退職勧奨23 精神障害発覚による退職勧奨の違法性等(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間お疲れさまでした。

今日は、精神障害発覚による退職勧奨の違法性等に関する裁判例を見ていきましょう。

中倉陸運事件(京都地裁令和5年3月9日・労判1297号78頁)

【事案の概要】

本件は、貨物自動車運送事業等を目的とするY社に、4トンウイング車乗務員として雇用され、令和2年8月1日から就労を開始したXが、同月4日に精神障害等級3級の認定を受けている旨の書類を提出したところ、即日解雇されたが、本件解雇は無効であるなどと主張して、Y社に対し、①労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、②同月6日から本判決確定の日までの未払賃金+遅延損害金の支払を求め、また、③障害者を差別した不当解雇、あるいは違法な退職勧奨を受けたとして、不法行為責任に基づき、慰謝料500万円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、80万円+遅延損害金を支払え。

その余の請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 Xは、以前にも、勤務していた会社を退職する際、退職届を提出したことが複数回あり、Y社において就労を開始するに当たっても、勤務していた食品会社を退職する際、同様に退職届を提出したというのである。そうすると、Xは、本件退職届を作成、提出した際にも、その意味するところを十分に理解していたというべきであるから、Xの本件退職届の作成、提出につき、心裡留保があるとか、これに対応する意思の欠缺があるということはできない。また、Xがいう動機の錯誤は、自身が令和2年8月4日に解雇されたと認識していたことを前提とするところ、Xが同日解雇されたと認識していたとは認められないから、その点で錯誤があるということもできない。

2 退職勧奨行為自体は、その具体的内容や態様、これに要した時間等からみて、執拗に迫ってXに退職の意思表示を余儀なくさせるような行為であったとまでいうことはできず、退職に関するXの自由な意思決定を阻害するものであったとは認め難い

3 Y社は、Xが精神障害等級3級との認定を受け、通院して服薬治療を受けていることのみをもって、その病状の具体的内容、程度は勿論、主治医や産業医等専門家の知見を得るなどして医学的見地からの業務遂行に与える影響の検討も何ら加えることなく、退職勧奨に及んだものといわざるを得ない
そうすると、Y社の上記退職勧奨行為は、Xの自由な意思決定を阻害したものとまで評価できないにしても、障害者であるXに対して適切な配慮を欠き、Xの人格的利益を損なうものであって、不法行為を構成するというべきである。そして、Y社の上記退職勧奨行為の内容のほか、本件記録に表れた諸事情を考慮すると、Xの精神的苦痛を慰謝するには80万円をもってするのが相当である。

退職勧奨自体は有効にもかかわらず、障害者に対する配慮を欠いていたという理由で慰謝料が認められています。

退職勧奨が退職強要に及ばない限り、単に「勧奨」しているにすぎないため、それに応じるか否かは労働者の自由です。それにもかかわらず、上記判例のポイント3の第1段落の理由から裁判所が慰謝料を認めたのは驚きました。

退職勧奨の際は、必ず事前に顧問弁護士に相談をすることをおすすめいたします。