不当労働行為31(石原産業事件)

おはようございます。

さて、今日は、不当労働行為に関する事案を見てみましょう。

石原産業事件(中労委平成23年10月19日・労判94頁)

【事案の概要】

Y社の従業員(約80名)は、店舗および事業所のゴミを収集・運搬する業務に従事する者を正社員、吹田市および豊中市の委託を受けて一般家庭のゴミを収集・運搬する業務に従事する者を準社員と区分している。

平成19年4月、Y社従業員は、X組合を結成した。

X組合とY社は、同年5月から9月までに7回の団交を行った。

X組合は、10月、団交にY社が応じなかったことから、ストを開始した。

同年10月、Y社は、組合のスト期間中に就労した非組合員に一律5万円の特別報酬を支給した。

その後開催された団交において、Y社は、非組合員に通常の業務を超える負担をいただいたことに感謝の意を示すものとして特別報酬を支給した旨述べた。

同年12月上旬頃から、Y社は、組合員を事務所コースに配置し、本来業務のゴミ収集から外して単純作業の洗車や車両点検のみの作業指示を行うようになった。

【労働委員会の命令】

特別報酬の支給は不当労働行為にはあたらない。

ストに参加した組合員に洗車や車両点検等のみの作業指示を行ったことは不当労働行為にあたる。

【命令のポイント】

1 スト期間中に就労した従業員には、通常に比して大きな肉体的・精神的負担がかかっていたといえるのであるから、Y社がこのような従業員の負担増大に対する報酬として特別報酬を支給したことには合理的理由があるといえる。また、支給対象者はスト期間中に就労した従業員であり、支給額も相応と認められる範囲内である。さらに、Y社がスト終了以前に特別報酬の支給を予告したり、示唆したりした事実はうかがわれないことからすると、特別報酬の支給は、Y社がこれを支給することにより今後の組合のストライキを抑止する意図をもって行ったものとはいえない
よって、ストに参加した組合員に特別報酬が支給されなかったのは、スト期間中、通常業務を超える作業に従事しなかったことを理由とするものであって、これが組合員の組合活動等を嫌悪してなされた不利益取扱いや組合の弱体化を企図した支配介入であるとまではいえない。

2 洗車や車両点検の作業は、通常、ゴミ収集車に乗った従業員がその車について行っていることからすると、洗車と車両点検のみに従事させることに業務上の必要性があるとはいい難い。したがって、Y社が、組合員らに洗車や車両点検の業務のみを行わせたことに合理的な理由は認められない
・・・以上からすると、上記業務指示等は、19年4月の組合結成以降、労使対立が続く中で、ストライキという組合の正当な行為を嫌悪し、敢えて必要のない業務指示等を差別的に行ったものと認められ、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たる。

妥当な結論だと思います。

特別報酬については、外形上、組合嫌悪の意思の表れと判断するのは難しいと思います。

他方、洗車や車両点検の作業を命じるというのはあからさまなやり方ですので、不当労働行為と判断されてもやむを得ません。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。