Author Archives: 栗田 勇

本の紹介368 エリートの仕事は「小手先の技術」でできている。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
エリートの仕事は「小手先の技術」でできている。

またまた弁護士の山口先生の本です。

これで3冊目です。 勢いがあります。

今回のタイトルも、キャッチーでいいですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・妹は、私にこう言いました。「お姉ちゃん、『美人弁護士』って言われてるみたい。それは『美人な弁護士』という意味じゃないよ。『弁護士のわりに美人』という意味なんだからね。そこを、絶対に間違えないように」 うーん。そういえば・・・。私がそのときに思ったのは、『美人すぎる市議』とか『美人すぎるボクサー』とかはいても、『美人すぎるモデル』とか『美人すぎるキャビンアテンダント』はいない、ということです。」(205~206頁)

ここで、山口先生が言いたいのは、「自分を売り出す『市場』を正しく選択する」ということです。 確かに「美人すぎる市議」はいても「美人すぎるモデル」はいませんよね(笑)

自分の長所をどの市場でどのような切り口で売り出すか、というのはとても大切なことです。

同じような長所をもった人たちが集まる市場で、自分の長所を際立たせるのは、とても大変なことです。

山口先生が出している例は、とてもわかりやすいですよね。

美人がモデルの道を行くと、そこは熾烈な競争が待っています。

モデルという職業は、「美」を強く求められる仕事なので、美しいことが「当然」と扱われてしまうのです。

これに対し、美人が例えば弁護士の道を行くと、それは一つの特徴になります。

このように自分の利点をどの市場で売り出すかによって、その効果は全く異なってくるわけですね。

配転・出向・転籍20(東京測器研究所(仮処分)事件)

おはようございます。

今日は、旧組合書記長に対する転居を伴う配転命令に関する裁判例を見てみましょう。

東京測器研究所(仮処分)事件(東京地裁平成26年2月28日・労判1094号62頁)

【事案の概要】

本件は、昭和58年4月に債務者に入社し、入社とともに債務者の従業員を組織していた労働組合に加入した債権者が、平成25年11月1日付けで債務者の明石営業所勤務を命じる配転命令を受けたことについて、不当労働行為、協定違反等を理由に本件配転命令は無効であるとして、明石営業所において勤務する労働契約上の義務を負わないことの確認を求める権利を被保全債権として、同義務を負わないことを仮に定める仮処分を求める事案である。

【裁判所の判断】

XがY社に対し、Y社の明石営業所において勤務する労働契約上の義務を負わないことを仮に定める。

【判例のポイント】

1 明石営業所への転勤後は、XがこれまでJMIUY社支部において中心的な役割を果たしてきたのと同程度に、上記脱退決議の効力を争いJMIUY社支部を存続させるための実効的な活動を行うことは相当困難になるものと推認される。そして、JMIU脱退決議の無効及びJMIUY社支部の存続を公然と主張するのはY社のみであるから、XがJMIUY社支部存続のための実効的な活動を行うことが困難である以上、JMIUY社支部存続の可能性は極めて乏しくなるものと考えられる。
XがJMIU脱退決議の無効を主張することが不当な言いがかりに類する行為であるとは直ちに断じ得ないのであり、XがJMIUY社支部の活動を中心的に担ってきた立場でJMIU脱退決議の無効を主張しJMIUY社支部の存続のための活動を始めようとしていたところを、本件配転命令によって、明石営業所への転勤を余儀なくされ上記の活動を実効的に行うことが困難となる結果、JMIUY社支部存続の可能性が極めて乏しくなるものと考えられるのであるから、本件配転命令は、JMIUY社支部の存続の可能性を失わせる結果をもたらす点で、外形的にみて、JMIUY社支部の運営に対する支配介入に当たるものと評価し得る

2 明石営業所に技術職の従業員を配置する必要性自体は否定できないものの、Aの大口計測工事以外には、技術職の従業員の明石営業所への配置を緊急に要する業務が具体化している状況ではなく、Aの大口計測工事に関しては、2か月半程度で終了する業務であったことからすると、技術職の従業員を上記期間Aに常駐する形で出張させることでも賄うことは可能であったものと考えられるところであり、Xがただ一人公然とJMIU脱退決議の効力を争い、JMIUY社支部の存続のための活動を行おうとしていたまさにそのときに、時間的な猶予を与えない形で、あえてXを東京本社から引き離して明石営業所へ転勤させなければならないほど緊急の必要性があったとまでは認め難いというべきである

3 本件配転命令は、Y社が、少なくともJMIUY社支部の存続の可能性を失わせる結果になることを認識しつつこれを容認する意思の下で行ったJMIUY社支部に対する支配介入にあたると認められるから、労働組合法7条3号が禁じる支配介入に該当するというべきである。

4 以上のとおりであるから、その余の点について検討するまでもなく、本件配転命令は、不当労働行為に該当するため、違法であり、無効であると認められる。

基本的には、配転については、会社に広い裁量が認められています。

しかし、本件のように、従業員が組合員であり、かつ、重要なポストに就いている場合には、不当労働行為該当性にも配慮する必要が出てきます。

客観的にみて、組合の弱体化と判断されうる場合には、顧問弁護士に相談の上慎重な対応が求められます。

 

本の紹介367 成功する人たちの起業術 はじめの一歩を踏み出そう(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう。

今日は本の紹介です。
はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術

タイトルのとおり、起業をする際のポイントをまとめてくれている本です。

多くの起業家が、どういう点で失敗してしまうのかがよくわかります。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

仕事は、人間の心を映し出す鏡なんだよ。仕事が粗雑な人間は内面も粗雑だし、退屈そうに仕事をしている人間は、仕事に退屈しているのではなく、自分自身に退屈しているんだ。つまらない仕事でも、芸術家が手がければ芸術品に仕上げることができる。仕事というのは自分の心の状態を映し出すものなんだよ。・・・嫌な仕事なんて、そもそも存在しないんだ。仕事が嫌な人間がいるだけのことさ。・・・嫌な仕事をやらされることになれば、言い訳を探したがるからね。そういう人間は仕事のことを、自分を試すチャンスとは見ずに、自分に与えられた罰だと考えてしまうんだよ。」(212頁)」

「仕事は、人間の心を映し出す鏡」

確かにそうかもしれませんね。

自分に与えられた仕事を見て、自分の力を向上させるチャンスと捉える人と、やっかいな仕事だと捉える人がいます。

それは、考え方の習慣や精神状態が大きく影響しているように思います。

労災事件の裁判例からすれば、長時間労働等、労働の量がメンタルヘルスに強く関係していることがわかりますが、私は、それだけではないと思っています。

私は、メンタルヘルスには、「仕事に対する考え方」が大きく影響していると考えています。

何に対しても批判的、否定的な人は、ものごとを「チャンス」とは捉えず、「罰」だと考えるのでしょう。

できるだけ前向きに、肯定的にものごとを捉えることがいい流れを引き寄せるのだと信じています。

すべては、捉え方や解釈の習慣の問題だと思います。

労働災害78(海上自衛隊(たちかぜ)事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、先輩自衛官による暴行及び恐喝による自殺と予見可能性に関する裁判例を見てみましょう。

海上自衛隊(たちかぜ)事件(東京高裁平成26年4月23日・労経速2213号9頁)

【事案の概要】

本件は、海上自衛官として護衛艦たちかぜの乗員を務めていたXが平成16年10月27日に自殺したことにつき、①Xの自殺の原因は、Xの先輩自衛官であったDによる暴行及び恐喝であり、上司職員らにも安全配慮義務違反があったと主張して、Dに対しては民法709条に基づき、国に対しては国家賠償法1条1項又は2条1項に基づき、X及びその父母に生じた損害の賠償を求めるとともに、高裁において、②国がXの自殺に関係する調査資料を組織的に隠蔽した上、同資料に記載されていた事実関係を積極的に争う不当な応訴態度を取ったため、精神的苦痛を被ったとして、国家賠償法1条1項に基づき、国に対して慰謝料の支払請求を追加した事案である。

原審は、Dの暴行・恐喝行為及び上司職員らのDに対する指導監督義務違反とXの自殺との間に事実的因果関係を認めることができるが、D及び上司職員等においてXの自殺につき予見可能生があったとは認められないから、Xの死亡によって発生した損害については相当因果関係があるとは認められないとした。

【裁判所の判断】

損害として、以下の項目を認めた。

①逸失利益 約4380万円

②慰謝料 2000万円

③その他 550万円

④国の訴訟活動について 20万円

【判例のポイント】(高裁において追加された請求に限る)

1 ・・・そうすると、横須賀地方総監部監察官が本件アンケートを保管していながら、本件開示対象文書の特定の手続において、これを特定せず隠匿した行為は、違法であるというべきである。その結果、Aは、本件訴訟において、本件アンケートに記載された回答に基づく主張立証をする機会を奪われることになったものと認められる

2 国の指定代理人らは、本件訴訟の被告の立場にある国の代理人として訴訟を追行するものであって、国において保有しあるいは収集した資料のうちいかなるものを証拠として提出するかは、民事訴訟法上これを提出すべき義務を負う場合を除き、これを自由な裁量により判断することができるというべきであり、その保有する資料を証拠として提出しなかったとしても、それが訴訟上の信義則に反するとみるべき特段の事情がない限り、違法な証拠の隠匿があるということはできないと解するのが相当である
・・・したがって、国の指定代理人らにおいて、証拠の違法な隠匿があったとは認められない。

3 一般事故調査結果は、艦長ないしその上位機関である護衛艦隊司令官の掌握するたちかぜ乗員の服務事故につき、その調査の客観性を高めるために横須賀地方総監部に設置された事故調査委員会が調査した結果をまとめたものであって、国の指定代理人が本件訴訟における被告の立場において行う主張立証が、必ずそれに一致しなければならないものではない。そして、自殺の原因を「風俗通いによる多額の借財」と推論する国の主張については、たちかぜの乗員の供述やXの携帯電話の着信履歴などを根拠としており、その信用性の有無や推論の是非はともかく、主張の根拠を欠くものであったとまではいうことができない。その他本件訴訟における国の主張等をみても、指定代理人らにおいて、その主張が事実的、法律的根拠を欠くことを知りながら、又は容易にそのことを知り得たのに、あえてそれを行ったなど、違法な主張立証その他の訴訟活動があったと認めることはできない
したがって、国の訴訟活動について、国家賠償法ないし不法行為法上の違法があったとは認められない。

国の訴訟活動については違法性がないと判断されています。

もっとも、「乙43号証メモ」等を行政文書の情報開示請求の特定の手続において特定せず、隠匿したことが国会賠償法1条の違法であるとして、20万円の慰謝料が認容されています。

 

本の紹介366 ご縁とお役目(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
ご縁とお役目 ~臨床医が考える魂と肉体の磨き方~ (ワニブックスPLUS新書)

著者は、東京大学大学院医学系研究科 救急医学分野教授、医学部付属病院救急部・集中治療部部長のドクターです。

エビデンスに基づく職業に就きながら、非常にスピリチュアルな側面を尊重されています。

だからこそ、一般の方が読んでも受け入れやすいのかもしれません。

本のタイトルや「臨床医が考える魂と肉体の磨き方」というサブタイトルからもスピリチュアルな感じが伝わってきます。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

この世が学習の場であると認識した上で私たちは生まれて来ました。どんなに嫌なこと、どんなに辛いことがあっても、目の前の課題と向き合うことが人生最大の財産であり、あちらの世界に唯一持って還ることのできるものだという事実を、私たちは知っているのです。」(105頁)

「この世は学習の場」である。

「目の前の課題と向き合うことが人生最大の財産」である。

このように考えることができる人は、課題と向き合うこと=学習と捉えているのでしょう。

すべての出来事は何かを学ぶために起こっているのだと考えることができるとしたらどうでしょうか。

難しいことかもしれませんが、そう考えることができたら、生きる意味は変わってきませんか?

有期労働契約52(福原学園(九州女子短期大学)事件

おはようございます。

今日は、短大講師に対する体調不良等を理由とする雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

福原学園(九州女子短期大学)事件(福岡地裁小倉支部平成26年2月27日・労判1094号45頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのある労働契約を締結し、Y社の運営する短期大学において講師として勤務していたXが、Y社の行った雇止めは無効であると主張して、労働契約上の地位の確認及び未払賃金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 期間の定めのある労働契約は、期間の定めのない労働契約と実質的に異ならない状態になったとはいえない場合であっても、労働者において当該労働契約で定められた期間の満了時に当該労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由がある場合には、解雇権濫用法理が類推適用され、使用者による雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、当該契約の期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は、従前の労働契約が更新されたのと同様の関係となるものと解される。
これを本件についてみると、以下において検討するとおり、Xにおいては本件労働契約で定められた期間の満了時である平成24年3月31日当時、更新の実績が一度もなかったものの、Xにおいて本件労働契約が少なくとも3年間は継続して雇用され、その間に2回更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認めるのが相当である

2 Y社は、本件訴訟係属中である平成25年2月7日、更新されたとみなされた後の本件労働契約期間が満了する日である同年3月31日限りでの本件予備的雇止めを行った。本件予備的雇止めについては、改正後の労働契約法19条2号により、労働契約が更新されたものとみなされるかが問題となる
・・・本件雇止めについては、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないものとして、本件労働契約は新たな契約満了日を平成25年3月31日として更新されたのであるから、本件雇止めのみをもって直ちに労働契約法19条2号該当性が否定されることにはならないというべきである。
そして、契約期間の満了時における合理的期待の有無については、最初の有期労働契約の締結時から雇止めされた有期労働契約の満了時までの間におけるあらゆる事情を総合的に勘案すべきものと解されるところ、本件労働契約におけるXの雇用継続への合理的な期待を基礎付ける事情について変更はみられず、その他新たにこれを否定するような特段の事情も見当たらない。

3 次に、労働契約法19条が規定する更新の申込みは、要式行為ではなく、使用者による雇止めの意思表示に対して、労働者による何らかの反対の意思表示が使用者に伝わるものであれば足りると解される
本件においては、Xは、本件予備的雇止めの効果を争い、本件予備的雇止め後も本件訴訟を追行して遅滞なく異議を述べたといえる以上、本件予備的雇止めに対する反対の意思表示をして本件労働契約の更新の申込みをしたものと認めるのが相当である
そして、訴訟係属中にY社が争っていることのみをもって、有期労働契約が更新されたものとみなされるか否かの判断に影響するのは不当であるから、訴訟係属中になされた本件予備的雇止めについても合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないものというべきである。
したがって、本件労働契約は、更新されたものとみなされた後の平成25年3月31日の契約期間が満了した後も、労働契約法19条2号により、従前と同一の労働条件で再度更新されたものとみなされる。

労働契約法19条の規定に関する裁判所の判断です。 是非、参考にしてください。

特に判例のポイント3は、今後、労働者側としては有効に活用したい点ですね。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介365 圧倒的!伝えるチカラ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
圧倒的!伝えるチカラ―伝わらなければ選ばれない。選ばれるプレゼンの秘密

先日も紹介をしましたエクスペリエンスマーケティングの藤村さんの本です。

今回は、マーケティングの本ではなく、プレゼンのしかたについての本です。

めずらしい。

といっても、マーケティングもプレゼンもどちらも顧客に対し、いかに商品の価値を伝えるか、という点では目的は共通していますよね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

あなたが、世界をまったく変えてしまうような、素晴らしい思想を持っていても。あなたが、誰もが欲しがる素晴らしい商品を売っていたとしても。それを伝えなければ、それは存在しないのと同じことなんです。そうですよね。
多くの企業は商品を良くしたり、サービスの質をあげたりすることには、お金も時間もかけて考えるのに、伝えることはあまり考えていない。それで損をしている企業や、売れない商品がたくさんある。半分しか伝えられなかったら、半分の価値しか届けられないってことです。」(29頁)

そのとおりですね。

きっと「良い商品は、伝え方を工夫しなくても、勝手に伝わるでしょ」という思い込みがあるのではないでしょうか。

これだけモノが溢れているわけですから、価値をしっかり伝えなければ、なかなか選んでもらえません。

超一流のホテルやレストランが、自分たちのサービスの価値を顧客に伝えていないか、というとそんなことはないですよね。

伝え方はそれぞれですが、ちゃんと価値を伝えようとしています。

だから、商品それ自体の質をあげるだけではなく、伝え方の質も、それと同じくらいあげていく必要があるのだと思います。

伝わらなければ意味がないですからね

派遣労働19(U社ほか事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう。

今日は、派遣社員の引き抜き・派遣先との契約継続妨害を理由とする派遣会社からの元社員、同業会社への損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

U社ほか事件(東京地裁平成26年3月5日・労経速2212号3頁)

【事案の概要】

本件は、X社が、従業員であったC及びDに対し、在職中から、Y社と共謀して、X社の従業員の引き抜き等をしたとして、Y社に対しては、X社の雇用契約上の債権を侵害した等として不法行為に基づいて、C及びDに対しては、秘密保持義務、競業避止義務及び雇用契約上の誠実義務に違反したとして債務不履行ないし不法行為に基づいて、損害賠償と遅延損害金の支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社に対し、102万6672円の支払いを命じた。

Cに対し、102万6672円の支払いを命じた。

Dに対し、166万9941円の支払いを命じた。

【判例のポイント】

1 そもそも、在職中の従業員は、使用者に対し、誠実義務として、使用者の正当な利益を不当に侵害してはならないよう配慮する義務を負っており、具体的にいえば、使用者の営業上の秘密を保持すべき義務や使用者の利益に著しく反する競業行為を差し控える義務を一般的に負っている
そして、引き抜きが、単なる勧誘の範囲を超え、著しく背信的な方法で行われ、社会的相当性を逸脱しているといえる場合に初めて違法になると解される。

2 顧客の奪取が、社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法なものといえる場合に違法となると解される。ところで、本件では、問題となっている行為が、C及びDがX社在職中に行われており、もともと従業員が労働契約上の誠実義務を負っていることを踏まえれば、引き抜きや顧客の奪取が退職後に行われた場合に比して、より厳しく違法性の有無が判断されるべきと解する。

3 労働者は、職業選択の自由の一環として、退職し又は他社に転職する自由があり、企業は、労働者が自由な意思に基づいて退職ないし他社に転職することを認めなければならないし、これによって従前勤務していた企業に損失が生じたとしても、これを甘受しなければならないし、ことに、X社のように労働者派遣を業として行っている会社において、派遣労働者は労働条件が有期であったり、派遣先が決まらない間は待機中として有給休暇の消化をやむを得なくされるなど、正社員に比べるとその労働条件が不安定になっており、派遣労働者がより良い労働条件を求めて、転職することは当然の理である。
さらにいえば、X社のように労働者派遣を業としている会社において、派遣労働者の退職によって損失を生じる可能性がある場合には、当該派遣労働者の労働条件を改善して引き留めを図ったり、他の派遣労働者を適宜補充するなどの自助努力により損失を最小限にとどめることができるし、取引先の喪失についても、同様に新たな契約締結交渉等の努力を行うことができるところである。本件においては、X社が、かかる自助努力をどの程度行ったかは定かではないが、本来であれば自助努力によって回避可能な損失を漫然と被告らに負担させることは相当でない

4 以上の観点から、本件のEの引き抜き及び甲ハウスとの契約締結妨害についてみるに、引き抜きについては転職の勧誘にとどまるもので違法性がなく、X社と甲ハウスとの契約締結を妨害した点が問題になるにすぎないことや、EがY社から甲ハウスに派遣された当初の現場も3ヶ月程度で終了していることからすれば、Dが賠償すべき損害としては、3ヶ月分とみるのが相当である。

派遣会社は必読の裁判例です。

特に上記判例のポイント3の考え方は参考にしてください。

厳しい内容ですが、これが現実です。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。

本の紹介365 お店の売上を倍増したいならお金をかけずにアイデアで勝負する!(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
お店の売上を倍増したいならお金をかけずにアイデアで勝負する! ―販促ウエポン100

販促に関する本です。

複数のコンサルタントが、販促についての100個のアイデアを出しています。

販促初心者向けの本で、大変わかりやすいと思います。

ベタなネタが多いので、実行に移しやすいのではないでしょうか。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

当たり前のことですが、商売はうまくいっている時期と、うまくいかない時期があります。経営者やマネージャーは、うまくいかなくなるといろいろと変えたくなり、そこで問題が生じることが少なくありません。…しかし、変えること自体を否定しているのではありません。変えてもよいことと、変えてはいけないことがあるのです。また、うまくいっている場合でも、『飽きる』という心の動きも、くせものになることもあります。それは、まさに「『変えない』と『飽きる』の戦い」なのです。」(22頁)

変えてはいけないこととは何か。

この本によれば、それは「消費者のマインドに届けているメッセージの中で約束をしていること」だそうです。

つまり、顧客がこのお店、この会社に求め、期待する役割を放棄するような変更はしてはいけないということなのだと思います。

また、もう一つの視点として、うまくいっているにもかかわらず、経営者がその状態に飽きてしまい、今の状態を変えてしまう。

この「飽きる」という感情との戦いは、経営者なら誰もが感じたことのあるものだと思います。

いろんな分野に手を広げずに、1つのことをやり続けることは、この「飽きる」という感情に打ち勝たなければなりません。

限られた時間の中で、それほど多くのことはできないのです。

いろんなことをやってみたいという思いを抑えて、これだと思うものに注力することが大切なのだと思います。

解雇152(横河電機(SE・うつ病罹患)事件

おはようございます。

今日は、休職期間満了を理由とする退職扱いに対する損害賠償請求についての裁判例を見てみましょう。

横河電機(SE・うつ病罹患)事件(東京高裁平成25年11月27日・労判1091号42頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、上司であったAから、長時間の残業を強いられた上、Xの人格を否定するような非難、罵倒、叱責等を受けたことから、肉体的、精神的に疲労困ぱいし、鬱病等にり患して休職し、休職期間の満了を理由に退職を余儀なくされたと主張して、Aに対しては不法行為に基づき、Y社に対しては主位的にAの不法行為についての使用者責任、予備的に労働契約上の安全配慮義務違反等による債務不履行責任に基づき、損害賠償及び遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。

原審は、Xが鬱病等にり患したことについてAに過失があったとは認められず、Y社に安全配慮義務違反等があったとも認められないとして、Xの請求をいずれも棄却した

この原判決に対し、Xが控訴し、逸失利益及び治療費に係る損害の主張を追加して、上記請求を拡張するとともに、Xの休職は業務上の傷病によるものであるから休職期間の満了を理由にXを退職扱いすることは許されないとして、XがY社に対して労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める訴えを追加した。

【裁判所の判断】

Y社に対し、534万5641円の支払いを命じた。

その余の請求はいずれも棄却

【判例のポイント】

1 ・・・さらに、AがXの業務の成果について否定的な発言をしたこと、その他、AがXに対して強い口調で仕事上の注意や指示をしたことについては、Aの発言等は、Xの名誉を毀損する内容のものでもないのであって、Xがそれらに矛盾や不合理を感じることがあったとしても、業務上の指示・指導の範囲を逸脱したものということはできない
したがって、Aにおいて、Xに対する罵倒、誹謗中傷、責任転嫁、残業の強制、その他業務上の指示・指導の範囲を逸脱した違法な行為があったとは認められず、Aに対する不法行為に基づく損害賠償請求及びY社に対する使用者責任に基づく損害賠償請求は、いずれも理由がない。

2 Xは、Y社がXに対して復職当初からフルタイム勤務を求めたことにつき安全配慮義務違反があると主張するが、休職者が復職するに当たり、短時間勤務から徐々に勤務時間を延ばしていく方法も考えられるが、場合によっては職場復帰の当初から本来の勤務時間で就労するようにさせた方が良いこともあり、一概に短時間労働から始めて徐々にフルタイム勤務に移行させるべきであると断ずることができるものではない

3 Xの鬱病の症状が遷延化し、Xが長期間にわたり休職を継続したことについては、Xの個人の素質、ぜい弱性、生活の自己管理能力が少なからず寄与しているものとみるべきであり、鬱病の発症から寛解状態が4か月以上継続した平成18年10月末日までの症状に基づく損害については、全てY社の安全配慮義務違反と相当因果関係があると認められるが、その後、動揺傾向があるとされつつも寛解状態が更に1年間継続した平成19年10月末日までの損害については、50%の限度において上記相当因果関係が認められ、それ以降の損害については、上記相当因果関係は認められないというべきである

4 Xが過重な心理的負荷の掛かる業務に従事せず、鬱病を発症しなければ得られたであろう収入額は、想定される基本給に、想定される残業代として、平成17年1月から8月までの平均残業時間を考慮し、3割を加算して、さらに想定される賞与(1か月当たりで計算する。)を加えた額から、上記期間中にXが実際に受領した給与、賞与及び傷病手当金の額を控除して、算出するのが相当である。

5 Xの精神障害は、平成19年10月を過ぎた頃には上記業務に起因する心理的負荷により生じたものとみることはできなくなっており、Y社から雇用を解かれた平成21年1月30日の時点において、鬱病の発症から3年以上が経過してもなおその症状が全快せず、Y社で業務に従事することが困難であったと認められる。
そうすると、Xは、平成21年1月30日の時点において、一般社員就業規則35条(8)の「業務上の傷病者で傷病発生のときから3か年を経ても全快しないとき」に該当する事由が存在し、かつ、労働基準法19条1項所定の解雇制限事由は存在しないから、Y社による解雇は、上記就業規則の条項に基づくものとして有効であるというべきである。
したがって、Xは、Y社に対して労働契約上の権利を有する地位にあるとは認められない。

この裁判例は、非常に重要ですので、みなさん、参考にしてください。

リハビリ出社については、使用者の安全配慮義務として当然に行われるべきものとまではいえない、というのが裁判所の考え方です。

また、長期にわたり休職が続いている場合、会社としては、解雇制限との関係で難しい判断を迫られることになります。

東芝事件のような例もありますので。

完全な正解は、どこまでいってもありません。 後から正解だったのかがわかるのです。

休職命令を発するとき、休職期間中、復職の可否については、専門家に相談をしつつ、慎重に判断しましょう。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。