Daily Archives: 2012年7月13日

労働災害52(ジェイフォン事件)

おはようございます 今日で一週間も終わりですね。

明日から3連休ですね。 私は、静岡から脱出する予定です
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←このカレー、そのまま食べられるんです。

豆腐にこれをかけて食べると、めちゃめちゃおいしいです。

今日は、朝から島田警察署に接見に行ってきます

9時から事務所で打合せがあるので、それまでには戻ります。

今日は、朝から晩までずっと事務所で打合せです。 

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は、技術系社員のうつ病発症・自殺と業務起因性に関する裁判例を見てみましょう。

ジェイフォン事件(名古屋地裁平成23年12月14日・労判1046号42頁)

【事案の概要】

Xは、昭和42年7月にY社に入社し、ほぼ数年おきに転勤等を繰り返しながらY社ないしY社のグループ会社において約27年間にわたり勤務した後、Y社に在籍したまま、平成6年4月、A社に在籍出向し、13年4月、Y社からA社に転籍した。

Xは、A社への出向の前後ころから仕事による精神的ストレス(出向をリストラと受けとめていたためそのストレスや出向後は、長時間労働による睡眠不足やクレーム処理等の職務のきつさを訴えるようになった)をしばしば訴えるようになった。

Xは、平成6年11月、体重減少、食欲低下等の自覚症状があったため、受診したところ、うつ病であると診断された。

Xは、その後も受診を断続的に続けたが、平成14年、自殺した。

【裁判所の判断】

名古屋西労基署長による遺族補償給付等不支給処分は違法である。
→業務起因性肯定

【判例のポイント】

1 うつ病を含む精神疾患は、当該労働者の従事していた業務とは直接関係のない基礎疾患、当該労働者の性格傾向、精神の反応性、適応能力及びストレス対処能力等並びに生活歴等の個体側の要因、その他環境的要因などが複合的、相乗的に影響し合って発症に至ることもあるから、業務と精神疾患の発症との間に相当因果関係が肯定されるためには、単に業務が他の原因と共働原因となって精神疾患を発症させたと認められるだけでは足りず、業務自体に、社会通念上、精神疾患を発症させる一定程度以上の危険性が存することが必要であると解するのが相当である

2 うつ病の発生機序については、医学上も未だ完全には解明されていない分野であり、その発病原因となった出来事の全てを特定すること自体が困難な場合も多い上、現在の医学水準においては心理的負荷の蓄積というものを客観的、定量的に数値化することが必ずしも容易でないことも併せ考慮すれば、うつ病と心理的負荷との相当因果関係を完全に医学的に証明することは困難な場合があることは、否定できないところである。
もっとも、法的概念としての因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである

3 業務とうつ病との相当因果関係を判断するに当たっても、発病前の業務内容及び生活状況並びにこれらが労働者に与える心理的負荷の有無及び程度、さらには、当該労働者の基礎疾患等の身体的要因や、うつ病に親和的な性格等の個体側の要因等を具体的かつ総合的に判断した上で、これをうつ病の発症等に関する医学的知見に照らし、社会通念上、当該業務が労働者の心身に過重な負荷を与える態様のものであり、これによって当該業務にうつ病を発症させる一定程度以上の危険性が存在するものと認められる場合に、当該業務とうつ病との間の相当因果関係を肯定するのが相当である。

4 うつ病を発症させる一定程度以上の危険性の存否を判断するに際し、業務の過重性・業務上の心理的負荷の強度を判断するにあたっては、同種の労働者を基準にして客観的に判断する必要があるが、企業に雇用される労働者の性格傾向等が多様なものであることはいうまでもないところ、被災労働者の損害の填補並びに被災労働者及びその遺族の生活補償という労働者災害補償制度の制度趣旨に鑑みれば、業務の過重性・業務上の心理的負荷の程度は、一般的・平均的な同種労働者、すなわち、職種、職場における地位や年齢、経験等が類似する者で、業務の軽減措置を受けることなく日常業務を遂行できる健康状態にある者の中で、その性格傾向等が最も脆弱である者(ただし、同種労働者の性格傾向等の多様さとして通常想定される範囲内の者)を基準として、客観的に判断すべきである(したがって、Xが主張する本人基準説は採用できない。)。

5 本件うつ病は、本件自殺まで一度も寛解するに至らず抗うつ薬の服用による症状の多少の緩和と厳しい職場環境および業務状況の中で我慢しながら仕事を続けたことによる症状の悪化を神戸も繰り返しながら、次第に慢性化していったものと推認されるのであり、本件うつ病は第1次受診以降、本件自殺に至るまで回復しなかったどころか、第4次受診時および第5次受診時には自殺念慮を抱くまでに増悪化していたと推認される。

6 本件うつ病発症前6か月間にXが従事した業務は、質的に過重と評価できることに加え、Xは同時期、少なくとも月に約100時間程度の時間外労働を4か月にわたり行っていたと認められるから、量的にも過重な業務であったと評価でき、本件うつ病の発症には、業務起因性が認められる。

この裁判例では、平均人基準説のうち、最脆弱説を採用し