Daily Archives: 2022年1月27日

賃金220 正社員としての退職金規程に基づく未払退職金請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、正社員としての退職金規程に基づく未払退職金請求に関する裁判例を見てみましょう。

いづみや岡本鉄工所事件(大阪地裁令和3年7月16日・労判ジャーナル116号26頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、定年後も正社員として勤務していたとして、雇用契約に基づく退職金等の支払を求めるとともに、会社代表者から、Xが正社員ではなく嘱託社員である、嘱託社員には有給休暇がないと虚偽の事実を告げられたことで失望し、有給休暇を取得することなく退職することとなったため、有給休暇を取得する機会を奪われたとして、会社法350条に基づく損害賠償等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、平成23年●月●日に60歳の誕生日を迎えているところ、同日時点において効力を有する就業規則は旧就業規則であり、そして、旧就業規則によれば、60歳の誕生日が定年退職日であるが、労働者が希望し、会社が必要と認めた場合には、嘱託社員として5年を限度に再雇用する旨定められており、また、Xが令和2年3月24日に退職金を受領していることに照らせば、Xが一旦退職し、その後、再雇用するという扱いがとられていることがうかがわれ、さらに、賃金が減額になっていることは雇用形態が正社員から嘱託社員に変動になったことをうかがわせる事情であるといえ、加えて、Y社では従業員はタイムカードで出退勤が管理されていたところ、平成24年以降は1日の勤務時間が8時間に満たない日が散見されるが、Y社における所定労働時間は1日8時間とされているから、かかる勤務状況は、正社員としての勤務とは整合しないことになり、以上からすれば、XのY社における60歳以降の雇用形態は、正社員ではなく、嘱託社員であったと認められ、そして、Y社の退職金規程においては、嘱託として雇用された者には退職金規程が適用されないこととされていることからすれば、Xが、Y社に対し、退職金規程に基づき、退職金の支払を請求することはできない。

Xの主張は、定年後も嘱託社員ではなく、正社員として勤務していたというものですが、上記の状況証拠からしますと、結果としては嘱託社員と判断されることは異論がないと思います。

とはいえ、トラブルを回避するためには、書面で明確にしておくに越したことはありません。

日頃から顧問弁護士に相談の上、適切に労務管理をすることが肝要です。