Category Archives: 管理監督者

管理監督者29(ピュアルネッサンス事件)

おはようございます。

さて、今日は、退職した元部長からの時間外割増賃金・減額賃金差額請求に関する裁判例を見てみましょう。

ピュア・ルネッサンス事件(東京地裁平成24年5月16日・労判1057号96頁)

【事案の概要】

Y社は、美容サロンの経営、化粧品等の販売を目的とする会社で、ネットワークビジネスの運営、健康食品の製造販売、美容サロンの経営またはフランチャイズ、化粧品等の美容商品の製造販売を行うA社グループのグループ会社である。

Xは、平成17年11月、Y社に管理職(部長)として入社し、Y社が企画する化粧品販売イベントの運営等に従事してきた。

Xは、平成18年5月にY社の取締役、19年6月に常務取締役、20年12月に専務取締役に選任された。

Xは、21年9月に退職した後、Y社に対し、時間外割増賃金および減額賃金の差額分を請求した。

【裁判所の判断】

1 Xは管理監督者に該当する。
→深夜割増賃金部分約98万円の支払いを命じた

2 減額賃金の差額5万円の支払いを命じた

3 付加金として除斥期間が到来していない時間外手当と同額の約92万円の支払いを命じた

【判例のポイント】

1 もともとY社は、その規模に比して取締役の数が不自然に多く、Xには終始一貫して基本給と役職手当という名目で対価が支払われており、雇用保険にも継続して加入していることに加え、提出された証拠だけからはXの報酬額が変更される都度、取締役会の決議がなされたことは認められない。また、Y社の取締役会、役員会議、経営会議においては、具体的な討論がなされたような形跡がなく、実質的なオーナーとみされるB会長の指示を伝達する場にすぎなかったことが認められるし、Xが取締役に選任された前後においてその担当する業務について具体的な変更があったことは証拠上見当たらない。そうすると、Xは、基本的にB会長の指示や許可を受けて業務に従事することが多かったものといえる。また、Xが一度Y社を退社した上で取締役に選任されたような事実も認められない
したがって、Xは、Y社との関係において、取締役としての地位を有していたが、労働者であったと認めるのが相当である

2 労基法41条1項2号の管理監督者とは、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいうとされる。
管理監督者に該当するか否かは、(1)事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限を認められているか否か、(2)自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有しているといえるか否か、(3)一般の従業員に比しその地位と権限にふさわしい賃金上の処遇を与えられているか否かを実態に即して判断することになる。

3 Xは、経営会議等の重要な会議に参加しており、実情は、B会長が決めた方針の伝達が行われることが多かったとはいえ、取締役という地位で参加しており、サロンの開設や従業員の採用など個別的に重要な業務の担当を任されるようになっている。
Xは労務担当の取締役とされていたが、従業員の採用や人事考課の権限等、労務管理についての一般的に広範な権限が与えられていたわけではない。しかしながら、Y社は規模の小さい個人企業であるため、人事考課自体が行われていたのか疑問であり、また採用にあたってもB会長に決定権があったとしても必ずしも不自然とはいえず、その後、Y社の業務が拡大するとともに、従業員の採用について、Xに権限が与えられるようになっている。また、Xは、従業員やスタッフの勤務時間についての集計や、訂正の確認などを行っており、他の従業員などの勤務時間に関する労務管理の権限がある程度与えられていたものといえる
Xは、タイムカードによって厳格な勤怠管理が義務づけられていたとはいえず、タイムカードも本来許されていない手書きでの修正が許されたり、他の従業員とは異なる扱いがなされるなどしているし、パーティーや懇親会、麻雀などへの参加時間も労働時間としてタイムカードが打刻されている。また、Xの主張する業務量に比して、労働時間が不自然に長時間となっており、勤務時間中に業務以外のことをしていた事情もうかがえることからすると、Xについては、厳密な労働時間の管理がされていたとはいえず、労働時間について広い裁量があったといえる。
そして、Xは、基本給として月額35万円、役職手当として月額5万円から10万円の給与をもらっており、一般従業員の基本給と比べて厚遇されていたことは明らかである。
以上からすると、Xは、労基法41条2号の管理監督者に該当するとみるのが相当である。

4 Xは、労働者ではあるが、管理監督者に該当するため、その請求できる時間外手当は深夜割増賃金に限られる。

5 Xは、労働者として労基法の適用を受ける地位にあるから、Xが、管理監督者に該当するとしても、Y社において深夜割増賃金に相当する時間外手当の支払いを免れることはない。それにもかかわらず、Y社は、Xに対し、時間外手当の支払を一切していない。こうした事情に加えて、Y社が労基法の適用を免れようとして労働者を取締役 に選任するといった意図が認められる等の本件の実情を照らし合わせると、本件については、付加金として、労基法114条ただし書きの除斥期間が到来していない平成20年1月分ないし平成21年9月分の時間外手当と同額の付加金の支払を命じることが相当である。

上記判例のポイント1では、取締役の労働者性が争点となっており、これを肯定しています。

事実認定の方法について参考になります。

また、この裁判例では、珍しく管理監督者性が肯定されています。

なかなか普通の会社で、管理監督者であることを前提として、割増手当を全く支払わないという労務管理の方法は、リスクが非常に高いことは間違いありません。

それゆえ、あまり、おすすめはしません。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

管理監督者28(HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド(賃金等請求)事件)

おはようございます。 

さて、今日は、管理監督者性と未払残業代等の請求に関する裁判例を見てみましょう。

HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド(賃金等請求)事件(東京地裁平成23年12月27日・労判1044号5頁)

【事案の概要】

Y社は、A銀行東京支店等の関連会社から受託した業務を行う外国法人であり、Xは、人材紹介会社の紹介を受け、平成19年12月にY社に入社すると、A銀行東京支店へ出向という形で、個人金融サービス本部に勤務していた。

Xは、採用時に、期間の定めのない労働契約が締結され、年俸は1250万円とされたが、3か月の試用期間満了時に、Y社から本採用を拒否された。

Xは、Y社に対し、未払残業代とその付加金等を請求した。

これに対し、Y社は、Xは労基法41条の管理監督者であるか、仮にそうでないとしても割増賃金を年俸に含める合意が成立していたなどと主張し争った。

【裁判所の判断】

管理監督者性を否定
→未払残業代として約325万円の支払いを命じた

【判例のポイント】

1 労働基準法41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体の立場にある者をいい、管理監督者か否かは、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきである。そして、管理監督者と認められるためには、(1)職務の内容が、少なくともある部門の統括的なものであって、部下に対する労務管理上の決定等について一定の裁量権を有していること、(2)自己の出退勤を始めとする労働時間について裁量権を有していること、(3)一般の従業員に比してその地位と権限にふさわしい賃金上の処遇を与えられていることが必要であると解される

2 管理監督者に当たるか否かの判断は、管理監督者に当たるとされた労働者について、労基法の定める時間外労働等に関する規制の適用がすべて排除されるという重大な例外に係る判断であるから、管理監督者の範囲は厳格に画されるべきであるところ、インターネットバンキング担当のVPというXの職務上の地位や権限は、上記規制の適用が排除されても、当該労働者の保護に欠けるところがないと断定できるほど高次のものでなかったことは明らかである

3 年俸の中に時間外労働等に対する割増賃金が含まれるとする合意については、年俸のうち割増賃金に当たる部分とそれ以外の部分とを明確に区別することができる場合に限り、その有効性を認めることができると解されるところ(最高裁昭和63年7月14日・労判523号6頁)、XとY社との間の契約においては、そのような明確な区分がされているものとは認められないから、法定時間外労働等に対する割増賃金について、これを年俸に含むとする旨の合意は、労基法37条に反し無効であると言わざるを得ない
なお、Y社は、(1)Xに過重労働はないこと、(2)Xは年俸1250万円という高額の報酬を受けていること、(3)X自身も年俸とは別に割増賃金が支給されるものとは考えていなかったこと等の事情に照らせば、年報に含む旨の合意の効力が認められるべきである旨をも主張するが、独自の見解であって採用の限りではない。

4 さらに、Y社は、いわゆる法内残業については、これを年俸に含むものとしても何ら労基法に定職するものではないから、年俸に含む旨の合意により、Y社には法内残業に係る賃金の支払義務はないとも主張する。
・・・このような法内残業について、年俸に含む旨の合意の効力を認めても、何ら労基法に反する結果は生じないから、法内労働に対する賃金につき、これを年俸に含むものとする旨の合意は有効であって、Y社には、法内残業に対する賃金の支払義務はないものと解するのが相当である
なお、この点については、就業規則の最低基準効(労働契約法12条)との関係も問題となり得るが、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められるY社の賃金規程によれば、Y社においては、Xのように年俸制で採用された従業員に対しては、所定時間外労働及び所定休日労働に対する割増賃金は支払われないものとされていることが認められるから、法内残業に対する賃金が年俸に含まれる旨の合意の効力を認めても、就業規則との抵触は生じない。
以上によれば、年俸に含む旨の合意は、法定時間外労働、法定休日労働及び深夜労働については無効であるが、いわゆる法内残業に対する限度では有効であるということができる

この事件、本人訴訟みたいですね。

管理監督者性については、いつもどおり、否定されています。

年俸制と残業代の関係については、既に判例がありますので、特に目新しい点はありません。

今回、参考になるのは、上記判例のポイント4の法内残業に関する考え方ですね。

年俸に法内残業に対する賃金を含めるという合意は有効であるようなので、その点について、書面で明確に合意をしておくことをおすすめいたします。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

管理監督者27(シーディーシー事件)

おはようございます。 

さて、今日は、飲食店調理長の割増賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

シーディーシー事件(山形地裁平成23年5月25日・労判1034号47頁)

【事案の概要】

Y社は、居酒屋等を経営する会社である。

Y社は、仙台調理師紹介所から調理長としてXの紹介を受け、Xと、平成18年4月、期間の定めのない労働契約を締結した。

本件店舗における調理場スタッフは4名であったが、Xが最も経験が長く、作業の指示などを行っていた。

Xは、Y社退職後、Y社に対し、未払い残業代を請求した。

Y社は、Xが管理監督者に該当する等と主張し争った。

【裁判所の判断】

管理監督者性を否定

【判例のポイント】

1 確かに、管理監督者は、労働基準法の労働時間等に関する規定の適用を受けないが、それは、当該労働者が、経営者と一体的な立場において、労働時間、休憩及び休日等に関する規定の枠を超えて事業活動することを要請されてもやむを得ないものといえるような重要な職務と権限を付与されており、また、そのために賃金等の待遇及びその勤務態様において、他の一般労働者に比べて優遇措置が講じられているので、労働時間等に関する規定の適用を除外されても、当該労働者の保護に欠けることがないという趣旨によるものと解される
したがって、Xが管理監督者に当たるというためには、形式的に役職にあることのみならず、実質的に、他の従業員の労務管理を含め、企業全体の事業経営に関わる重要な権限を付与されており、その勤務態様が労働時間等に対する規制になじまないものであり、給与及び一時金において、管理監督者にふさわしい待遇がされていることを要するものというべきである

2 ・・・以上のとおり、Xは、平成18年4月以降退職した平成19年7月までの間、管理監督者の地位にあることを前提とする手当の支給を受けておらず、その年収において、他の従業員とは異なる処遇を受けていたことを示す証拠はないから、給与等において管理監督者にふさわしい待遇はされていなかったものというべきである。

3 Xは、Y社に調理長として紹介されて採用されたものであり、本件店舗の調理場スタッフはXのほか3名であって、その余の本件店舗の従業員がどの程度いたのかは明らかではないものの、その余の従業員について、Xがその労務管理や人事について関与することがなかったことが認められる。そして、Xが、調理場スタッフの採用に際し、面接を行っていたことも上記認定のとおりであるが、調理場スタッフとしての採否及び昇給についての意見を述べることができるだけであることもまた上記認定のとおりであって、従業員として採用したり、昇給を決定する権限までは有していなかったし、Y社における人事考課制度がどのようなものであったかは不明であるが、昇給に関する意見を述べる際、調理場スタッフについてXが何らかの人事考課を行っていたことを窺わせる証拠は見当たらない。
したがって、Xが、本件店舗の調理場内において、その労務管理について、経営者と一体的立場にあったとは認め難い。

4 長時間の時間外労働については、これに応じた時間外手当を支払うべきことは上記認定のとおりであるところ、時間外手当の支払によっても解消されない精神的苦痛をXが被っており、慰謝料の支払をもってこれを慰謝すべき程度にまで達していたことを認めることはできないから、労働環境等を理由とする慰謝料の請求は理由がない

特にコメントすることはありません。

本件程度の事情では労基法上の管理監督者に該当しないことは明らかです。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

管理監督者26(エス・エー・ディー情報システムズ事件)

おはようございます。 また一週間始まりました。 がんばっていきましょう!

さて、今日は、プロジェクトマネージャーの管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。

エス・エー・ディー情報システムズ事件(東京地裁平成23年3月9日・労判1030号27頁)

【事案の概要】

Y社は、コンピューターのソフトウェア開発と販売、情報処理サービス業務及び情報提供サービス業務等を業とする会社である。

Xは、平成19年7月、Y社に入社して以降、平成21年2月まで就労した。

Xは、平成20年9月~平成21年2月、Y社が大阪にあるL社から受注したK電鉄・電車ダイヤ作成応援システムのソフトウェアの開発等の業務にプロジェクトマネージャーとして従事した。

Xは、Y社に対し、未払いの時間外および深夜の割増賃金を請求した。

Y社は、Xが管理監督者に該当する等と主張し争った。

【裁判所の判断】

Xの管理監督者性を否定。

未払時間外割増賃金と同額の付加金の支払いを命じた。

【判例のポイント】

1 行政通達の内容を踏まえると、管理監督者に該当するかどうかについては、(1)その職務内容、権限及び責任が、どのように企業の事業経営に関与するものであるのか(例えば、その職務内容が、ある部門全体の統括的なものであるかなど)、(2)企業の労務管理にどのように関与しているのか(例えば、部下に関する労務管理上の決定等について一定の裁量権を有していたり、部下の人事考課、機密事項等に接したりしているかなど)、(3)その勤務態様が労働時間等に対する規制になじまないものであるか(例えば、出退勤を規制されておらず、自ら決定し得る権限があるかなど)、(4)管理職手当等の特別手当が支給されており、管理監督者にふさわしい待遇がされているか(例えば、同手当の金額が想定できる時間外労働に対する手当と遜色がないものであるかなど)といった観点から、個別具体的な検討を行い、これら事情を総合考慮して判断するのが相当である。

2 Xは、従業員の労務管理の一部分(本件月間実績報告書の点検及び確認)を担当してはいるものの、従業員の出退勤の管理自体は、従業員自体の申告(メール送信)によって行われている。そして、前記検討のとおり、本件A社業務に途中から関与したこと、Xについても本件月間実績報告書が作成され管理されていたことを併せ考えると、Xが従業員の労務管理において広範な裁量権を有していたとは解し難く、Y社の従業員の自己申告を取りまとめたもの(本件月間実績報告書)を形式的に点検・確認していたのが実情であったと解される。
これら検討にかんがみると、Xが従業員の労務管理の一部分を担当していたことが、管理監督者性を基礎付ける重要な事情であるとまではいい難い。

3 Xは、他の従業員に比べて、相応の厚遇を受けていたということができる。
しかしながら、Xは、Y社代表Zの要望を受けて、本件A社業務の品質低下・業務遅滞を解消ないし軽減するためにY社に入社したという経緯があること、Y社がXに対し、時間外割増賃金は発生しない旨の説明を行った事実は認められないこと、Y社は、A社に対し、本件月間実績報告書に基づき、超過分(時間外労働分)の請求ないし調整を行っていたこと、Xは、前職(年俸711万円)において、別途、時間外割増賃金の支払を受けていたことが認められることを総合考慮すると、本件労働契約によるXの待遇が、管理監督者該当性を直ちに基礎付けるということはできない。

判決理由を読んでいると、まず、全体から考えると、裁判官は「管理監督者性否定」という心証を持っており、この結論に反する事情を必死に打ち消しているように読めてなりません。

判決なんて、そんなもんですけど・・・。

管理監督者性を肯定するなんて、よっぽどの場合に限られるんだよ、という裁判所の判断が見えてきます。

この事案は、会社側から控訴されています。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

管理監督者25(エイテイズ事件)

おはようございます。

さて、今日も、管理監督者に関する裁判例を見てみましょう。

エイテイズ事件(神戸地裁尼崎支部平成20年3月27日・労判968号94頁)

【事案の概要】

Y社は、衣料品及びスポーツ用品のデザイン、製造、加工、販売等を業とする会社である。

Xは、Y社の従業員であったが、その後、退職した。

Xは、Y社に対し、未払いの時間外、休日および深夜の割増賃金の支払いを求めた。

Y社は、Xが管理監督者にあたる等と反論し争った。

【裁判所の判断】

管理監督者にはあたらない。

認容金額と同額の付加金の支払いを命じる。

【判例のポイント】

1 Xは現場のいわば職長という立場にすぎず、その具体的な職務内容、権限及び責任などに照らし、Xが管理監督者であるとすることはできない。

2 Xが1か月に2回程度実施される経営会議に出席していたことは当事者間に争いがない。そして、この経営会議は、月々の営業目標の設定、売上げノルマの到達度の確認などを行う会議であることが認められ、この会議において、Xが、Y社の経営についての重要事項に関して何らかの積極的な役割を果たしたことを認めるに足りる証拠はない

3 Y社は、Xに支給されていた給与が社内でも屈指のものであった旨を主張する。しかし、その比較の対象を、Y社と労働契約を締結しているわけではない代表取締役・取締役に求めるのは相当ではない。Xが課長に昇進した前後の比較や、他の平社員との比較をしなければ、Xが管理監督者として処遇されているというに足りる給与を得ているかどうかは明らかとはならない。そして、この点に関する証拠はまったく存在しない。

4 Xの時間外労働、休日労働、深夜労働の時間数は非常に大きく、そのほとんどが現実でのプリント作業に費やされている。また、Y社は、タイムカードを通じてXのこのような労働状態を認識していたところ、Y社が、このような状態を改善しようとしたり、Xの健康管理に意を払ったりしたことを認めるに足りる証拠はない
そして、これらの事情に照らすと、Xが請求する労働基準法114条所定の付加金は、646万3150円の限度で理由があるというべきである。

5 また、Xは、付加金の支払についても仮執行宣言を求めるが、同条所定の付加金は、裁判所の判決が確定してはじめて発生するものであるから、その性質上、仮執行宣言を付することはできない。

いろいろ参考になる裁判例です。

判例のポイント3は、会社側のポイントです。 給与が十分かというのは、相対評価であるということです。

比較の対象をあげてくれています。

あとは、判例のポイント5は、付加金と仮執行宣言について、再認識できますね。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

管理監督者24(丸栄西野事件)

おはようございます。

さて、今日は、管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。

丸栄西野事件(大阪地裁平成20年1月11日・労判957号5頁)

【事案の概要】

Y社は、織ネーム、プリントネームの製造及び販売、美術印刷製品の製造及び販売、経営コンサルタント及び販売促進の企画、各種コンテンツ・アプリケーションの製作等を業とする会社である。

Xは、Y社に採用され、大阪本社で勤務し、企画営業グループに所属し、その後Y社を退職した。

Xは、Y社に対し、未払いの時間外手当、深夜勤務手当、休日勤務手当等及び付加金の支払を求めた。

Y社は、Xが管理監督者に該当する等と反論し争った。

【裁判所の判断】

管理監督者にはあたらない。

付加金の支払いは命じない。

【判例のポイント】

1 Y社の主張のうち、勤務時間について厳格な規制をすることが困難であることをいう点については、そもそもXの業務は時間管理が困難なものとはいえない。また、デザイナーであることが管理監督者性を基礎付けるとはいえないところ、Y社の主張する点は、Xがデザイナーであることに由来するものであって、これをもって管理監督者性を基礎づけることはできない。

2 パーティションで区切っていたために、勤務態度についての管理が困難であったことについても、Xらデザイナーが仕事に集中するためにパーティションが設置されていたものであり、自由に休憩をとったりするために設置されていたものではないことからすると、これをもって管理監督者性を基礎づけることはできない。

3 Xの待遇が、Y社の従業員の中では、相対的に上位にあることは認められる。しかしながら、月々の時間外労働の時間数に見合うほどに高額であるとはいえない。また、Xの月額賃金は、おおむね定期的にほど同額で上昇してきた結果とみられ、管理監督者としての地位に就任したことによるものとみるのは困難である。

4 ・・・以上の検討によれば、多少なりとも管理監督者性を基礎付けることのできる事情としては、Xの待遇及び採用面接を担当したことの2点が挙げられるが、これらの点を総合考慮しても、Xが(1)労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあり、(2)労働時間、休憩、休日などに関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務と責任を有し、現実の職務が労働時間の規制になじまないような立場にあって、(3)管理監督者にふさわしい待遇がなされているとは認められないので、Xが管理監督者であると認めることはできない。

5 Xは、Y社における時間外手当不払いがY社の体質に由来する根深いものであるから、付加金の支払を命じるべきである旨主張する。
・・・しかしながら、ともかくもタイムカードや勤怠管理表のほとんどはY社より証拠として提出されていること、Xの勤務態度等についてY社から具体的な主張や立証がなされているわけではないこと、Y社側は和解による解決を最後まで模索していたこと等の点からすると、付加金については、これの支払いを命じないのが相当であると判断した

やはり、会社側の対応の難しさを感じます。

「だってしょうがないじゃないかー」という会社の声が聞こえてきそうです。

でも仕方ありません。 裁判所としてはこのように判断するんでしょうね。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

管理監督者23(アイマージ事件)

おはようございます。

さて、今日は、昨日に引き続き、管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。

アイマージ事件(大阪地裁平成20年1月14日・労経速2036号14頁)

【事案の概要】

Y社は、カラーコピーサービス業務及びコンピュータのプリントアウトサービス、広告、出版及び印刷業等を営む会社である。

Xは、Y社の従業員としてコピーサービス店の店長をしていた。

Xは、Y社を退職後、Y社に対し、未払時間外手当の支払を請求した。

【裁判所の判断】

管理監督者性を否定

付加金の支払いは命じない

【判例のポイント】

1 管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあり、そもそも労働時間の管理になじまない者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきである。
Y社の主張するXの待遇に関する点は、いずれもXが本件店舗の店長であったことによって説明することも可能なものである。Xは、店長であるといって、その権限は、本件店舗の3階部分に及んでいたことをうかがわせる証拠はなく、1階部分に限定されていたものと推認される。また、Y社と強い結びつきがあり、Y社の経営に強い影響力を有していたことがうかがわれるAも頻繁に本件店舗を訪れていたことからすると、店長である以上に経営者と一体的な立場にあったとまでは認められない

2 Y社の主張するXの賃金待遇に関する点は、いずれもXが本件店舗の店長であったことによって説明するkとも可能なものである。他方で、合計26万円の月額賃金は、他の従業員に比べると好待遇であるとはいえ、店長であることを超えて管理監督者としての地位にあることを裏付けるものとしては不十分である

3 Xがタイムカードの打刻を懈怠することが少なかったことは事実であるが、打刻されている限りでは、所定の勤務時間は、きちんと就労しており、契約上も実態上も、時間管理がなされていなかったとは認められない。また、Xの意識においても、時間管理がなされていないとの認識はうかがわれない

4 Xの業務内容のうち、従業員の採用や従業員の給料の決定を行っていたことを認定するに足りる証拠はない。経理業務を担当していたことについては争いがないが、これのみを以て、Xが管理監督者の地位にあったと認めることはできない。
以上の検討によれば、Xが管理監督者の地位にあるとのY社の主張は採用できない。

5 事情はどうあれ、Xは、格別、困難を来すような事情がうかがわれないにもかかわらず、タイムカードをきちんと打刻しておらず、Y社が的確に時間外労働時間数を把握することを困難にしていることを考慮すると、Y社に付加金の支払いを命じるのは相当でない

付加金に関しては、珍しい判断のしかたです。

裁判所の裁量なので、ありなんでしょうけど、Xがタイムカードをきちんと打刻していなかったこととY社が残業代を支払ってこなかったことって、関係あるんでしょうか?

よくわかりません・・・。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

管理監督者22(ゲートウェイ21事件)

おはようございます。

さて、今日は管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。

ゲートウェイ21事件(東京地裁平成20年9月30日・労判977号74頁)

【事案の概要】

Y社は留学・海外生活体験商品の企画、開発、販売等を業とする会社である。

Xは、Y社に勤務し、銀座支店の支店長であり、Y社社内では、シニアブランチマネージャー(SBM、部長相当、非役員では最高等級)の地位にあり、営業を担当していた。

Xは、Y社を退職後、Y社に対し、未払時間外手当等の請求をした。

【裁判所の判断】

管理監督者には当たらない

付加金として、請求認容額とほぼ同額を認めた

【判例のポイント】

1 Y社は、Xに勤務上の広い裁量があり、Xに残業を命じる立場の者はいないので、残業命令がないところを自らの意思で残業したにすぎないと主張する。
しかし、Y社代表者は、午前10時ころのみならず、遅い時刻にもメールや電話で、Xらに、営業成績の報告等をするよう、強く求めていたことが認められる。Xの地位からすれば、具体的に何日の何時まで残業せよという命令が出ることはないと考えられる。けれども、Y社では、全社的に営業成績(ノルマ)の達成を強く義務づけ、従業員一般に対して、これを達成するよう叱咤激励を繰り返したことが認められるところ、その達成には所定労働時間内の勤務では不十分であることは明らかであるから、Xに対して残業命令が出ていないという理由により、Y社が時間外手当の支払を免れることはないというべきである。

2 管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理につき、経営者と一体的な立場にあるものをいい、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきであると解される。具体的には、(1)職務内容が、少なくともある部門全体の統括的な立場にあること、(2)部下に対する労務管理上の決定権等につき、一定の裁量権を有しており、待遇において、時間外手当が支給されないことを十分に補っていること、(4)自己の出退勤について、自ら決定し得る権限があること、以上の要件を満たすことを要すると解すべきである。

3 Xの職務内容は、部門の統括的な立場にあり、部下に対する労務管理上の決定権等はあるが、それは小さなものにすぎないといえる。また、時間外手当が支給されないことを十分に補うだけの待遇を受けておらず、出退勤についての自由も大きなものではないといえる。これを総合すれば、Xは、経営者との一体的な立場にあり、労働時間等の枠を超えて事業活動することを要請されるような地位とそれに見合った処遇にある者とはいえず、労働時間等に関する規定の適用を除外されることが適切であるとはいうことができない。したがって、Xは管理監督者には当たらないというべきであるから、Y社はXの時間外労働に対する手当の支払を免れられないというべきである。

4 本件において、Y社は、X1に対し時間外手当を支払わず、本件訴訟提起後も、X1の時間外労働自体を争うなどし、弁論の全趣旨によれば、逆に損害賠償訴訟を提起するという態度をとるなど、時間外手当を支払う姿勢が見られないから、付加金の支払いを命ずるのが相当である。なお、時間外手当の総額は、386万8621円と認められるが、請求の趣旨の範囲内(370万1571円)で認容する

この裁判例は、とても参考になります。

特に、判例のポイント1は、労働者側にとって非常に参考になります。

ノルマの達成が強く義務づけられていたという事実を裁判所は重く評価しています。

付加金に関する裁判所の判断は、会社にとっては、痛いところです。ただ、やむを得ないといった感じでしょうか。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

管理監督者21(九九プラス事件)

おはようございます。

さて、今日は、管理監督者に関する裁判例を見てみましょう。

九九プラス事件(東京地裁立川支部平成23年5月31日)

【事案の概要】

Y社は、「SHOP99」と称し、食料品、日用雑貨のほか、生鮮食品も取り扱う24時間営業のコンビニ型店舗をチェーン展開して経営する会社である。

Xは、平成18年9月、Y社との間で期限の定めのない雇用契約を締結し、社員として雇用された。Xは、平成19年6月、店長となった。

Y社では、Xは、労基法41条に定める管理監督者に当たるとして、残業代等は支払われていなかった。

Xは、Y社に対し、店長としての扱いを受けて以降の未払割増賃金及び休日割増賃金、付加金等の支払いを求めた。

【裁判所の判断】

管理監督者には該当しない。
→未払割増賃金等の支払いを命じた。

付加金は、時間外手当の5割を認めた。

【判例のポイント】

1 Xが管理監督者に該当するか否かの判断に当たっては、・・・当該労働者が職務内容、責任及び権限に照らし、労働条件の決定、その他の労務管理等の企業経営上の重要事項にどのように関与しているか、勤務態様が労働時間等の規制になじまず、また、自己の出退勤につき一般の労働者と比較して自由な裁量が認められているか、賃金等の待遇が管理監督者というにふさわしいか否かなどの点について、諸般の事情を考慮して検討すべきものと解する

2 この点、Y社は、労働者が、特定の事業所において、使用者のために、他の労働者の労務提供を確保し、又は採用・解雇等の人事管理を行う者で、その職務の内容等が労働時間等の制限になじまないものであれば、管理監督者の該当性を判断する旨主張するが、これは、事業所の規模の大小を問うことなく事業所単位で管理監督者の該当性を判断する点、当該労働者の権限の広狭等を問うことなく使用者のために労務提供の確保等を行う者であれば足りるとする点、使用者が労働者に対し労働時間等の制限になじまない内容の職務等を課せば管理監督者に該当し得るとする点、賃金等の待遇面を考慮しない点等において、上記法の趣旨に合致するものとはいえず、採用できない

3 Y社は、コンビニ型店舗をチェーン展開して経営する会社であり、X勤務当時、約700店舗の直営店を有しており、店長は、エリアマネージャーの指揮の下、そのうちの1つ(兼務している場合は複数)の店舗内の運営を任されているにすぎず、平成18年9月当時かかる立場にある店長は、少なくともY社の正社員の3分の2を占めていた
そして、Y社では、店長は採用後約4か月で社員が4日間の店長養成研修を受講し、その後、2日間の4級店長資格研修及び2日間の店長任命研修を受講すれば店長に任命されるといった短期間かつ簡易なシステムを採用しており、Xの場合、研修終了の約3か月も前に店長として勤務するなど、研修自体も重視されていない実態があった。

4 店長は、PAを採用する権限があったものの、一般社員の採用や昇格等については、何ら権限を有していなかったPAの採用等についても、店長の完全な自由裁量ではなく、時給等については、Y社によって定められた一定の制限があり、また、解雇についても、職務権限表には規定がなく、Y社において、店長にPAの解雇の権限の有無や範囲について明確な説明をしていなかった。また、店長は、シフト作成を行っていたものの、PAの勤務可能な曜日及び時間帯があらかじめ定められているため、これに沿ったシフトを作成せざるを得ず、Xの裁量にも制約があった。

5 店長は、月1回開催される店長会議やエリア会議等に出席し、その場で各店長に本社の経営方針、経営戦略等が伝達されるのみで、店長からの意見聴取や経営方針について討論する機会はほとんどなかった。

6 店長は、その出退勤につき、自由な裁量が認められているとは言い難い上、PAと同じ方法により出退勤時刻等が管理されていたのであるから、自己の出退勤につき一般の労働者と比較して自由な裁量が認められているとは認められない

7 Y社においては年俸制が採用されており、年俸制の14分の1が月例賃金として支払われていたところ、Xが店長に昇格した後、年俸56万円、月例賃金は約4万円それぞれ増額されたが、店長昇格後にXが受け取った賃金額は、店長昇格前の額を超えることはなかった

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。

管理監督者20(レイズ事件)

おはようございます。

さて、今日は、管理監督者に関する裁判例を見てみましょう。

レイズ事件(東京地裁平成22年10月27日・労判1021号39頁)

【事案の概要】

Y社は、不動産業を営む会社である。

Xは、Y社に採用され、その後、解雇された。解雇時は、営業本部長の地位にあった。

Xは、解雇後、Y社に対し、時間外・休日労働にかかる未払賃金の支払いを求めた。

これに対し、Y社は、Xが管理監督者にあたること、事業場外みなし制度が適用されることなどを主張し、争った。

【裁判所の判断】

管理監督者性を否定

事業場外みなし制度の適用も否定

【判例のポイント】

1 労働基準法41条は、同条2号に掲げる「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)には、労働時間、休憩、休日に関する労働基準法の規定を適用しない旨を定めているところ、その趣旨は、同法の定める労働時間規制を超えて活動することが、その重要な職務と責任から求められる者であり、かつ、その職務内容(権限・責任)や現実の勤務態様等に照らし、労働時間規制を除外しても、同法1条の基本理念や同法37条の趣旨に反するような事態が避けられる(労働者保護に欠けることにはならない)ということにあり、行政通達が、管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理につき、経営者と一体的な立場にある者をいい、その名称にとらわれず、実態に即して判断すべきであるなどとしているのも、前記趣旨に沿ったものと解される。

2 そして、同通達の内容をも踏まえると、管理監督者に該当するかどうかについては、(1)その職務内容、権限及び責任が、どのように企業の事業経営に関与するものであるのか(例えば、その職務内容が、ある部門全体の統括的なものであるかなど)、(2)企業の労務管理にどのように関与しているのか(例えば、部下に対する労務管理上の決定等について一定の裁量権を有していたり、部下の人事考課、機密事項等に接したりしているかなど)、(3)その勤務態様が労働時間等に対する規制になじまないものであるか(例えば、出退勤を規制しておらず、自ら決定し得る権限があるかなど)、(4)管理職手当等の特別手当が支給されており、管理監督者にふさわしい待遇がされているか(例えば、同手当の金額が想定できる時間外労働に対する手当と遜色がないものであるかなど)といった視点から、個別具体的な検討を行い、これら事情を総合考慮して判断するのが相当である。

3 Xは、Y社において「営業本部長」という肩書は有しているものの、その業務内容は、基本的には営業活動であり、(宅地建物取引主任者の資格を活用する点、より重い営業ノルマ等を課されている点は別論として)他の一般社員(営業担当社員)と異なるところはなかったものと解される。

4 Xは、原則として、午前9時前後にはY社に出社して、タイムカードに打刻し、Y社を退社する際もタイムカードに打刻していたこと、Y社は週休2日制であるにもかかわらず、Xが週2日の休日を取得することはあまりなかったことが認められ、Xは勤務時間(出退勤)について自由裁量はなかったものと強く推認されるといわざるを得ない。

5 Xが部下の査定に実質的に関与していたと認めることはできない

6 Y社は、Xに支給されている報奨金等の多寡をも問題としているが、報奨金は、基本的には、従業員の立場等とは関係なく、契約を成立させた事実に対して支給されるものであり、その多寡が直ちに管理監督者性を基礎付けるものであるとは解し難い。

本裁判例では、管理監督者性の問題のほかに、事業場外みなし労働時間制の適用の有無についても争点となっています。

この点は、また別の機会に検討します。

管理監督者性の問題で、会社側の主張が通ることはほとんどありません。

理由は簡単です。

基準が厳しいことと、会社が、都合よく管理監督者と認定しすぎていることです。

裁判所の示す基準をすべてみたす管理職は、ほとんど存在しないと思います。

会社としては、この問題を放置しておくと、本裁判例のように、いつか時間外・休日労働の未払賃金を請求されたときに、多額の出費をしなければなりません。

このあたりは、実質的な損得の判断が求められています。

「訴訟リスク」「敗訴リスク」を実質的に判断しましょう。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。