Daily Archives: 2010年10月6日

労働時間9(変形労働時間制その4)

おはようございます。

さて、今日は、1カ月単位の変形労働時間制に関する裁判例を見てみましょうう。

まず、前回も書きましたが、就業規則上は変形労働時間制の基本的内容と勤務制の作成手続を定めるだけで、使用者が労働時間を任意に決定できるような制度は違法です。

この点に関する裁判例として、岩手第一事件(仙台高裁平成13年8月29日・労判810号11頁)があります。

同事件で、裁判所は、以下のとおり判断しています。

労基法32条の2の1カ月単位の変形労働時間制の定めは、就業規則等において変形期間内における毎労働日の労働時間を特定するか、少なくとも始業・終業の時刻を異にするいくつかの労働パターンを設定して勤務割がその組合せのみで決まるようにすべきであり、法定労働時間を超える日や週をいつにするか、その日・週の労働時間を何時間にするかについて使用者が無制限に決定できる定めは、違法、無効である。

また、JR西日本事件(広島高裁平成14年6月25日・労判835号43頁)では、以下のようにも判断しています。

労基法32条の2の要件からは、他の日および週の労働時間をどれだけ減らして超過時間分を吸収するかを示す必要があるため、法定労働時間を超過する勤務時間のみならず、変形期間内の各日および週の所定労働時間をすべて特定する必要があるから、就業規則において、変形期間内の毎労働日の労働時間を、始業時刻、終業時刻とともに定めなければならない

次に、いったん特定された労働時間を変更することは原則として許されませんが、予定した業務の大幅な変動等の例外的限定的な事由に基づく変更は許されるものと考えられます

この点に関し、JR東日本事件(東京地裁平成12年4月27日・労判782号6頁)で、裁判所は、以下のとおり判断しています。

変形労働時間制は、労働者の生活設計を損なわない範囲内において労働時間を弾力化する制度であるから、各週・各日の変形労働時間をできる限り具体的に特定することを要するが、変形期間開始後に就業規則上の変更条項は、労働者が予測可能な程度に変更事由を具体的に定めることを要する。それを充たさない変更条項は、違法・無効となる。

また、上記JR西日本事件においては、以下のとおり判断しています。

勤務時間の延長、休養時間の短縮およびそれに伴う生活設計の変更により労働者の生活に影響を与え不利益を及ぼす恐れがあるから、勤務変更は、業務上のやむを得ない必要がある場合に限定的かつ例外的措置として認められるにとどまるものと解するのが相当であり、使用者は、いったん特定された労働時間の変更が使用者の恣意によりみだりに変更されることを防止するとともに労働者にどのような場合に勤務変更が行われるかを了知させるため、変更が許される例外的、限定的事由を具体的に記載し、その場合に限って勤務変更を行う旨定めることを要する

このように、一度特定した労働時間を変更するのはとても大変です。

やむを得ず変更する場合には、
1 どのような事情が生じた場合に労働時間の変更があるのかをあらかじめ具体的に定めておく

2 あらかじめ労働者に通知する

3 やむを得ない場合に限った運用をする

という3点に気を付けてください。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。