Category Archives: 有期労働契約

有期労働契約110 無期転換直前の雇止めの適法性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、無期転換直前の雇止めの適法性に関する裁判例を見てみましょう。

日本通運(川崎・雇止め)事件(横浜地裁川崎支部令和3年3月30日・労判1255号76頁)

本件は、Y社との間で期間の定めのある雇用契約(最初の雇用契約開始日から通算して5年を超えて更新することはない旨の条項が付されていた。)を締結し、4回目の契約更新を経て勤務していたXが、Y社に対し、Y社が当初の雇用契約から5年の期間満了に当たる平成30年6月30日付けでXを雇止めしたことについて、①上記条項は労働契約法18条の無期転換申込権を回避しようとするもので無効であり、Xには雇用継続の合理的期待があった、②同雇止めには客観的合理性、社会通念上の相当性が認められないなどと主張し、Y社による雇止めは許されないものであるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、同契約に基づく賃金請求権に基づき、上記雇止め後である同年8月25日から毎月25日限り月額賃金26万9497円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件においては、通常は労働者において未だ更新に対する合理的期待が形成される以前である本件雇用契約締結当初から更新上限があることが明確に示され、Xもそれを認識の上本件雇用契約を締結しており、その後も更新に係る条件には特段の変更もなく更新が重ねられ、4回目の更新時に、当初から更新上限として予定されたとおりに更新をしないものとされている
また、Xの業務はある程度長期的な継続は見込まれるものであるとしても、b配送センターの事業内容や従前の経営状況に加え、Xの担当業務の内容や本件雇用契約上の更新の判断基準等に照らせば、Xの業務は、顧客の事情により業務量の減少・契約終了があることが想定されていたこと、Xの業務内容自体は高度なものではなく代替可能であったことからすれば、恒常的とまではいえないものであった。
加えて、b配送センターにおいて就労していた他の有期雇用労働者はXとは契約条件の異なる者らであった。その他、Y社横浜支店において不更新条項が約定どおりに運用されていない実情はうかがわれない
このような状況の下では、Xに、本件雇用契約締結から雇用期間が満了した平成30年6月30日までの間に、更新に対する合理的な期待を生じさせる事情があったとは認め難い

2 労働契約法18条は、有期契約の利用自体は許容しつつ、5年を超えたときに有期雇用契約を無期雇用契約へ移行させることで有期契約の濫用的利用を抑制し、もって労働者の雇用の安定を図る趣旨の規定である。このような趣旨に照らすと、使用者が5年を超えて労働者を雇用する意図がない場合に、当初から更新上限を定めることが直ちに違法に当たるものではない。
5年到来の直前に、有期契約労働者を使用する経営理念を示さないまま、次期更新時で雇止めをするような、無期転換阻止のみを狙ったものとしかいい難い不自然な態様で行われる雇止めが行われた場合であれば格別、有期雇用の管理に関し、労働協約には至らずとも労使協議を経た一定の社内ルールを定めて、これに従って契約締結当初より5年を超えないことを契約条件としている本件雇用契約について、労働契約法18条の潜脱に当たるとはいえない
したがって、同法の潜脱を前提とする公序良俗違反の原告の上記主張は理由がない。

雇用契約締結当初から更新回数の上限を設定し、かつ、例外的な運用をしていない場合には、本裁判例のように雇止めは有効と判断されます。

契約更新の途中でこれをやると逆の結論になりますので注意しましょう。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。

有期労働契約109 雇止めが不法行為に該当するとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、雇止めが不法行為に該当するとされた事案を見ていきましょう。

社会福祉法人特別区人事・厚生事務組合社会福祉事業団事件(東京地裁令和3年5月26日・労経速2465号37頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と期間の定めのある雇用契約を締結していたXが、Y社による違法無効な雇止めにより精神的苦痛を被ったと主張して、不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料300万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、50万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 本件雇止めは無効であるところ、無効な雇止めが直ちに不法行為に該当するとはいえないが、本件雇止めについては、契約更新に対する合理的期待は高かったというべきであり、雇止めの態様を見ても、Y社は、Xに本件雇止めの理由として看護師の過員という明らかに合理性のない理由を告げた後、Xに書面の交付を求められるや、雇止めの理由について「事業団の運営事業の経営状況により判断する。」という本件規則上の根拠条文を掲記するのみで具体的な理由が記載されていない文書を交付するという不誠実な対応に終始しているのであるから、本件雇止めは不法行為に該当するというべきである。
そして、相当期間Y社に貢献してきたXが本件雇止めにより精神的苦痛を被ったことは明らかであり、Xが、本件雇止めの無効及び雇用継続を前提とする賃金請求や、逸失利益として賃金相当額の損害賠償請求を行っていないという事情に照らすと、本件においては精神的苦痛に対する慰謝料の支払を命ずるのが相当であり、その額は、これまで検討してきた事情のほか、不法行為後の事情としてY社がXから本件雇止めが無効である旨の通知を受けるや早期に復職の提案をしてXの心情に配慮したことなど本件によって認められる諸般の事情を総合的に考慮すると、50万円と認めるのが相当である。

解雇や雇止め事案で、地位確認+バックペイという構成ではなく、慰謝料一本ということはあまりありませんが、本件では、慰謝料のみ請求したため、結果としては、このような少額の支払を命じられています。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。

有期労働契約108 有期雇用契約途中の解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、有期雇用契約途中の解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

ローデンストック・ジャパン事件(東京地裁令和3年7月28日・労判ジャーナル117号32頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で有期雇用契約を締結していたXが、Y社に対し、Y社による有期雇用期間途中の解雇は無効であるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、雇用契約に基づく未払賃金等の支払を求めたほか、Y社による違法、無効な解雇により精神的苦痛を受けたとして、不法行為に基づき、慰謝料200万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、C社長から令和元年7月23日付けメールのようなメールを送信しないよう業務命令を受けていたにもかかわらず、自己の考えに固執して故意に複数回にわたってこれに反する行為に及んでおり、Y社の管理部長としての資質を欠くものといわざるを得ず、Xには就業規則所定の解雇事由に該当すると認められ、また、XはY社との間で期間を5年間とする定年後再雇用契約を締結しており、本件解雇の時点で2年6か月以上の雇用期間を残していたため、Y社は、他部署への配置転換や雇用期間の満了まで賃金を受領しつつ自宅待機とするという雇用の継続を前提とした提案をしたが、Xがこれに応じないばかりか、その後、Y社がXに対して自宅待機命令を発し、その間も賃金の支払を継続することにしたにもかかわらず、それでもなおXは業務命令に反して同年9月6日付けメールを送信したため、Y社はこれ以上Xの雇用を継続することはできないとして本件解雇に踏み切っており、このような点に照らせば、Y社としてXの雇用の継続のために可能な限りの努力をしたにもかかわらず、Xを解雇せざるを得なかったといえるから、労働契約法17条所定の「やむを得ない事由」があったというべきであるから、本件解雇は有効である。

雇用期間満了までお金あげるから会社に来なくていいとまで言われております。

有期雇用契約ですので、無期雇用契約に比べると解雇のハードルが高いですが、それでもここまでの事情があれば、裁判所もさすがに解雇を有効と判断してくれます。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。

 

有期労働契約107 定年後再雇用時の労働契約更新と労契法19条2号(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、定年後暫定的な労働条件で1年再雇用後、契約更新時に新条件の合意の不成立による雇止めを無効とした裁判例を見ていきましょう。

Y社事件(広島高裁令和2年12月25日・労経速2462号3頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社に対し、Y社がXとの間の雇用契約を終了させたのは解雇に当たり、同解雇には正当な理由がないとして、①XがY社との間の雇用契約上の地位にあることの確認を求めるとともに、②(ア)主位的に、判決言渡しの日まで毎月10日限り1か月31万1554円の割合による給与の支払を、(イ)予備的に、上記の雇用契約上の地位にあることの確認と判決言渡しの日まで毎月10日限り1か月19万9000円の割合による給与の支払を求めた事案である。

原審は、Xの上記①及び②(イ)の請求を一部認容し、XがY社との間で労働契約上の権利を有する地位にあることを確認するとともに、Y社に対し、657万1072円等をXに支払うよう命じ、その余の請求をいずれも棄却した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】(原審判断)

1 確かに年齢を重ねることで、一定の年齢からは能力が落ちるにも関わらず、長期間勤務することで、給与は上昇するのみである場合もまま見られ、定年退職後の再雇用においては、定年退職時の給与を基礎として、減額した給与での契約とするというのは一定の合理性があるといえるが、そもそも、本件継続雇用契約の時点でXの定年退職時の給与の6割程度の給与としているもので、本件提案は、その給与をさらに減額するというもので、許されるべきではないし、上記の事情による勤務条件の変更と勤務場所の変更はなんら関連性はなく、定年退職後の再雇用ということで、変更できる条件とはいえないとするのが相当である。

定年退職後、嘱託社員になる際に、正社員の給与から大幅に減額される取扱いについても、同一労働同一賃金との関係では当然に許されるものではありませんが、それはさておくとしても、本件のように、契約更新の際、賃金減額を許容する理屈は存在しません。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。

有期労働契約106 更新の合理的期待の存否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、更新の合理的期待の存否に関する裁判例を見てみましょう。

ドコモ・サポート事件(東京地裁令和3年6月16日・労判ジャーナル115号2頁)

【事案の概要】

本件は、A社の100%子会社であり、電気通信事業に係わる各種受託業務、テレマーケティングに関する業務等を行うY社との間で、有期労働契約を締結していたXが、4回の更新後、4回目の更新期間満了時である平成30年3月31日にY社から雇止めされたが、労契法19条2号の有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的理由があり、かつ、当該雇止めは客観的に合理的理由を欠き、社旗通念上相当であるとは認められないため、従前の有期労働契約の内容で契約が更新され、平成31年3月31日に退職したことから同日に同契約が終了したと主張して、Y社に賃金等を請求した事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 ・・・以上のXとY社との間の本件契約の締結に至るまでの経過やY社の契約期間管理に関する状況等からすれば、Xは、Y社に採用された当初から、本件契約の更新限度回数は最大で4回であることを認識した上で本件契約を締結しており、その認識のとおり、本件契約が更新されていったものといえるから、Xにおいて、本件契約が、更新限度回数4回を超えて、更に更新するものと期待するような状況にあったとはいえない

2 Xは、Y社の有期契約労働者の契約における更新限度回数に関する規定は、労働契約法18条の適用を免れる目的で設けられた規定であり、公序良俗に反する違法な規定である旨主張する。
しかし、・・Y社が、労働契約法18条の適用を免れる目的で有期労働契約の雇用契約の更新限度回数に関する規定を設けたものとはいえない。
また、同条は、有期労働契約が5年を超えて反復更新される場合には、無期労働契約へ転換できる仕組みを設けることで、有期労働契約の濫用的利用を抑制し、労働者の雇用の安定を図る趣旨の規定であり、5年を超える反復継続を行わない限度においては、有期労働契約により短期雇用の労働力を利用することは許容されているのであるから、Y社の有期契約労働者の契約における更新限度回数に関する規定が同条の潜脱になるとはいえない。

更新限度回数は、1番最初の契約締結時に契約内容になっていれば、本件同様に有効と判断してくれます。

更新の途中で突如、契約内容としてもうまくいきませんのでご注意ください。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

有期労働契約105 ユニオン・ショップ協定に基づく雇止めの有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、契約期間満了までに、第一組合脱退後の第二組合加入または会社への同組合加入告知が認められず、ユニオン・ショップ協定に基づく雇止めが有効とされた事案を見てみましょう。

トヨタ自動車事件(名古屋地裁岡崎支部令和3年2月24日・労経速2453号32頁)

【事案の概要】

本件は、A労働組合との労働協約に基づきシニア期間従業員(契約期間2年以降の期間従業員)を含む従業員についてユニオン・ショップ制を取るY社に、期間従業員として雇用されていたXが、同組合を脱退しB労働組合に加入したところ、契約更新を希望していたにもかかわらず雇止めをされたのは合理性、必要性や社会的相当性を欠き、処分は無効であるなどとして、①雇用契約に基づく賃金請求権により、平成30年4月分から同年8月分までの賃金合計142万1655円、各月賃金28万4331円に対する遅延損害金の支払、②雇用契約に基づく満了慰労金及び満了奨励金支払請求権により、更新期間分の満了慰労金及び満了報奨金47万5331円+遅延損害金の支払、③不法行為に基づく損害賠償請求権により、慰謝料100万円+遅延損害金の支払を請求している事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件のように労働組合法7条1項但書の条件を充足するユニオン・ショップ制は、労働者が労働組合の組合員たる資格を取得せず又はこれを喪失した場合に、使用者をして当該労働者との雇用関係を終了させることにより、間接的に労働組合の組織の拡大強化を図る制度であり、このような制度としての正当な機能を果たすものと認められる限りにおいてその有効性を承認されるところ(日本食塩製造事件判例)、期間従業員の漸次的組合員化の中で、一定の勤務年数を経過したシニア期間従業員のみ制度対象とすることには合理性があり、上記制度趣旨に反するものとはいえない。

2 仮にXが契約期間満了までに第二労働組合に加入していたとしても、第二労働組合又はXからY社に対し、契約期間満了までにその旨の告知があったとも認められない(なお、Xは、他の労働組合に加入していれば、告知の有無を問わずユニオン・ショップ制による雇止めは無効となる旨も主張するが、雇用関係の安定の見地から採用し難い。)

3 Y社は、ユニオン・ショップ制により非組合員を解雇する義務を負うものである。しかも、Xは、失業保険給付日数を増やすために契約更新を希望しているだけで、労働組合費の負担を免れるために契約を終了させることを自ら意図していた(有期労働契約の更新を期待していなかった)者であるから、雇止めが解雇権の濫用に当たらないことは明らかである。

珍しくユシ協定に基づく雇止めが争点となりました。

結論自体には特に異論はないと思われます。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

有期労働契約104 初回の契約期間満了に伴う雇止めが無効とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう!

今日は、初回の契約期間満了に伴う雇止めが無効とされ、時間外割増賃金請求等の一部は認められたが、不法行為責任は否定された事案を見て行きましょう。

学校法人南陵学園事件(和歌山地裁令和2年12月4日・労経速2453号14頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのある雇用契約を締結し、Y社が経営するi高等学校の開校準備業務に従事していたXが、Y社に対し、①契約期間満了時の平成28年3月31日に同年4月1日以降の契約の更新の申込みをY社が拒絶したことは、客観的に合理的な理由を欠き無効であると主張して、本件雇用契約に基づき、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及び本件雇用契約による賃金請求権に基づき、同年4月1日から本判決確定の日まで毎月末日限り月額32万5300円の割合による賃金の支払を、②平成27年7月21日から平成28年12月2日までの間の時間外労働に対する賃金が支払われていないと主張して、雇用契約による賃金請求権に基づき、未払時間外賃金及び確定遅延損害金合計162万0018円+遅延損害金の支払を、③平成27年12月分から平成28年4月分までの教職調整手当、特別技能手当、扶養手当及び住居手当が支払われていないと主張して、雇用契約による賃金請求権に基づき、未払賃金41万6444円+遅延損害金の支払を、④自宅待機をXに命じ、本件各手当を不支給としたこと、本件雇止めをしたこと及びその後の交渉における対応はXに対する不法行為に当たると主張して、不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料300万円+遅延損害金の支払を、それぞれ求める事案である。

【裁判所の判断】

①雇止めは無効

②Y社は、Xに対し、149万9258円+遅延損害金を支払え

③Y社は、Xに対し、41万6444円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Y社は、a高における就業規則及び賃金規程おいて、教職調整手当及び特別技能手当を労働基準法37条の割増賃金の一部として支給すると定めており、当時の本件高校における賃金規程においても同様の定めがあった可能性は否定できない。
しかしながら、Xは、Y社に対して就業規則の閲覧を求めていたが平成27年12月14日まで閲覧をすることができなかったと述べており、Y社において容易に提出することができると考えられる本件高校における当時の就業規則及び賃金規程が書証として提出されていないことに照らすと、Xの供述は信用することができる。したがって、本件高校において就業規則及び賃金規程が周知されていたと認めることはできず、本件雇用契約の内容となる就業規則及び賃金規程はないことになる。

2 本件雇用契約に関する雇用契約書では、契約更新の有無について「自動的に更新する」、「更新する場合があり得る」及び「契約の更新はしない」の選択肢から「更新する場合があり得る」が選択されていたとはいえ、本件高校が予定どおり開校される限り、本件雇用契約に関し、期間満了時である平成28年3月31日における更新は締結時から予定されていたものというべきであり、そのことについてXには合理的な期待があったと認められる。

3 E総監督及びA学園長がXの勤務態度には問題がなかったと述べていること、A学園長は、本件雇止めにおいて、XがY社の他の職員とコミュニケーションを取れていなかったことを最も重視したと述べるが、そのような事実を認めるに足りる証拠がないことを踏まえると、前記で検討した事実、高校生の教育に携わるという業務の特質等を総合的に評価したとしても、Y社が本件雇用契約の更新を拒絶することは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められない

上記判例のポイント1のように、容易に提出することができる就業規則や賃金規程を書証として提出しない場合には裁判所の心証はかなり悪いですね。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

有期労働契約103 7回更新の有期契約社員の雇止めが有効?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れさまでした。

今日は、同一の使用者との間で、労働契約の更新を7回行った有期契約社員に、次の更新の合理的な期待が認められなかった裁判例を見てみましょう。

日本通運事件(東京地裁令和2年10月1日・労経速2438号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で、平成29年8月31日に、期間を同年9月1日から平成30年3月31日までとして労働契約を締結し、同契約を更新されずY社から雇止めされたXが、XとY社の労働契約は労働契約法19条1号又は2号の要件を満たしており、雇止めについて客観的合理的な理由も社会通念上相当性もないため、従前の労働契約の内容で契約が更新されたと主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、労働契約に基づき平成30年4月分以降の賃金+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 XとY社との間の労働契約の契約期間は通算5年10箇月、有期労働契約の更新回数は7回に及ぶものの、毎回、必ず契約書が作成されており、契約日の前に、Y社の管理職からXに対し、Xの署名押印を求める契約書を交付し、管理職がXの面前で契約書を読み上げて契約の意思を確認するといった手続を取っており、更新処理が形骸化していたとはいえず、いずれかから格別の意思表示がなければ当然更新されるべき労働契約を締結する意思であったと認められる場合には当たらないというべきである。

2 本件のように契約書に不更新条項等が記載され、これに対する同意が更新の条件となっている場合には、労働者としては署名を拒否して直ちに契約関係を終了させるか、署名して次期の期間満了時に契約関係を終了させるかの二者択一を迫られるため、労働者が不更新条項を含む契約書に署名押印する行為は、労働者の自由な意思に基づくものか一般的に疑問があり、契約更新時において労働者が置かれた前記の状況を考慮すれば、不更新条項等を含む契約書に署名押印する行為があることをもって、直ちに不更新条項等に対する承諾があり、合理的期待の放棄がされたと認めるべきではない。労働者が置かれた前記の状況からすれば、前記行為が労働者の自由な意思に基づいてされものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在する場合に限り(山梨県民信用組合事件最高裁判決)、労働者により更新に対する合理的な期待の放棄がされたと認めるべきである。
・・・本件では、Xは、労働契約7の締結の際、管理職に対し、不更新条項等について異議を留めるメールを送っている。そうすると、労働契約5から8までの不更新条項等の契約書に署名押印する行為がXの自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が、客観的に存在するとはいえない

3 労働契約1から7までは、Q2事業所におけるQ3の商品配送業務をY社が受注する限りにおいて継続する性質の雇用であったところ、Y社が同業務を受注できず事業所を閉鎖して撤退するに至ったため、労働契約7の締結前に、Xが、Y社の管理職から、Y社がQ3の商品配送業務を失注し事業所を閉鎖する見込みとなり、次期契約期間満了後の雇用継続がないことについて、個人面談を含めた複数回の説明を受け、Y社に代わりQ3業務を受注した後継業者への移籍ができることなどを説明され、契約書にも不更新条項が設けられたことにより、労働契約7の締結の時点においては、それまでの契約期間通算5年1箇月、5回の更新がされたことによって生じるべき更新の合理的期待は、打ち消されてしまったといえる。

上記判例のポイント2は非常に重要です。

ただ単に不更新条項を入れておけばよいというほど単純ではないことを理解しておきましょう。

5年ルールの対応については顧問弁護士と相談の上、慎重に行いましょう。

有期労働契約102 自動車接触事故の不申告を理由とする雇止め(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、自動車接触事故等の不申告を理由とする雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

日の丸交通足立事件(東京地裁令和2年5月22日・労判ジャーナル104号44頁)

【事案の概要】

本件は、Y社においてタクシー運転手として勤務し、定年退職後は有期の嘱託雇用契約を結んで稼働していたXが、平成31年4月18日をもって受けた雇止めは無効であると主張して、労働契約に基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認+令和元年5月から本判決確定の日まで,毎月25日限り,雇止め直前3か月間の給与の平均額の一部である15万7418円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求認容

【判例のポイント】

1 Y社は、日頃から、タクシー運転手にメモを配布したり、明番集会や出庫前点呼で問題事案の発生の機会を捉えて運転手への周知を徹底するなどして、運転手が救護義務違反や報告義務違反を起こさないよう指導していたことが認められるところ、それにもかかわらず、Xが、本件接触の際、すぐに、あるいは遅くとも乗客を降車させた直後に警察や営業所に連絡しなかったことは、自転車の運転者が、後日になって事故を申告する可能性があることを考慮すれば、Y社や他の従業員にとって重大な影響を与えるおそれのある不申告であって、Y社が、Xが起こした不申告事案に対し、厳しい態度で臨まなければならないと考えることも十分理解できる。
しかし、一方で、本件接触は、左後方の不確認という比較的単純なミスによるもので、接触した自転車の運転者は、ドライブレコーダーの記録から受け取れる限り、倒れた様子は見受けられず、接触後すぐに立ち去っていることから、本件接触及び本件不申告は、悪質性の高いものとまではいえない。後に事案を把握した警察においても、本件接触や本件不申告を道交法違反と扱って点数加算していないことも踏まえれば、本件接触及び本件不申告は、警察からも重大なものとは把握されていないことがうかがわれる
また、Xは、営業を終え、車体に痕跡を発見したことがきっかけではあるものの、自分から本件接触をD補佐に報告しており、本件接触を隠蔽しようとはしていないことが認められ、報告後、現場に戻って警察に連絡することや、本社面談を受けることなどの会社の指示に素直に従い、接触の原因や不申告の重大さなどについて注意、指導を受けた内容を記憶し、反省していることも認められる。加えて、Xの車両に何らかの修理や塗装が施されたことを示す的確な証拠はなく、Xが、タクシー運転手として三十数年間、人身事故を起こすことなく業務に従事し、何度も表彰されるなど、優秀なタクシー運転手であったこと、本件接触のような一見する限り怪我がないように見える接触の相手方が無言で立ち去ってしまった場合に、警察に報告しなければならないことが頭に浮かばなかったとしても、一定程度無理からぬものがあることも考慮すれば、本件接触及び本件不申告のみを理由に雇止めとすることは、重過ぎるというべきである。
したがって、本件接触及び本件不申告のみを理由とする本件雇止めは、客観的に合理的な理由があり、社会的通念上相当であるとは認められない

懲戒処分や解雇・雇止め等を行う場合に、当該処分や行為の相当性を判断することは本当に難しいです。

個人的には結論は妥当だと考えますが、非常に悩ましい事案です。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

有期労働契約101 更新の上限設定と合理的期待の保護(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、有期労働契約の更新上限回数を超えての更新に合理的期待が認められないと判断された裁判例を見てみましょう。

社会福祉法人仙台市社会福祉協議会事件(仙台地裁令和2年6月19日・労経速2423号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で有期雇用契約を締結し、Y社が運営する障害福祉サービス(生活介護)事業所である「a施設」で勤務していたXが、平成30年4月1日をもって雇用契約の期間満了により雇止めされたことについて、Xには労働契約法19条2号に該当する事由があるから、上記雇用契約は従前の内容で更新されるから、Y社が行った雇止めは違法であり、無効であると主張して、Xが、Y社に対し、雇用契約上の地位にあることの確認を求めるとともに、雇用契約に基づく賃金+遅延損害金の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 ①本件募集要項には、勤務条件のうち更新・雇用期限等として「1年間の有期労働契約。勤務成績により更新は4回まで可能。」との明記されていたこと、②Xは、本件募集要項の内容を確認し、本件募集要項に基づいて応募をしたこと、③採用面接の際、XがC課長から雇用期間が1年間であり、契約更新の回数が4回までであり、5年間が限度であると説明を受けていたこと、④本件契約の雇用契約書において、「更新期間」は「指定管理期間終了まで(最長4回まで更新可)」と記載されており、Xが当該契約書に署名押印していたこと、⑤本件契約の更新について、契約更新ごとに雇用契約書が作成されており、平成26年度ないし平成28年度の更新時の雇用契約書において、「更新期間」は「最長4回まで更新可能」との記載がされており、Xがそれぞれの雇用契約書に署名押印していたこと、⑥平成29年度の雇用契約書において、「契約を更新する可能性 無し」、「更新期間」は「-」と記載がされており、Xが当該契約書に署名押印していたこと、以上の事実が認められる。
これらの事実によれば、Xは、Y社に採用される当初から雇用契約の更新回数が最長4回までであり、雇用期間が最大5年間であることを認識して、本件契約を締結していたものであり、その後の本件契約の更新についても、更新ごとに雇用契約書が作成され、その度に更新回数の最長が4回までであることについて明記がされ、最終更新年である平成29年度には雇用契約の更新を行わない旨が明記されていたことからすると、特段の事情がない限り、Xにおいて、雇用契約の更新4回、雇用期間5年を超えて更に本件契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認めることはできない

2 Xは、①Y社には特例延長制度があり、契約職員が5年を超えて雇用される制度が存在していたこと、②希望をすれば、契約職員から嘱託職員への身分の変更と施設の変更をすれば、5年を超えて雇い入れられる運用が労使慣行として成立していたこと、③Y社に採用される以前から5年を超えて雇用されている職員がいることを聞いていたこと、④平成21年3月の団体交渉において、5年雇止めをはじめとするY社の人事制度見直しが検討されることとなり、5年雇止めについても事態の打開可能性があったことからすると、Xには、更新回数4回、雇用期間5年を超えて、更に本件契約が更新されるものと期待することの合理的な理由がある旨主張する。
しかしながら、上記①の点について、特例延長制度(就業規則11条2項)は、Y社の会長がやむを得ないと認めた場合に適用されることとされていることが認められ、当然に特例延長制度が適用されるものではなく、特例延長制度があることが直ちに本件契約の更新への合理的期待を基礎付けるものとは認め難い

更新回数の条件を予め設定していたケースです。

これと似て非なるものとして、5年ルール適用直前になって、突如として上限設定を設ける場合には、既に更新の期待権が発生しているため、そう簡単にはいきません。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。