Monthly Archives: 4月 2015

本の紹介422 センスは知識からはじまる(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
センスは知識からはじまる

著者は、グッドデザインカンパニーの代表の方です。

最近では「くまモン」が代表作のようです。

タイトルにあるとおり、「センスがいいね」というときの「センス」はどこからくるのか、ということについて書かれています。

ちなみに本書で定義づけている「センスのよさ」とは「数値化できない事象のよし悪しを判断し最適化する能力」を指しています。

うまいこと言いますね。さすが、センスがいいです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

斬新なものを生み出した場合、たとえ成功するとしても、それには相当な時間がかかることを理解し、長期的な視野を持つことが必要です。『私はセンスがいいから、ひらめきが降りて来てたちまち大ヒット』という、魔法のような話はどこにもないのです。
人は急激には変化を遂げないという例を挙げれば、枚挙にいとまがありません。わかりやすいところでいうと、携帯電話をスマートフォンに変えるだけでも数年を要しており、いまだ携帯電話を使っている人もたくさんいます。」(50頁)

大きな変化が浸透するには時間がかかるということを認識するだけで、かなり違うのではないでしょうか。

結果を出すには、忍耐・我慢が必要です。

半年やそこらで結果が出ないからといって、やめてしまうのではいけないのです。

解雇169(カワサ事件)

おはようございます。

今日は、中途入社の採用内定取消しに対する不法行為該当性に関する裁判例を見てみましょう。

カワサ事件(福井地裁平成26年5月2日・労判1105号91頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、XとY社とはY社がXを将来雇用する旨の始期付解約権留保付雇用契約(「本件内定契約)を締結したところ、Y社は本件内定契約にかかる採用内定を違法に取り消した旨主張して、不法行為に基づき、Xの被った損害および弁護士費用の合計約735万円およびこれに対する遅延損害金を請求した事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し252万8114円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Y社代表者は、その陳述書ないし尋問において、Y社代表者がXを不採用とした理由として、XがY社代表者に対してXが以前勤務していた会社の社長の悪口を述べたこと、Xが以前勤務していた会社におけるXの素行が悪かったこと、を供述するが、上記供述に係る各事実が認められたとしても、これらはいずれもY社代表者が本件内定契約の成立の当時に知ることが期待できた事実であるというべきである。

2 ・・・以上の検討に照らせば、Y社は平成24年4月13日に本件内定契約を合理的な理由なく解約したものというべきであり、これはY社のXに対する不法行為を構成するものというべきである。したがって、Y社は、Xに対し、不法行為に基づく損害賠償の義務を負う。

3 Xは、本件内定契約が解約されなければ、本件内定契約に基づき、遅くとも平成24年4月1日からY社に就職し、これにより、少なくとも月額25万円の賃金を得ることができたこと、Xは平成25年1月7日から本件再就職先に就職したこと、Xは本件内定契約が解約されたことに伴い失業保険として52万0273円を受領したこと、の各事実が認められる。
上記事実に照らせば、Xは、Y社による上記不法行為により、少なくとも、上記平成24年4月1日から平成25年1月6日までにY社から得られたであろう賃金分として、Xの主張する方法によって算出した合計229万8387円から上記失業保険受給額52万0273円を控除した177万8114円分の損害を被ったものというべきである。

4 Xは、本件内定契約の成立を受けて訴外会社を退職したこと、Xは現在本件再就職先に就職して収入を得ているが、Xの現在の収入は訴外会社に勤務していた場合に比べて減少していることの各事実が認められる。他方、Xの収入に係る上記減少の額を認めるに足りる的確な客観的証拠は見当たらないことを始め、その他本件に現れた一切の事情を斟酌すれば、Y社がXに対して支払うべき慰謝料の額は50万円が相当であるというべきである。

内定は、「始期付解約権留保付雇用契約」です。

留保解約権の行使に合理的な理由がなければ、違法と判断されてしまいます。

今回の事案では損害賠償を求めていますが、地位確認を求めることも当然可能です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介421 頭がいい人、悪い人の仕事術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
頭がいい人、悪い人の仕事術

10年以上前の本ですが、再度、読んでみました。

著者は、有名なブライアン・トレーシーさんです。

仕事を効率よくするためのヒントや小技が事細かく書かれています。

社会人1年生に限らず、効率よく仕事をするのが苦手な方におすすめの本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人づきあいの目的はなんだろう?その答えを単純にいえば、その人とつきあわないよりも、つきあったほうが自分が幸せになれるからだ。明らかに多くの人々がこの点を見すごしている。どんな行動も、自分の人生を改善する目的を果たさなければならない。その行動や決断をしたほうがより幸せになれるのでなければならない。したがって、人間関係にまつわる決断は、人生でもっとも重要な決断ともいえる。正しい人間関係を選べば、そうでなかった場合に比べて、ずっと幸せになれるからだ。そして、まちがった人間関係を選択してしまったら、自分の希望や夢を打ち砕くことにもなりかねない。」(146頁)

非常に露骨な文章ですが、真実です。

反対側から見ると、どうしたら人間関係の輪が広げられるかという問いに対する答えが見えてきます。

答えは、周りの人に「この人とつきあったほうが自分が幸せになれる」と思ってもらうことです。

露骨ですが、真実です。

賃金91(プロミックスほか事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、支払命令不履行に対する損害賠償請求と法人格否認法理適用の有無に関する裁判例を見てみましょう。

プロミックスほか事件(福岡地裁平成26年8月8日・労判1105号78頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Xが勤務していたA社に対して時間外割増賃金等および付加金の支払いを求めて提起した訴訟において、Xの請求を認容する判決(別件判決)がいい渡され、同判決は確定したが、A社が別件判決で支払を命じられた金員を支払わないとして、A社の元の代表取締役およびA社の現在の代表取締役に対し、会社法429条1項に基づき、損害賠償および遅延損害金の連帯支払いを求めるとともに、Y社がA社と同視できると主張して、法人格の否認により、Y社に対し、別件判決において認容された、時間外割増賃金等および付加金の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 確かに、Xの指摘するように、Y社とA社は本店所在地が同一であること、それぞれの経営する店舗で同様のデザインの看板やロゴマークを使用していること、新規開店に関するチラシには両会社の店舗の名称及び所在地等が記載されていること、一方の店舗の新規開店について他方の店舗の看板で掲示し、宣伝していること等の事情が存在し、Y社とA社がそれぞれ経営する店舗間の連携・協力関係等があることが窺われる。しかしながら、Y社及びA社の各経営に係る店舗間に連携・協力関係等があるからといって、Y社とA社との法人格が同一であると認めるには足りないというべきであるし、本店所在地の同一性をもって両会社の実質上の同一性を認めることもできない
・・・他に、Xの主張する法人格の形骸化又は法人格の濫用を認めるに足りる証拠はない。

これだけの事情がそろっていても、法人格は否認されないのです。

法人格とは便利な道具ですね。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介420 ゲーム・チェンジャーの競争戦略(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
ゲーム・チェンジャーの競争戦略 ―ルール、相手、土俵を変える

著者は、早稲田大学ビジネススクールの教授などです。

タイトルの「ゲーム・チェンジャー」は、ゲームのルールや土俵を変えることにより、業界を大きく変えるプレーヤーのことを指しています。

これより、いわゆる「業界」という概念が吹っ飛んでしまいます。

同業種とか異業種という概念がそもそも成り立たなくなってくるわけです。

多くの事例に基づく説明は、とてもおもしろく、参考になります。 おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私の経験からいうと、ほとんどの場合、答えはすでに皆さんが持っている、あるいは、皆さんがいまやっていることのなかにあります。前著でも紹介した言葉を、ここで再び、ご紹介しましょう。フランスの文学者、マルセル・プルーストの言葉です。『本当の発見の旅とは、新しい土地を探すことではなく、新しい目でみることだ』」(202頁)

「本当の発見の旅とは、新しい土地を探すことではなく、新しい目でみることだ」

いい言葉ですね。

この比喩を、自分の仕事に置き換えて考えると、とても楽しいですよね。

新しい土地なんて探さなくても、今いる場所を違った角度から見直してみる。

これこそが、ゲームのルールや土俵を変える、一番手っ取り早い方法なのでしょうね。

業界で「当たり前」「常識」となっている事柄を、新しい目で見てみることです。

言うは易し。

どっぷり業界に浸かってしまうと、これがなかなかできなくなるのです。

だからこそ、いろんな業界の方と接することが大切なのです。

同業者とばかり一緒にいると、業界の当たり前、常識から抜け出せなくなってしまいますので。

解雇168(なみはや交通(仮処分)事件)

おはようございます。

今日は、タクシー乗務員に対する懲戒処分の有効性と賃金仮払申立に関する決定を見てみましょう。

なみはや交通(仮処分)事件(大阪地裁平成26年8月20日・労判1105号75頁)

【事案の概要】

本件は、Y社にタクシー乗務員として雇用されていたXらが、Y社のなした懲戒解雇処分は無効であるとして、地位保全および賃金仮払いの仮処分を求めた事案である。

【裁判所の判断】

懲戒解雇は無効

【判例のポイント】

1 使用者が労働者に対して行う懲戒は、労働者の企業秩序違反行為を理由として、一種の制裁罰を科するものであるから、使用者は、懲戒を行うべき労働者に対し、懲戒当時にその理由とする具体的な非違行為を表示しなければならない。したがって、使用者が懲戒当時に理由として表示しなかった非違行為は、その存在をもって当該懲戒の有効性を根拠付けることはできないものと解するのが相当である。

2 Y社が主張する懲戒理由は、懲戒理由一覧表記載のとおり、債権者毎に異なり、かつ多岐にわたっているにもかかわらず、本件懲戒処分の理由を記載した本件通知書は、いずれの債権者に交付されたものも、理由として「入社契約書第8条(ロ・ト・ヌ)に該当し」と同一の内容が記載されているにとどまり、何ら具体的な非違行為は記載されていない。そして、審尋の結果によれば、Y社は、本件懲戒処分を行うにあたり、債権者らに弁解の機会を付与していなかったことが認められるから、債権者らが、本件通知書を見ても、懲戒理由一覧表記載の懲戒理由は、いずれも使用者が懲戒当時に理由として表示しなかったものというべきであるから、本件懲戒処分の有効性を根拠づけるものとはならない。
他方、・・・本件懲戒処分は、Y社の経営方針(本件掛金の変更)に反対した本件組合を消滅させるために行われたことが強く推認される。
以上によれば、本件懲戒処分は、懲戒理由を欠いて行われたものというほかないから、その余の点を検討するまでもなく、無効であるといわなければならない

3 債権者X1は、①Y社から、月額25万円程度の給与を得ていたこと、②妻との二人暮らしであり、その生計を維持するためには、妻のパートタイム勤務による収入(月額約9万円)を考慮してもなお毎月20万円程度が不足すること、③平成26年4月以降、賃金が全く支払われないため、預貯金を取り崩して生活を維持してきたが、その預貯金もわずかな金額になったことが一応認められる。したがって、平成26年8月25日から本案の第一審判決の言渡しの日までの毎月20万円の割合による金員の仮払いの限度で保全の必要性が認められる。

4 本件においては、強制執行可能な賃金仮払の仮処分が認容される以上、任意の履行を期待する地位保全の仮処分の必要性を認めるべき事情は見いだし難い

懲戒処分をする場合には、いくつか気をつけなければならない点があります。

その点を無視して処分すると、今回のような結果になってしまいます。

懲戒処分をする場合には、顧問弁護士に相談の上、ちゃんと手順を踏んで行いましょう。

本の紹介419 レッド・オーシャンで儲ける7つの法則(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
レッド・オーシャンで儲ける7つの法則 (マイナビ新書)

レッド・オーシャンとかブルー・オーシャンという言葉、最近では、ちょっと恥ずかしくて使いませんね。

物が売れない時代に物を売る方法を、いくつかの例を通して説明してくれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

実務に疎い素人の人の『閃き』がイノベーションにつながるほど、実際のビジネスが甘いものではないことは、多くの人が実感しているのではないでしょうか。現状で思考が固定化してしまうことはイノベーションの大敵ですが、無知もまたイノベーションの大敵です。当たり前のことを当たり前にこなす能力が、イノベーションの必要条件ということです。
iPS細胞の山中教授は、発見に至るまでの過程を『暗闇でバットを振り続ける』ことにたとえていましたが、地道な努力を積み重ねることが、イノベーションにたどり着く、遠いようで実は近い道です。」(189頁)

素人の閃きがイノベーションにつながるほど、ビジネスは甘くないというフレーズは、心に突き刺さりますね。

社会を変えるようなイノベーションは、もっと地道で気の遠くなるような努力によって生み出されているはずです。

周囲の人には見えない地道な努力をひたすらこつこつ続けられるということは、結果を出すことのできる人の共通点ですね。

日々のほんの少しの差が積み重なり、1年後、10年後、巻き返しのできないような大きな差になるのだと信じています。

賃金90(X空港事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、元従業員からの退職功労金の請求が認められなかった裁判例を見てみましょう。

X空港事件(大阪地裁平成26年9月19日・労経速2233号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員及び元従業員の相続人が、Y社が労働組合に交付した書面に記載されていた退職功労金の支給基準は就業規則と一体のものとして労働契約の一内容となっているとして、Y社に対し、労働契約に基づき、退職功労金及び遅延損害金の支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 旧退職金規程7条は、退職功労金について「在籍中に特に功労があった者に対しては基本退職金の計算の範囲内で功労加算として加給する」と定めているが、在籍中に特に功労があった者に対して退職功労金を支給することを抽象的に定めているだけであり、同条によっては退職功労金の支給対象者及び支給額は確定しないから、旧退職金規程7条に基づいて、直ちに退職功労金を請求することはできず、使用者が「特に功労があった者」に当たるか否かを査定するとともに、具体的な算定方式や支給額を決定することによって初めて具体的な金額が確定するものと解される。そして、昭和55年基準は、勤続20年以上、かつその在籍中10年皆勤表彰を受賞して定年退職した受賞者を「特に功労があった者」とし、さらに勤続1年につき2万5000円を退職功労金の支給額とするとして、退職功労金の支給対象者及び支給金額の算定基準を明確にするものであるから、昭和55年基準は旧退職金規程7条退職功労金請求権の具体的な内容を確定するものであり、したがって、昭和55年基準が改廃されない限りにおいては、Y社の従業員は旧退職金規程7条及び昭和55年基準に基づいて退職功労金を請求することができるものと解される。

2 もっとも、昭和55年基準は本件組合に宛てた文書に記載されているものであって一般的な就業規則の形式とは体裁が明らかに異なっている上、就業規則を作成又は変更するに当たって法律上要求されている行政官庁への届出(労働基準法89条)や多数労働組合又は過半数代表に対する意見の聴取(同法90条9も行われていない。しかも、昭和55年書面には昭和55年基準を「内規として取扱うことを連絡致します」と記載されており、・・・Y社が昭和55年基準を就業規則ではなく、あくまでも内規として位置付けていることは明らかである。
・・・そうすると、昭和55年基準は旧退職金規程7条の内容を具体化するものではあるが、昭和55年基準自体は就業規則の一部ではないから、昭和55年基準はY社とY社の従業員との間の労働契約の内容としてY社を拘束するものではないというべきである

3 以上によれば、昭和55年基準は、Y社とY社の従業員との間の労働契約の内容にはなっておらず、あくまでも運用基準にすぎないから、Y社は、労働者の同意を得ることなく、同基準を改廃することが可能であると解される。そして、昭和55年基準は、平成12年内規が制定されたことにより改訂されているから、Xらは、昭和55年基準に基づいて退職功労金を請求することはできない。

今回のようなケースでは、賞与の請求をする場合と同様、労働者側には厳しい戦いとなります。

上記判例のポイント2の視点は、応用できますね。 参考にしてください。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介418 広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。

タイトルだけで買ってしまいますね(笑)

タイトルのとおり、広告やメディアでばんばん宣伝しても売れるとは限りません。

では、どうすれば人は動くのか?ということについて書かれています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

広告やメディアでは人が動かない中で、何が人を動かすのか? それは結局のところ、確実にうまくいくかわからない状況でも、論理を超えて『これでいこう!』と踏み切る現場の『勇気』や『機転』ではないか、と私は思っている。それはいわば、誤発注を挽回しようとPOPをつくりツイートで拡散させた生協の店員のような勇気と機転だ。リスクをとり、恥をかき、失敗する『覚悟』のない人間、人間のココロへの『洞察』のない人間が、どれだけ手法やテクノロジーに通じてみたところで、人を動かし、財布を開けさせ、社会を変えるムーブメントを作り出せるはずなどないのだ。」(247頁)

論理を超える勇気や覚悟が、今置かれている状況を変えるのでしょうね。

実際、理屈で考えてしまうと、やる前から「この点がネックになる」とか「ここが問題だ」とか、できない理由探しが始まってしまいます。

これでは何も始められません。

最初は、突拍子もないように見える計画も、少し動かしてみると、違った景色が見えてくるものです。

「どうせ無理」と「ノーサンキュー」からは何も生まれませんので。

解雇167(ヴイテックプロダクト(旧A産業)事件)

おはようございます。

今日は、休職後の復職請求と経営再建等を理由とする解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

ヴイテックプロダクト(旧A産業)事件(名古屋高裁平成26年9月25日・労判1104号14頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に従業員として雇用されていたXが、Y社に対し、Y社のXに対する解雇が無効であると主張して、①雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、②解雇された平成24年10月以降の未払賃金及びこれに対する遅延損害金の支払を求める事案である。

原審は、上記解雇は無効であると判断した。

これに対し、Y社が、原判決の上記認容部分を不服として、控訴を提起した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】(以下、原審判決)

1 Xは、本件組合を通じてY社と本件覚書を締結しており、その中で、Y社はXに対し、退職勧奨を行わないことや、Xの復職に際しては、従来の労働条件通りで復職させること等を約束しているところ、Y社による本件解雇は、明らかに上記約束に反する。また、休職前のXのY社における勤務態度は、上司の指示に対して反抗的であったり、上司やほかの従業員との良好な人間関係を築くことができなかったり、度々問題行動を取ったりなど、決して適切なものではなかったことは認められるものの、就業規則上の解雇事由のいずれかに直ちに該当するとは認められない上、Y社において、Xに対し、度々指導や注意をしていたことは認められるものの、譴責や減給、出勤停止といった段階的な処分に付したことを認めるに足りる証拠もない
よって、本件解雇は、社会的相当性を欠き、解雇権を濫用したものとして違法無効な解雇というべきである。

2 Y社は、経営陣が全員交代し、危機的な経営状況下において、人件費削減等の合理化を推進しているため、就労に制限の付されているXを雇用する余裕はない旨主張する。
しかしながら、Y社が、平成23年8月以降、危機的な経営状況であることを裏付ける客観的な証拠は全くない。また、仮にY社の主張のとおりであるとしても、人員削減の必要性、解雇回避の努力の有無、Xを被解雇者として選定したことの妥当性及び手続の妥当性等について主張立証がなされることが必要であるところ、少なくとも、Y社が、希望退職を募るなど解雇回避の努力を尽くしたと認めるに足りる証拠は見当たらず、かえって、証拠によれば、Y社においては正社員の求人募集をしていることが認められることからすれば、Y社の上記主張は直ちに採用することはできない

本件では、会社が組合と覚書を交わしており、その内容に反して解雇しているため、明らかに会社側が分が悪いです。

判決理由を読むと、会社としても、敗訴リスク覚悟で解雇に踏み切ったことが窺えますが、訴訟上の和解ができず、判決までいくと、このような内容の判決になってしまいますね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。