労働時間94 勤務時間短縮を理由とする未払賃金等支払請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も1週間がんばりましょう。

今日は、勤務時間短縮を理由とする未払賃金等支払請求に関する裁判例を見ていきましょう。

クオール事件(東京地裁令和4年12月2日・労判ジャーナル134号34頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間でパートタイマーとして労働契約を締結し、Y社の運営するコンビニエンスストアにおいて労務を提供していたXが、Y社によって夜勤シフトの始業時間が一方的に変更され、勤務時間が短縮されたことは無効であり、また、時間外労働及び深夜労働に係る割増賃金にも未払があるとして、Y社に対し、労働契約に基づき、短縮された勤務時間に係る未払賃金及び同期間の未払の割増賃金等の支払に加え、労働基準法114条に基づく付加金等の各支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

未払割増賃金等請求一部認容

【判例のポイント】

1 Xは、本件雇用契約において夜勤の始業時刻を午後10時とする旨の合意をしたにもかかわらず、XがD店へ異動した後に、Y社が一方的に夜勤の始業時刻を午後11時に変更し、勤務時間を1時間短縮したことは無効であると主張するが、XがY社に入社する際に交わされた成立に争いのないパートタイマー雇用契約書には、終業時間について、「月~日 23:00~翌8:00」、「上記時間帯で週5日間、週39.5時間のシフト制」と記載されていることから、XとY社との間で始業時刻に関する別段の合意をするなどの特段の事情が認められない限り、本件雇用契約書記載のとおり始業時刻については午後11時とする合意があったものと認めるのが相当であるところ、XとY社との間で、本件雇用契約書の記載内容とは異なる始業時刻に関する別段の合意をしたなどの特段の事情は認められないから、本件雇用契約書により、Xの入社の時点から夜勤の始業時刻を午後11時からとする雇用契約が成立したと認めるのが相当であり、本件賃金請求は理由がない。

これだけを読むと結論に異論がないように見えますが、「別段の合意」の有無が争点となることは少なくありません。

最終的に合意の存在が認定できない場合には、原則通り、契約書記載の内容が雇用契約の内容となります。

日頃の労務管理が勝敗を決します。日頃から顧問弁護士に相談することが大切です。