーナル134号44頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、体調不良のため、令和2年8月20日、仕事を休み、同月21日、38度以上の発熱があったため、Y社に報告したところ、Y社から、2週間自宅で待機するように命じられたため、この間の賃金の支払を請求した事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 少なくとも同月20日及び同月21日については、Y社の責に帰すべき事由ではなく、また、同月22日から同月末日までの期間については、この間のXの体調は明らかではなく、Y社による自宅待機命令により就労することができなかったというべきであるが、この頃、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が生じていたこと(公知の事実)からすれば、感染が広がる危険を避けるため、発熱した労働者に2週間程度の自宅待機を命ずることには合理的な理由があったというべきであり、また、本件現場では、令和2年9月、クライアントの予算不足のため体制を縮小したことにより、Y社の人員に余剰が生じていたものであるから、令和2年8月及び同年9月分の賃金請求につき、Xの本件雇用契約に基づく就労義務の不履行については、労働基準法26条における債権者の責に帰すべき事由があったということはできないから、Xの同月分の賃金の支払請求には理由がない。

自宅待機命令の理由が本件のように不可抗力等を含め使用者側の故意・過失によらない場合には、賃金が発生しません。

もっとも、その判断は慎重に行う必要がありますのでご注意ください。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に有給休暇に関する運用を行うことが肝要です。