Daily Archives: 2010年10月7日

継続雇用制度12(協和出版販売事件)

おはようございます。

今日は、継続雇用制度に関する裁判例を見てみましょう。

協和出版販売事件(東京高裁平成19年10月30日・労判963号54頁)

【事案の概要】

Y社は、書籍の取次業務を業とする会社である。

Y社は、従来55歳定年としてきたが、平成10年5月移行、改正後の高齢者雇用安定法の施行に伴い、60歳定年とし、併せて55歳に達した翌日から嘱託社員としてそれまでの従業員賃金とは別の給与体系とした。

Xは、Y社の従業員である。

Xは、就業規則の変更による55歳到達以降の大幅な給与減額は、就業規則の不利益変更にあたり無効であると主張し、本来支給されるべき賃金額と実際に支給された賃金額との間の差額等を請求した。

【裁判所の判断】

請求棄却(一審も同様)

【判例のポイント】

1 本件就業規則の変更は、定年を延長する面でも、55歳から60歳までの賃金の面でも、退職金の面でも、従業員に不利益に変更された点はなく、就業規則を不利益に変更したものということはできない。
→最高裁における就業規則の不利益変更に関する判断基準によって、変更の法的効力を判断すべき場合ではない。

2 就業規則が、使用者と労働者との間の労働関係を規律する法的規範性を有するための要件としての合理的な労働条件を定めていることは、単に、法令または労働協約に反しない(労基法92条1項)というだけではなく、当該使用者と労働者の置かれた具体的な状況の中で、労働契約を規律する雇用関係についての私法秩序に適合している労働条件を定めていることをいうものと解するのが相当である

3 高齢者雇用安定法では、定年延長後の雇用条件について、延長前の定年直前の待遇と同一にすることは定められておらず、賃金等の労働条件については、基本的に当事者の自治に委ねる趣旨であったと認められるが、同法に従って延長された定年までの労働条件が、具体的状況に照らして極めて苛酷なもので、労働者に同法の定める定年まで勤務する意思を削がせ、現実には多数の者が退職する等、高年齢者者の雇用の確保と促進という同法の目的に反するものであってはならないことも、雇用関係についての私法秩序に含まれる。 

本裁判例は、本件就業規則の変更は不利益変更にあたらず、就業規則不利益変更法理の適用もないと判断しています。

これに対し、第四銀行事件(最二小判平成9年2月28日・労判710号12頁)は、年間賃金の減額を伴う55歳から60歳への定年延長を定めた就業規則の変更は、既得の権利を消滅、減少させるというものではないが、実質的にみて労働条件を不利益に変更するに等しいとし、就業規則不利益変更法理を適用しています

この点については、また別の機会に検討してみたいと思います。

実際の対応は、顧問弁護士に相談をしながら慎重に進めましょう。