セクハラ・パワハラ78 宛先やCCに該当者以外を入れ、部下を叱責するメールを送信したこと等による譴責処分等が有効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、宛先やCCに該当者以外を入れ、部下を叱責するメールを送信したこと等による譴責処分等が有効とされた事案を見ていきましょう。

ちふれホールディングス事件(東京地裁令和5年1月30日・労経速2524号28頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結したXが、Y社から、他の従業員らに対するパワー・ハラスメントに該当する行為があったとして、始末書を提出するよう命じる旨の譴責処分を受け、その後、Y社の社長室に配転する旨の命令を受けたことから、本件譴責処分は理由を欠くものとして無効であって、本件配転命令も無効である旨主張して、Y社に対し、本件譴責処分の無効確認、XがY社の社長室で勤務する雇用契約上の義務がないことの確認及びXをY社の海外事業部に配転することを求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、令和2年3月13日、アジア市場における広告代理店の選定に関し、AがCを選定することを前提に検討を進めていたことについて、Dアジア事業本部長及びAに対し、CcにK及びMを入れた上で、もともと打ち合わせた内容とは違うとして、「Aさんの言動にも目に余るものを感じております」などと記載した電子メールを送信している。
このうち、「Aさんの言動にも目に余るものを感じております」との文言は、Xの部下であったAの言動について客観的な事実を指摘することなく、感情的にAを叱責する印象を与えるものであったことは否定し難い上、前記電子メールは、Dアジア事業本部長からAが中心になって前記検討を進めてほしい旨の指示を受けた後に、A以外の者を宛先やCcに入れて送信されたものであって、業務上必要かつ相当な範囲を超えてAを叱責するものであったというべきである。
Xは、前記電子メールは、AがXを無視してDアジア事業本部長と二人で検討を進めていたことが組織の秩序を乱す行為であることを、Dアジア事業本部長に対して発信したものである旨主張しているものの、仮に広告代理店の選定に関するAの検討内容やその過程に何らかの問題があったとしても、Xとしては、AやDアジア事業本部長との間で個別に指導や相談を行うことで足り、A以外の者を宛先やCcに入れて前記電子メールを送信することが、業務上必要かつ相当であったとはいい難い
そうすると、Xが前記電子メールを送信したことについて後にAに謝罪したことを考慮しても、XがA以外の者を宛先やCcに入れて前記電子メールを送信し、Aを叱責したことは、他の従業員を業務遂行上の対等な者と認め、職場における健全な秩序及び協力関係を保持する義務に反して、上司としての地位を利用し、Aへの嫌がらせを行った行為に当たるものと認められ、Y社の就業規則55条2項、59条1号、63条4号、67条1項に反し、111条18号、19号の懲戒事由に該当する。

メールでCCを入れて叱責したことが指摘されています。

社内のハラスメント問題については顧問弁護士に相談の上、適切に対応しましょう。