Author Archives: 栗田 勇

解雇45(セイビ事件)

おはようございます。

さて、今日は、執行役員に対する懲戒解雇に関する裁判例を見てみましょう。

セイビ事件(東京地裁平成23年1月21日・労判1023号22頁)

【事案の概要】

Y社は、建築物等の管理保全および建設業の請負等を目的とする会社である。

Xは、昭和53年、Y社に従業員として雇用された後、平成18年6月、執行役員・マネジメントサービス部長としなった。

平成22年1月、Y社の発行済株式の5%以上を有する株主が、Y社取締役会に臨時株主総会の開催を要請し、これを受けて一部株主等から社長らに対する辞任要求がなされた。さらに4月、社長や専務等の現取締役4名の解任と新取締役5名の専任を議題とする臨時株主総会の招集を請求する書面が提出され、そこには、新取締役として、現常務のほかXらの名前があげられていた。

その後、臨時株主総会が開催され、決議を行なったが、いずれも反対多数により否決された。

社長は、臨時株主総会終了後、Xらを呼び出し、Xらに対し「会社を騒がせた責任」をとって、退職するか否かを回答してもらいたいと話した。

Xらがこの要求を拒否したため、Y社は、Xらに対し、執行役員等を退任し、部長とする旨の人事発令を行った。

平成22年5月、Y社懲戒委員会が開催され、Xらの懲戒処分が検討され、結果、X1らについて懲戒解雇相当との結論に至った。

Y社は、懲戒委員会の諮問結果を受け、Xらを懲戒解雇した。

Xらは、本件懲戒解雇は、違法・無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

懲戒解雇は無効

【判例のポイント】

1 使用者が労働者に対する懲戒処分を検討するに当たっては、特段の事情がない限り、その前提となる事実関係を使用者として把握する必要があるというべきである。そして、本件就業規則71条が、「懲戒の審査及び決定の手続」を懲戒委員会にかけるべきこと、懲戒処分に当たって、本人に十分な弁明の機会を与え、懲戒の理由を明らかにすべきことを規定しているのも、Y社として、事実関係を把握して懲戒処分の要否・内容を適切に判断するためのものであると解される

2 特に、懲戒解雇は、懲戒処分の最も重いものであるから、使用者は、懲戒解雇をするに当たっては、特段の事情がない限り、従業員の行為及び関連する事情を具体的に把握すべきであり、当該行為が就業規則の定める懲戒解雇事由に該当するのか(懲戒解雇の合理性)、当該行為の性質・態様その他の事情に照らして、懲戒解雇以外の懲戒処分を相当する事情がないか(懲戒解雇の相当性の観点)といった検討をすべきである

3 現経営陣に対する辞任要求等を契機としてなされた懲戒解雇処分につき、Y社の懲戒委員会はXらの行為を具体的に把握した上で当該行為の懲戒事由への該当性、懲戒処分の要否・内容を審議したわけではなく、就業規則所定の適正手続の趣旨に実質的に反し、懲戒解雇事由としての本件懲戒付議事項の存在ないし懲戒解雇事由該当性を認めるに足りる疎明もなく、社会通念上相当なものとは認められない

4 本件において、(賃金仮払いとは別に)Xらのついて、労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定めるべき保全の必要性があることを疎明するに足りる主張も疎明資料もない

本件は、仮処分事案です。

懲戒解雇という最も重い処分であるにもかかわらず、手続が雑であったということで、無効と判断されています。

それにしても、保全の必要性を認めてもらうのは大変ですね。

上記判例のポイントでは触れませんでしたが、賃金仮払いについても、そんなに簡単には認めてもらえません。

預貯金が結構ある場合には、「債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするとき」(民事保全法23条2項)という要件をみたさないのです。

解雇事案で、仮処分という方法を選択する際は、このあたりも考えなければいけません。

労働審判、いきなり訴訟という方法も視野にいれる必要があります。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

解雇44(S石油(視力障害者解雇)事件)

おはようございます。

さて、今日は、健康問題と解雇に関する裁判例を見てみましょう。

S石油(視力障害者解雇)事件(札幌高裁平成18年5月11日・労判938号68頁)

【事案の概要】

Y社は、ガソリンスタンドの経営、土砂・火山灰等の採取及び販売等を目的とする会社である。

Xは、大型特殊免許を有しており、平成8年6月、Y社に雇用され、重機を運転して、土砂、火山灰等の採取、運搬の業務に従事していた。

Xは、幼少期に左目を負傷しており、その視力は、右眼が1.2、左眼0.03(矯正不能)である。

Y社は、平成16年2月、Xに対し、同年3月末をもって解雇するとの解雇通知書を交付して、Xを普通解雇する旨意思表示した。

解雇通知書には、解雇理由として、「近年視力の減退等に伴い車両の運転に支障が有り、当社業務に不適格でありますので」と記載されていた。

Xは、本件解雇は無効であると主張して争った。

【裁判所の判断】

解雇無効

【判例のポイント】

1 Xは、Y社の採用面接を受けた際、健康状態の欄に「良好」と記載された履歴書を提出し、採用面接を担当した専務に対して視力障害があることを積極的には告げなかったものと認められるものの、履歴書の健康状態の欄には、総合的な健康状態の善し悪しや労働能力に影響し得る持病がある場合にはこれを記載するのが通常というべきところ、Xの視力障害は、総合的な健康状態の善し悪しには直接には関係せず、また持病とも直ちにはいい難いものである上、Xの視力障害が具体的に重機運転手としての不適格性をもたらすとは認められないことにも照らすと、Xが視力障害のあることを告げずにY社に雇用されたことが就業規則61条(重要な経歴をいつわり、その他不正な方法を用いて任用されたことが判明したとき)の懲戒解雇事由及び同54条4号の普通解雇事由に該当するということまではできない

2 Xは、専ら、重機の運転業務に従事していたのであるが、・・・このような重機を運転することは、それ自体、通常の車両の運転に比して、極めて高度の危険性を内包しているといえ、Xの視力障害が、かかる危険性を助長する要因となり得ることは否定できない。しかし、他方、Xは、Y社での採用面接に当たり、実技試験として、・・・その技能に問題がないと判断されて雇用されたこと、Xの保有する大型特殊免許は、平成16年2月に更新されていることが認められる。
これらからすると、Xに視力障害があることをもって、直ちに、Y社が重機の運転業務に不適格であるとまでは認められない。

3 Xの視力障害は、客観的にはXの重機運転手としての適格性を疑わせる程度ではないものの、重機運転に危険性を孕ませる要因となり得ることは否定できないのであって、そのことに照らすと、視力障害によるXの業務不適格性を解雇事由の一つとしてなされた本件解雇は、権利を濫用したものとして無効ではあるものの、事業者の判断としては強ち無理からぬものがないとはいえず、これが、Y社によってXに対する不法行為を構成するような故意又は過失をもってなされたとまではいえないし、また、弁論の全趣旨によって明らかなY社の応訴態度等に違法な点があるともいえない
したがって、不法行為に基づく損害賠償を求めるXの請求は、理由がないものといわなければならない。 

結論は、妥当であると考えます。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

解雇43(セコム損害保険事件)

おはようございます。

さて、今日は、従業員の礼儀・協調性の欠如と解雇に関する裁判例を見てみましょう。

セコム損害保険事件(東京地裁平成19年9月14日・労判947号35頁)

【事案の概要】

Y社は、損害保険業を営む会社である。

Xは、平成17年4月、Y社との間で期間の定めのない雇用契約を締結した。

Y社は、平成18年4月、Xに対し、即日解雇(懲戒解雇)するとの意思表示をした。

解雇通知書によれば、解雇事由は、「礼儀と協調性に欠ける言動・態度により職場の秩序が乱れ、同職場の他の職員に甚大なる悪影響を及ぼしたこと」「良好な人間関係を回復することが回復不能な状態に陥っていること」「再三の注意を行ってきたが改善されないこと」の3点である。

Xは、本件懲戒解雇は、解雇事由がなく、無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

解雇は有効

【判例のポイント】

1  Xの職場における言動は、会社という組織の職制における調和を無視した態度と周囲の人間関係への配慮に著しく欠ける者である。そして、Xがこのような態度・言辞を入社直後からあからさまにしていることをも併せ考えると、
、X自身に会社の組織・体制 の一員として円滑かつ柔軟に適応していこうとする考えがないがしろにされていることが推認される。換言すれば、このようなXの言動は、自分の考え方及びそれに基づく物言いが正しければそれは上司たる職制あるいは同僚職員さらには会社そのものに対してもその考えに従って周囲が改めるべき筋合いのものであるという思考様式に基づいているものと思われる。

2 そのため、ことごとく会社の周囲の人間からの反発を招いている。しかも、そのような周囲の反応はXの入社後間もなく示されていて、X自身もそのこと自体には気がついているにもかかわらず、上記のような自己の信念なり考え方にXは固執して、自己の考えなり立場を周囲の人間に対して一方的にまくし立てて周囲の人間の指導・助言を受け入れたり従う姿勢に欠けるところが顕著である。

3 上記のようなXの問題行動・言辞の入社当初からの繰り返し、それに対するY社職制からの指導・警告及び業務指示にもかかわらずXの職制・会社批判あるいは職場の周囲の人間との軋轢状況を招く勤務態度からすると、X・Y社間における労働契約という信頼関係は採用当初から成り立っておらず、少なくとも平成18年3月末時点ではもはや回復困難な程度に破壊されているものと見るのが相当である。
それゆえ、Y社によるXに対する本件解雇は合理的かつ相当なものとして有効であり、解雇権を濫用したことにはならないものというべきである

4 Y社は、当初懲戒解雇と通告しておきながらその後普通解雇であると主張しているところには、処分の性格の就業規則に照らしたあいまいさが残るものの、本件解雇の趣旨は、懲戒解雇の意思表示の中には普通解雇をも包含するものと解釈することも可能であり、本件解雇が懲戒解雇ではなく普通解雇として何等効力を持ちえないものとまではいうことができない

5 懲戒解雇としては就業規則に明示されたものでなければ原則として当該規則に則った処分をすることができないものというべきところ、普通解雇は通常の民事契約上の契約解除事由の一つとして位置づけられ、就業規則に逐次その事由が限定列挙されていなければ行使できないものではない

このケースでは、Y社は、当初、懲戒解雇としていたのを、途中から普通解雇に変更しています。

このケースで、懲戒解雇を維持した場合、結果はどうなったのでしょうか?

通常、本件と同様のケースの場合、会社としては普通解雇を選択するのが無難です。

それにしても、X・Y社間の信頼関係は採用当初から成り立っていないというのは、すごいですね。

採用時に判断できなかったことを考えると、採用の難しさを考えさせられます。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

解雇42(京都たつた舞台事件)

おはようございます。

さて、今日は、業務能率不良を理由とする解雇に関する裁判例を見てみましょう。

京都たつた舞台事件(大阪高判平成18年11月22日・労判930号92頁)

【事案の概要】

Y社は、演劇に使用する舞台装置(大道具、小道具)の製作、施工などを業務とする会社である。

Xは、平成14年5月、Y社との間で期間定めのない雇用契約を締結した。

Y社は、平成15年6月、Xに対し、再三の注意にもかかわらず、業務能率が著しく不良であることを理由に、解雇予告をした。

なお、Y社就業規則43条には、解雇事由として、「勤務成績又は業務能率等が著しく不良で、従業員としてふさわしくないと認められたとき」と規定されている。

Xは、本件解雇は解雇権の濫用にあたり、無効であると主張し争った。 




【裁判所の判断】

解雇は有効

【判例のポイント】

1 Xの行為は、舞台稽古中の出来事ではあったが、Xは、何度も指示されても、演者との間が合わないままであり、きっかけ(合図)を出してもらっても、うまく障子を開閉することができなかったものであるから、演者と裏方との緊密な共同作業の中で、他の職人であれば取ることができるようになるタイミングを、最後までつかめなかったものと認められる。舞台芸術では、演者と裏方とが、間あるいはタイミングを合わせることを必要不可欠な要素とするものであるが、Xには、この裏方に必要な演者と一体となって作業するために必要な時間的感覚が欠けているために、上記の都おどりの件が生じたものと認められる。
そして、Xの上記行為の結果、舞台の進行をすべて止めてしまうような事態を引き起こしたり、さらには、主催者らからXを担当から替えるよう求められる事態に至っているのであるから、Xの上記行為は、「業務能率が著しく不良である」場合に当たることは明白である。

2 Xの各行為は、いずれも「業務能率等が著しく不良である」場合に当たるか、それをうかがわせる事実ということができるところ、これらの事実を総合して勘案すると、Xは、他の従業員と協調して作業するという特殊性があるY社での勤務について適合せず、しかもそれはX本人の素質によるものが多いものと認められるから、。Xは、就業規則43条1項が規定する「業務能率等が著しく不良である」場合に該当し、それを理由とするY社のXに対する本件解雇には解雇権の濫用はなく、正当というべきである。

3 なお、Xは、Y社に入社した当初から本件解雇がなされるまでの間、遅刻や欠勤などを一切しなかった旨主張し、その事実は認められるが、そのことを考慮しても上記判断を左右するには至らない。 

成績不良の従業員の解雇については、通常、裁判所は厳しい判決を出します。

しかし、本件では、解雇は有効であると判断されました。

ポイントは、Xの業務能率不良が与える影響の大きさ、顧客からのクレームの存在、他の従業員との協調性が重要であるという業務内容の特殊性、業務能率不良の原因がX本人の素質によること、などです。

この裁判例をどこまで一般化すべきか、悩ましいところです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為14(函館厚生院事件)

おはようございます。

今日は、終日、事務所で仕事をする予定です。 途中、接見に行ってきます。

今日も一日がんばります!!

さて、組合員参加型団体交渉(大衆交渉)の拒否と不当労働行為に関する裁判例を見てみましょう。

函館厚生院事件(東京地裁平成20年3月26日・労判969号77頁)

【事案の概要】

Y社は、社会福祉法人であり、函館中央病院を設置・運営している。

X組合は、Y社の従業員によって結成され、組合員数は605名である。

X組合は、平成16年3月、5月、7月、北海道地方労働委員会に対し、(1)X組合が、団体交渉手続の変更、労働協約の解約、就業規則の変更について団体交渉を申し入れたにもかかわらず、Y社がこれを拒否したこと、(2)Y社が、上記団体交渉に応じないまま、労働協約を解約し、就業規則を変更したこと、(3)Y社が、平成16年1月の労使協議会において、X組合に対し、労使協議会の設置目的を逸脱した対応をしたこと、(4)Y社が、X組合に対し、春闘時の組合旗掲揚及び腕章の着用等を許可しなかったこと、(5)X組合が、平成16年度春闘要求について団体交渉を申し入れたにもかかわらず、Y社がこれを拒否したこと、(6)Y社が、X組合に対し、定期昇給等を求める署名活動に抗議し、その中止を求めたこと、がそれぞれ不当労働行為に当たるとして、救済を申し立てた。

道労委及び中労委は、いずれも、一部について不当労働行為にあたると判断したため、Y社は、行政訴訟を提起した。

【裁判所の判断】

請求棄却(不当労働行為にあたる)

【判例のポイント】

1 団体交渉とは、労働組合と使用者又は使用者団体が自ら選出した代表者(交渉担当者)を通じて労働協約の締結を目的として行う統一的交渉のことであるから、使用者は、労働組合から交渉担当者以外に多数の組合員が参加する方式の団体交渉を申し入れられた場合には、原則として、交渉体制が労働組合に整っていないことを理由として、交渉体制が整うまでの間団体交渉を拒否することができるというべきである。

2 しかし、団体交渉が労使間の話合いであるという性質上、団体交渉においては、労使間の自由な意思(私的自治)ができる限り尊重されるべきであるから、交渉の日時、場所、出席者等の団体交渉手続について、労働協約に定めがある場合はもちろん、そうでなくても労使間において労使慣行が成立している場合には、当該労使慣行は労使間の一種の自主的ルールとして尊重されるべきであり、労使双方は、労働協約又は労使慣行に基づく団体交渉手続に従って団体交渉を行わなければならないというべきである

3 組合員参加型団体交渉は、相当長期間にわたって反復継続して行われたものとして、労使慣行となっていたというべきであるから、Y社は、参加人から労働条件等の義務的団体交渉事項について組合員参加型団体交渉の申入れがあった場合には、正当な理由がない限り、これに応じなければならないというべきである

4 Y社は、平成15年12月、参加人から組合員参加型団体交渉手続の変更等について組合員参加型団体交渉の申入れを受けたにもかかわらず、これに応じない旨回答し、その後も組合員参加型団体交渉に応じなかったのであるから、かかるY社の対応は、労組法7条2号の団体交渉拒否に当たるというべきである。

原則論について、上記判例のポイント1で述べられています。

原則論は、菅野先生の「労働法」(第9版)559頁が採用されています。

しかし、本件では、労使慣行により、例外が肯定された事案です。

本件では、労使慣行があったと認定されていますが、判決理由を読む限り、労使慣行が存在したかどうかは微妙なところです。

いろんな方法で団体交渉をしており、必ずしも大衆交渉ばかりであったとはいえません。

会社側の教訓としては、最初から適切な対応をしておくべきであり、合理的理由のない譲歩は慎むべきであるということです。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為13(日産自動車事件)

おはようございます。

さて、今日は、使用者の中立保持義務に関する裁判例を見てみましょう。

日産自動車事件(最高裁昭和60年4月23日・労判450号23頁)

【事案の概要】

Y社は、乗用車等の製造を業とする会社である。

Y社は、従来から工場の製造部門で昼夜2交替勤務体制および計画残業と称する恒常的な時間外・休日勤務体制をとっていた。

昭和41年8月にA会社を合併したY社は、翌年2月より上記両体制を旧Aの工場の製造部門にも導入した。

合併後のXには従業員の大多数を組織するX組合と、ごく少数の従業員を組織するのみとなったZ組合とが併存していたところ、Z組合は、かねてより深夜勤務に反対しており、Y社は上記両体制の導入に際し、X組合とのみ協議を行い、Z組合には何らの申入れ等を行わなかった。

そして、Y社は、X組合の組合員にのみ交代勤務・残業を命じ、Z組合の組合員については昼間勤務にのみ従事させ、残業を一切命じなかった。

Z組合は、Z組合の組合員に残業を命じないことはX組合の組合員と差別する不当労働行為であると主張した。

【裁判所の判断】

不当労働行為が成立する。

【事案の概要】

1 労組法のもとにおいて、同一企業内に複数の労働組合が併存する場合には、各組合は、その組織人員の多少にかかわらず、それぞれ全く独自に使用者との間に労働条件等について団体交渉を行い、その自由な意思決定に基づき労働協約を締結し、あるいはその締結を拒否する権利を有するのであり、使用者と一方の組合との間では一定の労働条件の下残業に服する旨の協約が締結されたが、他方の組合との間では当該組合が上記労働条件に反対して協約締結に至らず、両組合の組合員間で残業に関して取扱いに差異が生じても、それは使用者と労働組合との間の自由な取引の場において各組合が異なる方針ないし状況判断に基づいて選択した結果が異なるにすぎず、一般的、抽象的には、不当労働行為の問題は生じない

2 しかし、団体交渉の結果が組合の自由な意思決定に基づく選択によるものといいうる状況の存在が前提であり、この団体交渉における組合の自由な意思決定を実質的に担保するために、労組法は使用者に対し、労働組合の団結力に不当な影響を及ぼすような妨害行為を禁止している。このように、併存する各組合はそれぞれ独自の存在意義を認められ、固有の団体交渉権及び労働協約締結権を保障されており、その当然の帰結として、使用者は、いずれの組合との関係においても誠実に団体交渉を行うべきことが義務づけられ、また、単に団体交渉の場面に限らず、すべての場面で使用者は各組合に対し、中立的態度を保持し、その団結権を平等に承認、尊重すべきものであり、各組合の性格、傾向や従来の運動路線のいかんによって差別的な取扱いをすることは許されない。

3 複数組合併存下においては、使用者に各組合との対応に関して平等取扱い、中立義務が課せられているとしても、各組合の組織力、交渉力に応じた合理的、合目的的な対応をすることが右義務に反するものとみなされるべきではない。

4 しかし、団体交渉の場面においてみるならば、合理的、合目的的な取引活動とみられうべき使用者の態度であっても、当該交渉事項については既に当該組合に対する団結権の否認ないし同組合に対する嫌悪の意図が決定的動機となって行われた行為であり、当該団体交渉がそのような既成事実を維持するために形式的に行われているものと認められる特段の事情がある場合には、右団体交渉の結果としてとられている使用者の行為についても労組法7条3号の不当労働行為が成立する

5 本件では、上記特段の事情が認められ、不当労働行為が成立するとした原審の判断は是認できる。

複数組合併存下における使用者の中立保持義務に関する最高裁判例です。

上記判例のポイント4の「当該団体交渉がそのような既成事実を維持するために形式的に行われているものと認められる特段の事情」があると認定されないように気をつけなければいけません。

会社としては、中立かつ誠実に各組合と交渉をすることが求められています。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為12(田中酸素事件)

おはようございます。

さて、今日は、配転・出勤停止処分と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

田中酸素事件(中労委平成23年1月19日・労判1022号87号)

【事案の概要】

Y社は、従業員役60名をもって、高圧ガス製造販売および建設機材のリース販売等を行っている。

X組合の執行委員長Aは、平成8年7月、Y社に入社し、平成13年8月から本社のリース部門の業務に従事してきた。

平成20年12月、Y社は、Aに対し、Y社会長に対する暴言等職場の秩序を乱したこと、上長の注意、指示、命令に従わないことなどを理由に6日間の出勤停止処分に付した。

平成21年1月、Y社はAに対し、小野田営業所へ配転する旨命じた。小野田営業所は、本社から車で10分程度の距離にある。

配転後のAは、主として足場材等洗浄作業に従事している。

Aは、本件出勤停止処分と配転は、不当労働行為にあたるとして争った。

【労働委員会の判断】

出勤停止処分・配転ともに不当労働行為にあたる。

【命令のポイント】

1 Y社は、本件リース部門が配達業務等に人手を要しない状態にあったとまではいえず、また、Aの業務遂行能力は若干の指導、補助等を補っても通常の業務遂行に耐えない程度にまで失われ又は欠落していたとはいえないにもかかわらず、Aを敢えて本社リース部門に復帰させず、本件配転により、Aを更なる人手を要する状態にあったとはいえない小野田営業所に配転したということができる

2 そうすると、本件リース部門が業務を縮小したこと、Aが長期間離職していたことを考慮しても、本件配転の合理性には疑問が残るといわなければならない

3 本件配転の合理性に疑問が残ることに加え、Aは、X組合の執行委員長であること、X組合は、結成以来ほぼ恒常的にY社と対立、緊張関係にあったこと、Y社が、第1次解雇の後もAを再度解雇し、第2次解雇が無効であることを前提とする判決が確定するや、Aの弁明等を聴取せずに本件処分を行い、同様にAの意向等を事前に聴取しないで本件配転を行ったことが認められる。

4 これらの事情に照らすと、Y社は、X組合の執行委員長であるA及び同人ら組合活動を嫌悪し、同人を本社から排除し、精神的ないし職業上の不利益を与えるとともに、A及び組合の会社及び他の従業員に対する影響力を減殺する意図をもって本件配転に及んだと認めるのが相当である。
以上検討したところによれば、Y社は、A及び同人らの組合活動を嫌悪し、・・・本件配転を行ったと認められるから、本件配転は、労組法7条1号の不当労働行為に当たる

この命令の内容を見てもわかるとおり、結局、不当労働行為に該当するか否かについては、特別な判断基準があるわけではないのです。

配転が合理的理由に基づいていないといえ、その当事者が組合員であると、不当労働行為に該当する可能性が出てくるわけです。

まして、今回、Aは、X組合の執行委員長です。

会社としては、やり方を考えないと、このような結果になってしまいます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

有期労働契約20(エフプロダクト事件)

おはようございます。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、継続雇用制度による再雇用と雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

エフプロダクト事件(京都地裁平成22年11月26日・労判1022号35頁)

【事案の概要】

Y社は、百貨店を主要取引先としてマネキンの貸出しや百貨店における内装展示等を主力業務とするA社の子会社として、マネキンの製造・メンテナンス、内装展示のための陳列器具の商品管理および物流業務等を業とする会社である。

Xは、Y社の西営業所において、商品管理業務、マネキンメンテナンスとそれに付随する業務を担当し、労働組合の委員長をしていた。

Y社は、平成20年2月、再雇用制度に関する就業規則を制定した。

Xは、平成20年6月、60歳の誕生日をもって、Y社を退職し、翌日付で、平成21年6月を再雇用期限として再雇用された。

その際に作成された契約書には、「業務量の減少等により契約の必要がなくなったとき」や「会社の経営の都合で人員削減の必要上やむを得ないとき」には、契約を更新せず、契約の終了とする旨が記載されていた。

Y社は、平成21年3月、Xに対し、「業績不振のため」を理由として、同年6月をもってXとの雇用契約を期間満了により終了させる旨の雇用契約満了予告通知をした。

Xは、本件雇止めは無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

【判例のポイント】

1 Y社は、就業規則41条4項が「再雇用に関する労働条件等については、個別に定める労働契約(労働条件通知書)によるものとする。」とし、本件再雇用の契約書13条で会社の経営上の理由により契約更新が行われない場合を規程していることから、Xが主張するような定年後の継続雇用に対する合理的期待が生じる余地はない旨主張する。

2 しかし、就業規則41条1項、4項を素直に読むと、4項のいう「労働条件等」とは、賃金や労働時間等、雇用の継続を前提とした労働条件等を意味するわけではないと解される。したがって、上記契約書13条の規定は、就業規則に違反し、無効である(労働契約法12条)。

3 就業規則で、再雇用に関し、一定の基準を満たす者については「再雇用する。」と明記され、期間は1年毎ではあるが同じ基準により反復更新するとされ、その後締結された本件協定でも、就業規則の内容が踏襲されている。そして、現にXは上記再雇用の基準を満たす者として再雇用されていたのであるから、64歳に達するまで雇用が継続されるとの合理的期待があったものということができる。

4 ・・・本件再雇用契約の実質は、期間の定めのない雇用契約に類似するものであって、このような雇用契約を使用者が有効に終了させるためには、解雇事由に該当することのほかに、それが解雇権の濫用に当たらないことが必要であると解される。したがって、本件雇止めには、解雇権濫用法理の類推適用があるとするのが相当である。

5 本件雇止めが整理解雇の要件を満たすかどうかを検討する必要があるところ、整理解雇については、人員整理の必要性があったか、解雇を回避する努力がなされたか、被解雇者の選定基準に合理性があるか、労働者や労働組合に対する説明・協議が誠実になされたかという点を総合的に考慮して判断するのが相当である。

6 ・・・昨今の百貨店各店の業績からすると、Xを雇止めにした平成21年6月時点において、Y社における今後の売上高の上昇が期待できる見込みに乏しく、人員を削減すべき必要性を認めることができる。

7 ・・・平成21年4月には、親会社に移籍する予定とはいえ新規に大学卒を採用している。そして、Y社において一時帰休を実施したのは平成21年7月、希望退職を募集したのは同年12月であって、こうした経緯からすると、Y社において、本件雇止め以前にそれを回避すべき努力義務を尽くしたということはできない

8 以上の検討からすると、本件雇止めについて、整理解雇の要件を満たしていると認めることはできず、Y社の業績不振を理由とする本件雇止めは、解雇権の濫用に当たり無効である。

本件は、雇止めが整理解雇として行われた事案です。

このような場合、雇止めであっても、整理解雇の要件を満たしていなければ、無効となります。

解雇回避努力について、厳しく判断されますので、新規採用等の矛盾した行動はやめましょう。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

不当労働行為11(島田理化工業事件)

おはようございます。

さて、今日は、誠実交渉義務と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

島田理化工業事件(静岡県労委平成23年1月27日・労判1022号86頁)

【事案の概要】

Y社は、東京都内に本社および東京製作所を、静岡県内に島田製作所を、福岡県等に営業拠点を置き、電気機器の製造販売を行っている。

平成21年4月、Y社は、X組合に対して、島田製作所(従業員数約200名)を閉鎖し、同製作所で行っていた洗浄装置事業を終息させ、高周波応用機器事業を東京製作所に集約し、180名の希望退職を募集する旨の経営再建プランを説明した。

Y社と支部は、経営再建プランに関して同年8月までに8回の団交のほか事務折衝を行った。その間の6月、Y社は、支部に対して「経営再建プランにおける人員関連施策内容」と題し、再就職あっせん、希望退職、高周波事業の東京地区移転に伴う配転、個別面談について説明する文書を送付した。

また、7月、Y社は、支部に対して高周波事業の東京地区への移転計画、再就職のあっせん及び希望退職者のスケジュールを説明した。

8月の団交において、Y社は、議論は平行線でこれ以上の交渉の進展が困難であるとして、経営マターの協議を打ち切りたい、希望退職募集について労使の合意は必要ないと述べた。

Y社は、7月に説明したとおり、10月に希望退職を募集した。

X組合は、団交におけるY社の対応が誠実交渉義務に違反すると主張し争った。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にはあたらない

【命令のポイント】

1 島田製作所の閉鎖に関する事項等並びに人員関連施策としての希望退職の募集に関する事項及び高周波事業従事者の東京地区への転任に関する事項のうち、島田製作所の閉鎖に関する事項等はY社の事業の廃止・移管という経営・生産に関する事項であり、そこから生じる労働条件問題の交渉の中で議論されるべきことはあっても、それ自体としては義務的団交事項に当たるということはできない。

2 しかし、経営再建プランの実施に伴う希望退職の募集は、労働者の雇用そのものにかかわることであり、応募する労働者にとっては退職金などの労働条件を含むものであり、また、応募しない労働者にとってもその労働条件に影響を及ぼすことであるので義務的団交事項である。また、高周波事業従事者の東京地区への転任に関する事項は、高周波業務部門全体の東京地区への異動であり、集団的な職場の変更であるので、義務的団交事項である。

 希望退職募集に関しては、経営再建プラン発表後、募集までに、6回の団体交渉のほか事務折衝も行われ、その間に、Y社は、資料を提示して希望退職募集に至った経営状況を説明している。

4 経営再建プランに係る島田製作所の閉鎖に関する事項等自体は、事前協議事項や義務的団交事項とは認められず、同プランに係る人員関連施設としての希望退職の募集に関する事項及び講習は事業従事者の東京地区への転任に関する事項については、Y社は誠実に団体交渉を行っていたと認められることから、不当労働行為には該当しない

地元静岡の事件です。

同命令では、労使間の事前協議中に希望退職を募集したことは、不当労働行為には当たらないと判断されています。

本件では、Y社は、誠実交渉義務を尽くしているといえ、結論は、妥当であると思います。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

不当労働行為10(ヤンマー事件)

おはようございます。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、団交拒否と不当労働行為に関する裁判例を見てみましょう。

ヤンマー事件(中労委平成22年11月10日・労判1016号94頁)

【事案の概要】

Y社は、平成20年8月、工場で就労しいていた派遣労働者に対し、希望者を「期間従業員」として直接雇用すると説明し、具体的労働条件および入社手続に関する資料を配付した。

Y社とX組合は、直接雇用に関する団交を開催し、入社手続書類の1つである誓約書問題等を話し合った。

X組合は、期間従業員就業規則(案)および誓約書等を協議事項とする本件団交申入れを行ったが、Y社は、就業規則については説明する用意がある旨および団交は前回の団交で説明回答しているので応じられないと回答した。

X組合の組合員全員が労働条件契約書とともに誓約書をY社に提出し、Y社は、同人らを直接雇用した。

X組合は、就業規則および誓約書等を協議事項とする団交を申し入れ、団交が開催された。

その後、Y社は、3回、団交に応じている。

X組合は、Y社が2回目の団交を拒否したことは不当労働行為にあたると主張し、争った。

【労働委員会の判断】

2回目の団交を拒否したことは不当労働行為にあたるが、その後の事情変更により救済利益は失われた。

【命令のポイント】

1 労組法7条は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進するために、労働者が自主的に労働組合を組織し、使用者と労働者の関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること、その他の団体行動を行うことを助成しようとする労組法の理念に反する使用者の一定の行為を禁止するものである。
したがって、同条にいう「使用者」とは、同法が上記のような助成しようとする団体交渉を中心とした集団的労使関係の一方当事者としての使用者を意味するものであって、雇用契約上の雇用主が基本的にこれに該当するものの、必ずしもこの者だけに限定されるものではない。雇用主以外の者であっても、当該労働者との間に、近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存する者は雇用主と同視できる関係にあり、同条にいう「使用者」に該当すると解するのが相当である

2 そうすると、本件団交申入れが行われた平成20年9月の時点においては、会社は、組合の組合員との関係において、近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存する者として、雇用主と同視できる関係にあり、労組法7条の「使用者」に該当するというべきである。

3 確かに、Y社は、本件団交を除けば、組合から求められた団体交渉には全てそれなりに誠実に応じており、また、本件団交申入れに対しても、それなりの誠実性が認められる回答をしている。これらの事実関係を併せ考えると、Y社が本件団交申入れに応じなかったことに正当な理由がなかったと断定するには、ためらいを覚えるが、Y社が本件団交申入れに応じなかったことに正当な理由がなかったといわざるを得ない

4 Y社が本件団交申入れに応じなかったことに正当な理由がないといわざるを得ず労組法7条2号の不当労働行為が成立するとしても、上記のような事実経過や上記内容の第5回団体交渉が実施されたことによって、本件団交要求の目的となっていた事項につき、組合の影響力を行使する機会を与えられたと認めるのが相当である。したがって、本件について救済の利益は存しないというべきである

結論は妥当であると考えます。

この命令では、労組法上の「使用者」性について、規範を上げ、認定しています。

労基法上の「使用者」と異なるので、注意しましょう。

また、Y社は、かなり誠実に団体交渉に応じていました。

その中で、一度、団体交渉を拒否したことが不当労働行為と認定されたことは、参考になります。

さらに、参考にすべきなのが、不当労働行為性は肯定されながら、「救済の利益」がないと判断された点です。

会社側としては、多いに参考にすべき点ですね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。