不当労働行為198 組合員の定年延長の不適用と不当労働行為(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、変更した就業規則を適用して、労組委員長Xを定年退職としたこと、もしくは73歳までの定年延長をXに適用しなかったことが、いずれも不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

ツクイ事件(茨城県労委平成29年10月19日・労判1176号92頁)

【事案の概要】

本件は、変更した就業規則を適用して、労組委員長Xを定年退職としたこと、もしくは73歳までの定年延長をXに適用しなかったことが、それぞれ不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

いずれも不当労働行為にあたらない

【命令のポイント】

1 送迎職員満70歳定年制は、Y社が、A組合結成前の25年1月1日に導入することとし、同日、施行されたのであり、そしてそれが、3年4か月後の28年4月30日、X委員長が満70歳となったことによって、X委員長に適用されて、当然に退職、すなわち以降、契約の更新はしないとされたものである。
そうすると、全国的に通所介護事業を展開するY社にあって、全国の事業所に適用される本件就業規則に・・・送迎職員満70歳定年制を導入し、それをX委員長に適用したことについて、これをX委員長がA組合の組合員であるとの理由からとすることはできない
よって、A組合からのY社による満70歳定年制導入とそのX委員長への適用の取消を求める申立ては棄却せざるを得ない。

2 Y社においては、X委員長の起こした車両接触事故に対し懲戒等の処分がなされておらず事故報告にとどまるなど、車両接触事故に対し比較的寛容であり、また、模範運転者について明確な定義規定はなく、所長の裁量によるところが大きいとしても、X委員長の運転技量や健康状態に照らし、模範運転者に該当しないとして同人に定年を延長しなかったY社の判断を不合理とは言い難い
上述のごとく、X委員長が「模範運転者」に該当すると言えない以上、X委員長に満73歳までの契約更新を適用しなかったことをもって労働組合法第7条第1号該当の不当労働行為とすることはできない。

特段会社の対応が不合理とはいえないため、不当労働行為にはあたりませんでした。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。