管理監督者25(エイテイズ事件)

おはようございます。

さて、今日も、管理監督者に関する裁判例を見てみましょう。

エイテイズ事件(神戸地裁尼崎支部平成20年3月27日・労判968号94頁)

【事案の概要】

Y社は、衣料品及びスポーツ用品のデザイン、製造、加工、販売等を業とする会社である。

Xは、Y社の従業員であったが、その後、退職した。

Xは、Y社に対し、未払いの時間外、休日および深夜の割増賃金の支払いを求めた。

Y社は、Xが管理監督者にあたる等と反論し争った。

【裁判所の判断】

管理監督者にはあたらない。

認容金額と同額の付加金の支払いを命じる。

【判例のポイント】

1 Xは現場のいわば職長という立場にすぎず、その具体的な職務内容、権限及び責任などに照らし、Xが管理監督者であるとすることはできない。

2 Xが1か月に2回程度実施される経営会議に出席していたことは当事者間に争いがない。そして、この経営会議は、月々の営業目標の設定、売上げノルマの到達度の確認などを行う会議であることが認められ、この会議において、Xが、Y社の経営についての重要事項に関して何らかの積極的な役割を果たしたことを認めるに足りる証拠はない

3 Y社は、Xに支給されていた給与が社内でも屈指のものであった旨を主張する。しかし、その比較の対象を、Y社と労働契約を締結しているわけではない代表取締役・取締役に求めるのは相当ではない。Xが課長に昇進した前後の比較や、他の平社員との比較をしなければ、Xが管理監督者として処遇されているというに足りる給与を得ているかどうかは明らかとはならない。そして、この点に関する証拠はまったく存在しない。

4 Xの時間外労働、休日労働、深夜労働の時間数は非常に大きく、そのほとんどが現実でのプリント作業に費やされている。また、Y社は、タイムカードを通じてXのこのような労働状態を認識していたところ、Y社が、このような状態を改善しようとしたり、Xの健康管理に意を払ったりしたことを認めるに足りる証拠はない
そして、これらの事情に照らすと、Xが請求する労働基準法114条所定の付加金は、646万3150円の限度で理由があるというべきである。

5 また、Xは、付加金の支払についても仮執行宣言を求めるが、同条所定の付加金は、裁判所の判決が確定してはじめて発生するものであるから、その性質上、仮執行宣言を付することはできない。

いろいろ参考になる裁判例です。

判例のポイント3は、会社側のポイントです。 給与が十分かというのは、相対評価であるということです。

比較の対象をあげてくれています。

あとは、判例のポイント5は、付加金と仮執行宣言について、再認識できますね。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。