Daily Archives: 2022年1月6日

有期労働契約107 定年後再雇用時の労働契約更新と労契法19条2号(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、定年後暫定的な労働条件で1年再雇用後、契約更新時に新条件の合意の不成立による雇止めを無効とした裁判例を見ていきましょう。

Y社事件(広島高裁令和2年12月25日・労経速2462号3頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社に対し、Y社がXとの間の雇用契約を終了させたのは解雇に当たり、同解雇には正当な理由がないとして、①XがY社との間の雇用契約上の地位にあることの確認を求めるとともに、②(ア)主位的に、判決言渡しの日まで毎月10日限り1か月31万1554円の割合による給与の支払を、(イ)予備的に、上記の雇用契約上の地位にあることの確認と判決言渡しの日まで毎月10日限り1か月19万9000円の割合による給与の支払を求めた事案である。

原審は、Xの上記①及び②(イ)の請求を一部認容し、XがY社との間で労働契約上の権利を有する地位にあることを確認するとともに、Y社に対し、657万1072円等をXに支払うよう命じ、その余の請求をいずれも棄却した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】(原審判断)

1 確かに年齢を重ねることで、一定の年齢からは能力が落ちるにも関わらず、長期間勤務することで、給与は上昇するのみである場合もまま見られ、定年退職後の再雇用においては、定年退職時の給与を基礎として、減額した給与での契約とするというのは一定の合理性があるといえるが、そもそも、本件継続雇用契約の時点でXの定年退職時の給与の6割程度の給与としているもので、本件提案は、その給与をさらに減額するというもので、許されるべきではないし、上記の事情による勤務条件の変更と勤務場所の変更はなんら関連性はなく、定年退職後の再雇用ということで、変更できる条件とはいえないとするのが相当である。

定年退職後、嘱託社員になる際に、正社員の給与から大幅に減額される取扱いについても、同一労働同一賃金との関係では当然に許されるものではありませんが、それはさておくとしても、本件のように、契約更新の際、賃金減額を許容する理屈は存在しません。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。