Monthly Archives: 7月 2012

本の紹介103 20歳のときに知っておきたかったこと(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は、本の紹介です。
20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義
20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義

スタンフォード大学の講師の本です。

この本で言いたいのは、「あなた自身に許可を与える」ということです。

わたしが伝えたかったのは、常識を疑う許可、世の中を新鮮な目で見る許可、実験する許可、失敗する許可、自分自身で進路を描く許可、そして自分自身の限界を試す許可を、あなた自身に与えてください、ということなのですから。」(206頁)

どんどんチャレンジをしていこう!!ということです。

結局、チャレンジしない理由は、自分の中にあるということです。

そして、チャレンジしなくてもよい合理的な理由を必死で探しているのです。

特に若いうちは、どんどんチャレンジしていきたいです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・父は人生を振り返って、いちばん大切な教えをこう考えているそうです。『自分に対しては真面目すぎず、他人に対しては厳しすぎないこと』。自分や他人の間違いにもっと寛容で、失敗も学習プロセスの一環だと思えればよかった、と。いまの父ならわかるのです。過ちを犯しても、大地が揺らぐことなど滅多にないのだと。」(212頁)

これも「失敗」に対する向き合い方に関する言葉です。

つくづく思うのですが、この言葉にもあるように、「失敗」に対する捉え方がしっかりしている人とそうでない人では、人生の歩み方が大きく変わってくるのではないでしょうか。

「失敗も学習プロセスの一環」だと思えば、失敗はそんなに悪いことばかりではありません。

大切なのは、失敗をしないことではなく、失敗を次のステップにつなげることです。

そのために、失敗をどのように活かすかがとても重要になってくるわけです。

「自分に対しては真面目すぎず、他人に対しては厳しすぎないこと」という点は、また違った角度からの言葉ですね。

失敗をしても、必要以上に思いつめないことが大切です。

あくまでも、次のステップにつなげるために、振り返ることが大切です。それ以上の反省と後悔は、時間の無駄です。

逆に言えば、何度も同じレベルの失敗を繰り返していると、周りからの信用を失うことになります。

仕事でも人生でも、失敗を繰り返しながら、少しずつステップアップしていくことを意識しています。

みなさんは、いかがでしょうか?

労働災害52(ジェイフォン事件)

おはようございます 今日で一週間も終わりですね。

明日から3連休ですね。 私は、静岡から脱出する予定です
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←このカレー、そのまま食べられるんです。

豆腐にこれをかけて食べると、めちゃめちゃおいしいです。

今日は、朝から島田警察署に接見に行ってきます

9時から事務所で打合せがあるので、それまでには戻ります。

今日は、朝から晩までずっと事務所で打合せです。 

今日も一日がんばります!!

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さて、今日は、技術系社員のうつ病発症・自殺と業務起因性に関する裁判例を見てみましょう。

ジェイフォン事件(名古屋地裁平成23年12月14日・労判1046号42頁)

【事案の概要】

Xは、昭和42年7月にY社に入社し、ほぼ数年おきに転勤等を繰り返しながらY社ないしY社のグループ会社において約27年間にわたり勤務した後、Y社に在籍したまま、平成6年4月、A社に在籍出向し、13年4月、Y社からA社に転籍した。

Xは、A社への出向の前後ころから仕事による精神的ストレス(出向をリストラと受けとめていたためそのストレスや出向後は、長時間労働による睡眠不足やクレーム処理等の職務のきつさを訴えるようになった)をしばしば訴えるようになった。

Xは、平成6年11月、体重減少、食欲低下等の自覚症状があったため、受診したところ、うつ病であると診断された。

Xは、その後も受診を断続的に続けたが、平成14年、自殺した。

【裁判所の判断】

名古屋西労基署長による遺族補償給付等不支給処分は違法である。
→業務起因性肯定

【判例のポイント】

1 うつ病を含む精神疾患は、当該労働者の従事していた業務とは直接関係のない基礎疾患、当該労働者の性格傾向、精神の反応性、適応能力及びストレス対処能力等並びに生活歴等の個体側の要因、その他環境的要因などが複合的、相乗的に影響し合って発症に至ることもあるから、業務と精神疾患の発症との間に相当因果関係が肯定されるためには、単に業務が他の原因と共働原因となって精神疾患を発症させたと認められるだけでは足りず、業務自体に、社会通念上、精神疾患を発症させる一定程度以上の危険性が存することが必要であると解するのが相当である

2 うつ病の発生機序については、医学上も未だ完全には解明されていない分野であり、その発病原因となった出来事の全てを特定すること自体が困難な場合も多い上、現在の医学水準においては心理的負荷の蓄積というものを客観的、定量的に数値化することが必ずしも容易でないことも併せ考慮すれば、うつ病と心理的負荷との相当因果関係を完全に医学的に証明することは困難な場合があることは、否定できないところである。
もっとも、法的概念としての因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである

3 業務とうつ病との相当因果関係を判断するに当たっても、発病前の業務内容及び生活状況並びにこれらが労働者に与える心理的負荷の有無及び程度、さらには、当該労働者の基礎疾患等の身体的要因や、うつ病に親和的な性格等の個体側の要因等を具体的かつ総合的に判断した上で、これをうつ病の発症等に関する医学的知見に照らし、社会通念上、当該業務が労働者の心身に過重な負荷を与える態様のものであり、これによって当該業務にうつ病を発症させる一定程度以上の危険性が存在するものと認められる場合に、当該業務とうつ病との間の相当因果関係を肯定するのが相当である。

4 うつ病を発症させる一定程度以上の危険性の存否を判断するに際し、業務の過重性・業務上の心理的負荷の強度を判断するにあたっては、同種の労働者を基準にして客観的に判断する必要があるが、企業に雇用される労働者の性格傾向等が多様なものであることはいうまでもないところ、被災労働者の損害の填補並びに被災労働者及びその遺族の生活補償という労働者災害補償制度の制度趣旨に鑑みれば、業務の過重性・業務上の心理的負荷の程度は、一般的・平均的な同種労働者、すなわち、職種、職場における地位や年齢、経験等が類似する者で、業務の軽減措置を受けることなく日常業務を遂行できる健康状態にある者の中で、その性格傾向等が最も脆弱である者(ただし、同種労働者の性格傾向等の多様さとして通常想定される範囲内の者)を基準として、客観的に判断すべきである(したがって、Xが主張する本人基準説は採用できない。)。

5 本件うつ病は、本件自殺まで一度も寛解するに至らず抗うつ薬の服用による症状の多少の緩和と厳しい職場環境および業務状況の中で我慢しながら仕事を続けたことによる症状の悪化を神戸も繰り返しながら、次第に慢性化していったものと推認されるのであり、本件うつ病は第1次受診以降、本件自殺に至るまで回復しなかったどころか、第4次受診時および第5次受診時には自殺念慮を抱くまでに増悪化していたと推認される。

6 本件うつ病発症前6か月間にXが従事した業務は、質的に過重と評価できることに加え、Xは同時期、少なくとも月に約100時間程度の時間外労働を4か月にわたり行っていたと認められるから、量的にも過重な業務であったと評価でき、本件うつ病の発症には、業務起因性が認められる。

この裁判例では、平均人基準説のうち、最脆弱説を採用し

本の紹介102 自分の頭で考えるということ(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
自分の頭で考えるということ
自分の頭で考えるということ

羽生さんと茂木さんの対談形式になっています。

羽生さんのすごさは言うまでもないところですが、実は、茂木さんもかなりすごい人です。

なにがすごいかと言えば、会話の内容の幅広さが尋常ではないということです。

守備範囲が広いわけです。 

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

茂木 最近は『失敗学』ということを行っている先生がいらっしゃいます。ただやはり皆、あまり失敗については触れたくないからきちんと科学しようということにはならない。人間は勝因を考えることはできても、敗因は見つめたくないというところがある。でも対局の後の検討の時には、俺はこういう理由で負けたんだってちゃんと確認しているんですよね。

羽生 将棋のプロなら、絶対に敗因は見つけます。」(133頁)

茂木 人間が生きる中にもいろいろ失敗や成功体験があるのですが、失敗の理由を学ぶことは、ほとんど心理的にできないんです。人間の脳の性質からして、成功というのは勝手に強化されるんです。これを強化学習といいます。でも失敗から学ぶことは非常に難しい。失敗の原因を突き詰めて考え、同じことは二度と繰り返さないようにするということも、ごく単純な場合ならできるんです。」(135頁)

普段の生活で、いちいち失敗の原因を突き詰めて考えることなどありません。

しかし、仕事では、そうはいきません。

同じような失敗は何度も繰り返していては、先へ進めません。

失敗したら、そこで一旦立ち止まり、失敗の原因を探る。

そして、チームで仕事をしている場合には、メンバー全員でその失敗を共有する。

これをしっかりやらないと、失敗した意味がありません。

失敗を共有し、他のメンバーが他人ごとではなく、「自分ごと」として、その失敗から教訓を得る。

このプロセスこそが、次のステップにつながるのだと信じています。

進化していくために、失敗は「新たな気づき」を得るために必要なプロセスなのです。

解雇73(日本通信事件)

おはようございます。

さて、今日は、整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

日本通信事件(東京地裁平成24年2月29日・労経速2141号9頁)

【事案の概要】

Y社は、JASRAQ上場会社で、データ通信サービス、テレコムサービス事業等を業とする会社である。

Xらは、Y社の従業員である。

Y社は、平成22年10月頃から、Xらを含む30数名の従業員に対し、個別に退職勧奨を行ったが、Xらは、これに応じなかった。

そこで、Y社は、就業規則64条3号に基づき、Xらを解雇した。

【裁判所の判断】

整理解雇は無効

【判例のポイント】

1 就業規則にいう「事業の縮小その他会社の都合によりやむを得ない事由がある」ものといい得るためには、(1)当該整理解雇(人員整理)が経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づくか、ないしはやむを得ない措置と認められるか否か(整理解雇の必要性)、(2)使用者は人員の整理という目的を達するため整理解雇を行う以前に解雇よりも不利益性の少なく、かつ客観的に期待可能な措置を行っているか(解雇回避努力義務の履行)及び(3)被解雇者の選定が相当かつ合理的な方法により行われているか(被解雇者選定の合理性)という3要素を総合考慮の上、解雇に至るのもやむを得ない客観的かつ合理的な理由があるか否かという観点からこれを決すべきと解するのが相当である。

2 人員の調整は、解雇以外の方法、配転・出向、一時帰休、採用停止、希望退職の募集、退職勧奨等によっても行うことができ、ここに解雇回避努力義務を尽くしたか否かという要素が問題になるところ、かかる使用者の解雇回避努力義務に対しては、上記比例原則のうち必要性の原則(最終の手段原理)が最もよく妥当し、使用者は、整理解雇を実施する以前において、当該人員整理の必要性の程度に応じて、客観的に期待可能なものであって、解雇よりも不利益性の少ない措置(解雇回避措置)をすべて行うべき義務を負っている

3 解雇回避努力義務は、単に一事業(プロジェクト)や事業部門に限定すべきではなく、企業組織全体を対象に(1)希望退職の募集や(2)配転・出向の可能性を検討するのが原則であるところ、Y社は、本件整理解雇(人員整理)の実行以前にY社組織全体を対象とした希望退職の募集や配転出向の可能性も検討していないが、これらはY社にとって受忍の限度を超えるものというべきことからすると、これらの点から、直ちにY社が解雇回避に向け社会通念上相当と評価し得る程度の営業上の努力を怠ったものということはできない

4 Y社は、Xらに対し、解雇回避措置の一環として可能な限り本件退職勧奨の対象者を絞り込むとともに、金銭面で有利な退職条件を提示することができるよう、社会通念上相当と認められる程度の費用捻出策等を講じるべき義務を負っていたものというべきところ、高額な役員報酬等のカット・削減分を原資として、本件退職勧奨の対象従業員を絞り込むとともに、金銭面で有利な退職条件を提示することができるよう一定の配慮を行った形跡は全く窺われず、本件退職勧奨において、100万円にも満たない程度の退職条件を示し、これに応じなかったXらに対して本件整理解雇を断行しているのであって、これではY社は、本件整理解雇手続において、社会通念上相当と認められる程度の費用捻出策を講じたものとはいえない

5 被解雇者選定の合理性は、被解雇者を選定するための整理基準の内容と基準の適用の2つの要素からなっているが、本件整理解雇においては、非採算部門に所属する従業員という極めて抽象的な整理基準が存在しただけであり、整理基準の合理性に関しても、本件退職勧奨に応じなかったXら3名を指名した上、その各人の個別具体的な事情に配慮することなく、本件整理解雇を断行したものということができ、被解雇者の選定手続きとしては余りに性急かつ画一的なものであって、慎重さに欠けるものといわざるをえず、本件整理解雇における被解雇者選定の合理性には疑問を挟む余地がある

6 本件整理解雇は、その必要性の程度こそかなり高いものということができるものの、解雇回避努力義務は十分に尽くされたものとはいい難く、また、被解雇者選定の合理性についてもやむなしとするほどの客観的かつ合理的な理由があるとは認められず、したがって、本件整理解雇は、就業規則64条3号にいう「事業の縮小その他会社の都合によりやむを得ない事由がある」場合には当たらないものというべきであり、本件整理解雇は、労契法16条所定の「客観的に合理的な理由」を欠き、解雇権を濫用するものとして無効である。

3要素説ですね。 手続の適正については、考慮要素になっていません。

4要素説でも、手続面が不十分ということで整理解雇が無効になることはほとんどありません。

たいていは、解雇回避努力が足りないということで無効になります。

この裁判例は、総論部分(判例のポイント1)が充実しているので、参考になります。

また、被解雇者選定の難しさがわかります。 

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介101 ロングエンゲージメント(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
 ロングエンゲージメント なぜあの人は同じ会社のものばかり買い続けるのか
ロングエンゲージメント なぜあの人は同じ会社のものばかり買い続けるのか

帯には、「ソーシャルメディア時代のマーケティング論」、「企業と生活者の新しい関係を作り上げることこそ、次の広告の役目だ」と書かれています。

タイトルのとおり、企業と生活者が持続的な関係を築くためには、どのようにすればよいかということが書かれています。

広告の役割が以前と今では、かなり変化していることがよくわかります。

かれこれ前から言われていることですが、キーワードは、「共感」です。 この言葉が何度となく登場します。

参考になる点がいくつかありました。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

これまでのマーケティングは、生活者が合理性に基づいて論理的な行動をとるという前提に立って構築されていました。機能や価格や品質が少しでも違えば、少しでも良い方、安い方に向かって行動すると。しかし市場が成熟した環境では、そのような差は生活者にとっては気にならないほどの微差かもしれません。さらに、ソーシャルメディアの浸透によって、生活者は自ら情報を選択し、共感によって行動するようになっています。よって、マーケティングにある生活者の合理的行動という前提も、もはや崩れつつあるのです。」(97頁)

合理的行動という前提では説明しづらい例として、以下のような事例があげられています。

たとえば、ディスカウントショップに来ていながら、商品代金の一部がアフリカの地域の寄付金に充てられると知って、他よりも高いミネラルウォーターを購入したり、クレジットカードの特典ポイントを貯める一方で、カードの利用ごとに代金の一部が自由の女神修復資金に充てられるというキャンペーンに賛同したりします。

生命保険とかが典型例だと思うんですけど、いろんな保険会社からいろんな商品が出ていますが、私たちには、それぞれの違いがわかりません。

結局、大差がなければ、いつもお世話になっている方から勧められた商品に入ろうと思ってしまいます。

結果として、その商品よりも安くて良い商品があるとしても、正直なところ、どうだっていい話です。

マーケティングにおける生活者の合理的行動からすれば、安くて、良い商品であれば、みんな買うと考えるのが合理的です。

しかし、実際には、生活者それぞれが異なる感情を持っており、それぞれが違う「合理性」を感じながら、行動しているのだと思います。

その人それぞれ異なる「合理性」にどれだけ共感できるか、なんだと思います。

私たちは、エスパーではありませんが、他人の気持ちを汲むことはできますよね。

あらゆる仕事で、「共感」力が試されているのだと思いますが、いかがでしょうか。

有期労働契約32(学校法人東奥義塾事件)

おはようございます。

さて、今日は、塾長に対する期間途中の解雇に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人東奥義塾事件(仙台高裁秋田支部平成24年1月25日・労判1046号22頁)

【事案の概要】

Y社は、学校法人であり、Xは、Y社が設置する高校の校長(塾長)であった。

Xは、塾長就任後、運営方針等に関してY社理事会とたびたび衝突した。

平成22年3月、Y社理事会において、Xを会食する旨の緊急動議が提出され、これが可決された。

これを受けて、Y社は、翌日、Xを解職する旨の通知をし、解雇予告手当を支払った。

Xは、Y社に対し、本件解職処分の理由を明らかにするよう求めたところ、Y社は、XがY社の理事会を非難し、高校、生徒および教員を誹謗し、寄附行為に違反した行動や塾長としての品位に欠ける行動をとることにより、高校内の秩序を乱したとの理由でXを解職した旨通知した。

【裁判所の判断】

解雇は無効

【判例のポイント】

1 法17条1項は、やむを得ない事由がある場合でなければ、期間の定めのある労働契約について、契約期間が満了するまでの間において解雇ができない旨規定する。同条が、解雇一般につき、客観的に合理的な理由及び社会通念上の相当性がない場合には解雇を無効とするとする法16条の文言をあえて使用していないことなどからすると、法17条1項にいうやむを得ない事由とは、客観的に合理的な理由及び社会通念上相当である事情に加えて、当該雇用を終了させざるを得ない特段の事情と解するのが相当である

2 以上の諸点を総合的に検討すると、Xは、卒業祝賀会や平成22年3月の礼拝に際し、学校関係者への配慮を欠いた発言をしており、また、事業部が炭酸飲料の撤去に直ちに応じないのに対し、事業部の管理に係る自動販売機に無断で張り紙をするなど、やや乱暴で思慮に欠くというべき行動をとっており、校務をつかさどり、所属職員を監督する塾長としての見識が十分でない面があることは否定できない。
しかしながら、清涼飲料水の自動販売機などに張り紙を貼るなどした行為については、東奥義塾高校の生徒の健康を図る目的があり、卒業祝賀会における発言については、父兄の労苦をねぎらうなどの意図でなされたものと認められ、極めて不適切とはいえず、平成22年3月の言動は、Xが、東奥義塾高校から排除される懸念を抱いたことによりなされたものとも推測され、その後、実際に本件解職処分が行われたことも踏まえると、同様に極めて不適切とはいえない。そして、Xの塾長としての活動により、職員会議への職員の出席率が向上し、学生の態度に良好な変化があったと認められ、Xは、4年の任期の初年度において、すでに、塾長として一定の成果を出していたことに照らすと、Xが、塾長として、教職員らからの一定の信頼を得ていたと認められる。これに加え、Xには、そもそも管理職経験はおろか国内における一般的な教職経験もなかったものであり、乙山理事長をはじめとする理事会がこれを承知であえてXを塾長として採用したと認められるのであって、各理事、理事会においても、これを踏まえて、Xの経験不足の点を保管すべきであったと解されるところ、理事会がこれを全うしたとは認められない
以上の諸事情を勘案すると、本件解職処分には、法17条1項にいうやむを得ない事由があったとは認め難い。したがって、その余の点を判断するまでもなく、本件解職処分は法17条1項により無効であり、Xは、Y社に対して、労働契約上の地位を有すると認められる。

総合考慮の結果、期間途中に解雇するやむを得ない事由までは存しないという判断です。

労働契約法16条と17条の比較については、他の裁判例でも同様の判断が示されていますね。

事実を根気強く主張し、視点を示すというのは、訴訟における弁護士の基本的な仕事ですが、本件でも、Xの各行為について、代理人がXに有利な視点を示せたことが勝訴につながったのだと思います。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。

本の紹介100 幸せの遺伝子(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 

さて、今日は、本の紹介です。
幸せの遺伝子
幸せの遺伝子

タイトルだけ見ても、意味がよくわかりません・・・。

しあわせのいでんし・・・? なんじゃそりゃ!

さて、この本で「いいね!」と思ったのは、こちら。 

自分が死んだあとにも業績は残ります。それが後世の人に役立つこともあります。その意味で、『これに成功したら、おれは死んでも惜しくない』といえるような対象をもっている人は非常に幸せだといえます。」(205頁)

う~ん・・・今のところ、ないな(笑)

まだまだ死ぬのは惜しいです。やりたいことが山ほどあります。

かくすれば かくなるものと 知りながら やむになまれぬ 大和魂

身はたとひ 武蔵の野辺に 朽ちぬとも 留め置くかまし 大和魂

吉田松陰の言葉です。

いい言葉ですね。 重みが違います。

このくらいの覚悟をもって取り組なければ、世の中は変わらないんでしょうね。

もっとも、「大和魂」とはどんなものなのか、今の私には、うまく説明できません。

不当労働行為43(シオン学園事件)

おはようございます。

さて、今日は、一時金の協定平均額以下の支給と不当労働行為に関する命令を見てみましょう。

シオン学園事件(神奈川県労委平成24年3月29日・労判1046号91頁)

【事案の概要】

Y社は、自動車学校を経営する会社である。

X組合とY社は、平成21年7月、上期一時金について、1人平均15万円とする協定を締結した。

同日、Y社は、上期一時金として支部組合員16名に平均11万1883円(組合員16名中13名は協定平均額以下)を支給した。

Y社は、各人の一時金支給額の決定にあたり、稼働考課及び考課査定を実施した。

【労働委員会の判断】

一時金の協定平均額以下の支給は不当労働行為に該当する

【命令のポイント】

1 稼働考課は、それ自体としては客観的な基準や、組合員か否かを問わない基準を内容とするものであるとしても、法令の趣旨に反したり、組合活動を行う支部組合員らにとって殊更に不利益な結果となるものを含み、Y社はそのことを容認してきたものと認められるのであって、このような稼働考課を含む考課査定制度が稼働状況を端的に評価するものであるというY社の主張は採用できない。

2 考課査定において、Y社の定める評価項目やその評価基準は、基本的にはY社の裁量に任せられているものだとしても、本件においては、その評価基準が曖昧であることにより、支部組合員が恣意的に評価される可能性を多分に含んでいるものだと言うことができ、そのような制度的問題点についてY社はあえて改善策をとることなく放置し、支部組合員にとって不利益な結果を容認してきたものである。したがって、考課査定には恣意性が生じる余地がなく、不利益取扱には当たらないとの会社主張は採用できない。

3 Y社は従来組合活動を嫌悪していたところであるが、訴訟や労働委員会での紛争が続き、Y社は組合らをいっそう好ましくない存在と捉え、また、組合活動を行う支部組合員らの給料の水準が高かったことは、Y社の経営を逼迫させるものだと捉えていた。そして、Y社が経営上、人件費の軽減を迫られた際、稼働考課に関しては、Y社が会社に貢献していないと考える支部組合員の組合活動時間を稼働可能時間から減算するなどして結果的に支部組合員を低査定とし、考課査定に関しては、基準の曖昧な評価項目を残したまま公正な評価を確保するための努力を怠り、組合らに対する情報開示や説明も十分なものではなかった。そして、そのことが本件格差の原因となったものと認められ、Y社はそのような結果を容認したまま、積極的に是正しようとすることもなかったのである
よって、本件格差は不当労働行為に当たらないとのY社の主張はいずれも採用できず、本件格差が労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為であるとの前記推認を覆すものではない。

実質的にみれば、査定のしかたが、組合員を不利益に取り扱うようになっていると判断されてしまえば、どれだけ体裁を整えても、不当労働行為と判断されてしまいます。

また、評価基準をあえて不明確なものにしておき、いかようにも判断できるようにしてある場合であっても、結果的に組合員ばかりが不利益な評価を受けているのであれば、不当労働行為意思が推認されてしまいます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介99 見えない空気を売る方法(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

さて、今日は本の紹介です。
見えない空気を売る方法
見えない空気を売る方法

株式会社アルカサバ社長の貞方さんの本です。

20代でフェラーリを手に入れ、30歳で豪邸を建て、40歳でホテルオーナーになるのを夢見て、福岡から単身上京したそうです。

結果を出しているので、いいと思います(笑)

こういうことを正直に書いてしまう貞方さん、嫌いではありません。

さて、この本で「いいね!」と思っているのはこちら。

私たちが提供するサービスを受けた結果、お客様が取る選択は2つに1つしかありません。
また来るか、もう来ないか。それを決定する理由は、お客様の意識されない小さな快感・不快感の積み重ねかもしれないのです。だから私はいつも社員に繰り返し伝えます。大切なのは、お客様に気づかれないサービスだと。何となく心地がいいという空間は、気づかれないサービスの積み重ねから生まれます。理由はわからないけど嫌だという感覚は、小さな不快が積み重なった結果です。
」(132頁)

この感覚、よくわかります。

自分が客として、どこかのお店に行くと、大きな不快はないが、小さな不快がたくさんあると、もう行きたくなります。

難しいのが、お店側の立場で、常に顧客の目線でサービスをチェックすることです。

言うのは簡単ですが、実際には、日常のサービスのレベルに慣れてしまっており、「小さな不快」を見逃してしまいがちです。

スタッフ全員が、「自分が顧客だったら・・・」という姿勢を持ち続け、「小さな不快」を感じ取ることが大切なんだと思います。

結局は、スタッフ全員が、会社の一員として、サービスの質を向上していく気持ちがあるかにかかっているのではないでしょうか。

経営者は、スタッフ全員にそのような気持ちをもってもらうためにはどうしたらよいかを考えるべきです。

私の事務所も、法律事務所として、最高のサービスを提供できるように、努力を続けています。

有期労働契約31(北海道宅地建物取引業協会事件)

おはようございます

さて、今日は、懲戒処分と雇止めの有効性に関する裁判例を見てみましょう。

北海道宅地建物取引業協会事件(札幌地裁平成23年12月14日・労判1046号85頁)

【事案の概要】

Y社は、宅地建物取引業法74条に基づき北海道知事の認可を受け設立された公益法人である。

Xは、平成22年4月、Y社の嘱託職員として採用された。また、Xは、税理士登録し、北海道税理士会に入会している。

Xは、平成22年6月、Y社代表者から出頭命令を受け、Y社本部へ出頭したところ、Y社役員数名から、本件税理士登録等が本件兼職禁止規定に反することを理由として税理士業を廃業するように求められたが、これを拒否した。

Y社は、平成23年2月、Xについて、雇用契約を更新しない旨を決議し、3月末をもって期間満了となる旨を通知した。

【裁判所の判断】

懲戒処分は無効

雇止めは無効

Y社はXに対して慰謝料10万円を支払え

【判例のポイント】

1 本件兼業禁止規定及び本件履歴書規定の文言の通常の意味に照らせば、本件税理士登録等が本件兼職禁止規定に該当し、また本件履歴書に本件税理士登録等を記載しなかったことが本件履歴書規定に違反すると解するにはいささか無理がある反面、本件処分に至る経緯において、Xに何らかの落ち度があるとは言い難い。・・・以上の事実に照らせば、本件処分は、Y社によるXに対する嫌がらせとして行われた側面があるといわざるを得ないから、Y社が本件処分を行ったことは、本件処分が無効である以上、Xに対する不法行為を構成するというべきである。そして、かかる不法行為によってXが被った精神的苦痛に対する慰謝料の額は、本件処分がY社の懲戒処分における最も軽い戒告であること等本件に現れた一切の事情を考慮すれば、10万円が相当である

2 本件嘱託細則3条1項において、「嘱託職員の委嘱契約期間は、原則として1年以内とし、業務の必要に応じて契約期間を更新するものとする。」と規定されていること、Y社は、本件雇止めが行われるまで、Xを除く嘱託職員を雇止めしたことはなかったこと、Xを含むY社における嘱託職員は、採用に際し、Y社との間で、本件契約書と同様の書式を用いた「嘱託職員雇用契約書」を作成していたこと、Y社は、嘱託職員との雇用契約の期間満了時において、契約更新のために同職員との間で上記「嘱託職員雇用契約書」を新たに作成するものの、他にY社内部において特段の手続は行われていなかったこと、Xは、Y社小樽支部において、会計処理、資料作成、資料送付及び電話応対等といった恒常的かつ常用的業務を担当していたこと並びに、Y社代表者自身、少なくともXが採用される前に採用されたY社の嘱託職員については、雇用期間の限定がないか、少なくとも雇用契約が更新されることが原則であるとの認識を有していたと認められることからすれば、本件契約による雇用継続に対するXの期待利益に合理性があるというべきである

3 本件契約による雇用継続に対するXの期待利益に合理性がある以上、本件契約に解雇に関する法理を類推すべきである。そして、本件処分は無効であること、そもそも事務局業務の効率化の観点からY社小樽支部の嘱託職員を削除しようとする計画が存在したこと自体極めて疑わしいこと及びXの就業態度その他適格性等について、Y社は何ら具体的に主張立証しないことからすれば、本件雇止めは、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められないから、無効である

4 雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する判決が確定した後に支払期が到来する賃金については、上記判決確定後もなお賃金の支払いがされない特段の事情のない限り、「あらかじめその請求をする必要がある」ということはできないところ、Xの本判決確定後に支払期が到来する賃金に係る訴えについては、上記特段の事情があることは窺われないから、将来請求の訴えの利益を欠くものとして不適法であるといわざるをえないから、これを却下する。 

期待利益の合理性に関する事実認定は、勉強になりますね。

代理人としては、こういう事実をどれだけ取りこぼさずに主張できるかが大切ですね。

履歴書の問題は、今回のケースでは、それほど大きな問題ではないと判断されています。

有期労働契約は、雇止め、期間途中での解雇などで対応を誤ると敗訴リスクが高まります。

事前に顧問弁護士に相談の上、慎重に対応しましょう。