Daily Archives: 2022年1月25日

労働者性39 執行役員として業務に従事していたと主張する者の労働者性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、執行役員として業務に従事していたと主張する者の労働者性に関する裁判例を見てみましょう。

リコオテクノ事件(東京地裁令和3年7月19日・労判ジャーナル116号24頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で労働契約を締結し、執行役員として業務に従事していたと主張するXが、Y社がした解雇は無効である旨主張し、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、労働契約に基づき、本件解雇日以降の未払賃金等の支払、労働契約に基づき、労働契約締結時から本件解雇日までの未払賃金等の支払、民法650条1項に基づき、Y社のために支出した立替金約2万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

地位確認等請求棄却

立替金支払請求認容

【判例のポイント】

1 Xは、Y社において、事業譲渡の企画・立案・書類の作成に関する業務、資金の調達に関する業務、就業規則等の作成に関する業務、人事関係、決算手続に関する会計事務所との折衝・協議、Y社内の会議の調整、月次資金繰り表の作成、売掛金の回収等の業務に従事していたことが認められるところ、Xは、上記業務のうち主に事業譲渡に関する業務に従事し、同業務については他者からの指揮命令を受けることなく自らの裁量により業務を遂行していたものと考えられ、加えて、Xは、勤務場所及び勤務時間の定めがなく、他の従業員とは異なりタイムカードの打刻を求められていなかった上、Y社の事務所での朝礼に出席した後は、事務所から退出することが多くあったことが認められ、勤務時間及び勤務場所の拘束を受けていなかったといえるから、Xは、Y社において、自らの裁量により業務を遂行していたもので、Y社の指揮命令に基づき業務を遂行していたとは認められず、また、業務の依頼に対する諾否の自由を有していなかったとも認められず、さらに、Xは、勤務時間及び勤務場所の拘束を受けていなかったことも考慮すると、Xの労務の提供が使用従属関係の下になされていたということはできず、本件契約が労働契約の性質を有するものとは認められない。

ここまで自由な働き方が認められていたのであれば、労働者性が否定されてもおかしくありません。

逆に言えば、ここまで広い裁量が与えられていない場合には、労働者と評価されるリスクがありますのでご注意ください。

労働者性に関する判断は難しいケースも中にはありますので、業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。